小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
しそうだよなぁ・・・政界は芸能人やアスリートだらけ、政治家や政党は目先の人気取りに追われ、まともなマニフェストも書けない無能しかおらず、何の見通しもないのに「出来ます」とか豪語しておいて、「やっぱり無理でした。結構難しかったのね」で済ませてしまう・・・。
すごいよね。だってさ、どんなに酷い政策打ち出して、ことごとく失敗しても、あの人たち給料もらってんですよ? それも、半端なく。税金から。一般企業だったら『会社に多大な損害を与えた』ので解雇も出来ちゃうような、帰責事由の塊ですよ? なのに、男らしく総辞職すらしない・・・いいなぁ、そりゃあニートは政治家になりたがるわ(笑)
ギリシャって可愛いな~、あの程度の赤字、日本は毎年出してるな~、みたいな(笑)何だよ、国債44兆円って。(頭の)中身空っぽの缶(菅)が、「来年度の国債は、今年を超えないようにしようね~」とか言って・・・くたばれ(コラ)そんなもん当たり前だ。44兆円という数字が、そもそも異常なんだよ。税収が見込めないのに目先の人気取りでばら撒いてばっかりいるからそういうことになるんだろーが・・・。
日本の政治って、いつから子どものおままごとになったんだろう・・・ゲームだよね、これ。あのさ、現実世界にリセットボタンなんてないわけさ。「間違っちゃった☆」とか言って舌出してボタンひとつで昨日に戻れるなら誰も苦労しないんだよ。
『昔は良かった』と言うのは簡単だし、その時代で諸外国との勢力図も違うし、色々なファクターが絡んでくるから一概には言えないんだけど・・・・・・今の政治家は、『ある』ことが当たり前だと思ってるな。政府も、権力も、金銭も。
誰だったかな。丸山だったかな。『権利の上にあぐらをかいてはいけない』的なこと言ったの。それってさ、恒常的な努力で勝ち取らないといけないものなんだよね。待ってたら向こうから来るものじゃいけないんだよ。行使しなければ、取り上げられるものでもある。『ポリス』だった頃から、市民は奮闘して権利を勝ち取ってきたわけさ。ハングリー精神と確固たる美学のない政治家なんて、飛べない豚だよなぁ・・・。
早く解散してくれ・・・衆参同時選挙でいいよ。誰も民主と自民には入れないと思うけどな。すげーなー。一応日本の2大政党が、新興政党や弱小政党に負けるんだぜ? ちょー見ものなんですけど!!(爆)
・・・というイライラを、小ネタにぶつけてみる。
すごいよね。だってさ、どんなに酷い政策打ち出して、ことごとく失敗しても、あの人たち給料もらってんですよ? それも、半端なく。税金から。一般企業だったら『会社に多大な損害を与えた』ので解雇も出来ちゃうような、帰責事由の塊ですよ? なのに、男らしく総辞職すらしない・・・いいなぁ、そりゃあニートは政治家になりたがるわ(笑)
ギリシャって可愛いな~、あの程度の赤字、日本は毎年出してるな~、みたいな(笑)何だよ、国債44兆円って。(頭の)中身空っぽの缶(菅)が、「来年度の国債は、今年を超えないようにしようね~」とか言って・・・くたばれ(コラ)そんなもん当たり前だ。44兆円という数字が、そもそも異常なんだよ。税収が見込めないのに目先の人気取りでばら撒いてばっかりいるからそういうことになるんだろーが・・・。
日本の政治って、いつから子どものおままごとになったんだろう・・・ゲームだよね、これ。あのさ、現実世界にリセットボタンなんてないわけさ。「間違っちゃった☆」とか言って舌出してボタンひとつで昨日に戻れるなら誰も苦労しないんだよ。
『昔は良かった』と言うのは簡単だし、その時代で諸外国との勢力図も違うし、色々なファクターが絡んでくるから一概には言えないんだけど・・・・・・今の政治家は、『ある』ことが当たり前だと思ってるな。政府も、権力も、金銭も。
誰だったかな。丸山だったかな。『権利の上にあぐらをかいてはいけない』的なこと言ったの。それってさ、恒常的な努力で勝ち取らないといけないものなんだよね。待ってたら向こうから来るものじゃいけないんだよ。行使しなければ、取り上げられるものでもある。『ポリス』だった頃から、市民は奮闘して権利を勝ち取ってきたわけさ。ハングリー精神と確固たる美学のない政治家なんて、飛べない豚だよなぁ・・・。
早く解散してくれ・・・衆参同時選挙でいいよ。誰も民主と自民には入れないと思うけどな。すげーなー。一応日本の2大政党が、新興政党や弱小政党に負けるんだぜ? ちょー見ものなんですけど!!(爆)
・・・というイライラを、小ネタにぶつけてみる。
**********
怪我をしたわけでもなく、23歳というアスリートとしてもっとも脂の乗った時期に、彼は引退をした。
マスコミはこぞって理由を知りたがったが、彼が口を開くことはなかった。
彼の長年の友人でもあるダンサーだけがそれを知っていたが、口が軽そうに見えて友人思いの男は、本人が言わないなら、とのらりくらりと追求の手をかわしていた。
「言っちゃえばいいのに──飽きました、って」
ケラケラと笑っている金茶色の髪の男に、黒髪の男は鼻を鳴らした。
「言うのも面倒なんでね。何ならお前が代わりに言ってくれよ」
「ごめんだね。それこそ面倒くせー」
「だろう?」
藍色の瞳は憂いを帯び、それが青年の美貌を更に際立たせている。
フィギュア界では知らぬものなどいないほどの有名人である彼は、引退しても時折リンクの上に立つことがあった。
昼間は一般にも開放されるリンクを、夜間に貸し切るのだ。
スケート教室の生徒たちが練習を終えた、更にそのあとに滑ることになるので、リンクにはほとんどいつも彼ひとりだった。
現役を退いたばかりだから、スピードもキレも、ジャンプの高さも、選手だった頃と何も変わらない。
そして、リンクの上に立っているときは、常の無表情が嘘のように楽しそうな顔をしている。
「滑るのが嫌になったわけじゃねぇんだろうが」
「スケートは好きだよ。そもそも、俺にはこれしかないしな」
「プロになる気もねぇの?」
「さぁ・・・呼ばれれば出演するかも知れないが・・・今は、滑っていても、心が躍らないんだ。ここには、落ち着くから来るだけ。以前のように、沸き立つものがあるわけじゃない」
珍しく弱気なことを口にする友人に、金茶色の髪の男は肩をすくめて嘆息した。
涼しげな美貌に反して中身はかなり情熱的な男だからこそ、冷めると永久凍土の氷のように溶けることを知らない。
「五輪でも世界選手権でも、取れと言われたタイトルは取ってきた。──もう、十分だろう?」
祖国のことを言っているのだろう。
スケートは楽しい。
ジャンプやステップで観客が沸けば、子どものように嬉しくなった。
難易度の高い技に挑み、強敵たちと鎬を削り、誰よりも高い評価を得て優勝する。
だからリンクの上に立っている時間は好きだったけれど、それ以外は地獄だった。
思い出したくない過去が脳裏に蘇り、思わず頭を振った。
「──あれ? 練習ですか?」
そのとき、澄んだ声がふたりの耳に届いた。
リンクの上の青年と、リンクサイドの青年はともにそちらに目を遣った。
ふたり同時に目を瞠る。
「──あああっ! ヴァンツァー・ファロット選手だ!!」
そこには、銀色の天使がいたのだ。
『銀盤の天使』、『氷上の妖精』と呼ばれる少女。
彼女もまた、フィギュアスケーターだった。
「すごーい、すごーい! はじめまして!!」
スケート靴を履いているのにぴょんぴょん飛び跳ねている少女は、走った勢いのまま氷の上に乗ると、青年に握手を求めた──というより、半ば無理やり青年の手を握った。
「あなたの3アクセル、すごく好きです!!」
にっこりと笑ってそんなことを言ってくる少女の勢いに押され、ヴァンツァーは目を丸くしたまま固まっている。
珍しいものが見られた金茶色の青年は、おかしそうに腹を抱えて笑っている。
「私も、3アクセル練習してるんです!」
「・・・知っている。試合で決めたこともあるだろう」
「──うわぁ、見てて下さったんですか?!」
すごーい、とはしゃいでいる少女に、ヴァンツァーは苦笑した。
「今から練習か? 悪いな。他に人が来るとは聞いていなかった」
「あ、違うんです。本当は昼間のはずだったんですけど、急用が出来ちゃって」
直前に時間を変更してもらったから、周知がなされていなかったのだろう、と少女は頭を下げた。
「コーチは?」
訊ねた青年に、少女は少し困ったように笑った。
「・・・いません」
「──は?」
「今日、辞めるって連絡がありました」
その話で昼間の練習が出来なくて、と頬を掻いて笑う少女。
笑い事ではない。
これからシーズンが始まるというときに、コーチ不在の選手など聞いたことがない。
それも、この少女はシニアに上がったばかりの頃にグランプリ・ファイナルで優勝してしまうような実力者だ。
「・・・後任は?」
「これから決める予定なんですけど・・・たぶん、グランプリ・シリーズの間はコーチ不在で進めると思うんです」
「馬鹿な。ファイナルに出られたとして、世界選手権まで2ヶ月しかないんだぞ? 新しいコーチとの急拵えの連携で、上手くいくはずがない」
「うーん・・・でも、やってみないと分からないですよね。振り付けはもう出来てるので、あとは滑り込んでいくだけですから」
明るく笑う少女に、言い知れぬ怒りを覚えた。
もしかしたらそれは急に辞めたコーチに対してだったかも知れないし、彼女のスポンサーやバックアップをする人間たちにだったかも知れない。
ともかく、冷たく見える藍色の瞳が紅く色を変えそうなほど、彼は憤っていた。
「構成は」
「はい?」
「プログラム構成だ。特にジャンプ」
「えっと・・・ショートは3フリップ-3トゥループ、3ルッツ、2アクセル。フリーは、3アクセルと3回転-3回転を入れる予定なんですけど・・・」
素晴らしい美青年が非常に険しい表情をしているので、少女はびくびくしながら構成を口にした。
途端に、女性よりもずっと妖艶な美貌が、思い切り顰められたのだった。
「──無理だ」
「え・・・?」
「コーチもいないのに、3アクセルに3回転のコンビネーション? やめておけ。怪我をするだけだ」
「でも」
「どうしても出場するなら、3アクセルはやめろ」
「そんな・・・」
「お前のアクセルを見たことがある。アクセルだけじゃなく、お前のジャンプは回転の速さが命だ。回転の速さで跳ぶ選手は、ジャンプのタイミングですべてが決まる。高さと飛距離のある選手なら、ある程度タイミングや軸がズレても着氷出来ることもあるが、お前のジャンプには高さはあるが飛距離がない。その分滞空時間が短くなる。だから、タイミングを逃すと着氷出来ない。出来ても回転不足。最悪、転倒して怪我をする可能性もある。特にアクセルは、他のジャンプとは難易度が桁違いだ」
「・・・・・・」
「コーチ不在で不安定な精神状態で、一瞬のタイミングが命の3アクセルに挑むのは、無謀を通り越して自殺行為でしかない」
じっと瞬きもせずに青年の言葉に耳を傾けている少女。
金茶色の青年は、内心で「可哀想に」と思っていた。
顔は綺麗だが、図体がデカくて偉そうできつい物言いをする男にこんなことを言われたら、普通の女の子なら泣き出してしまう。
今日、コーチが辞めたのなら尚更。
精神は疲弊しているはずだ。
「じゃあ・・・」
黙って聞いていた少女だったが、きゅっと唇を引き結んで青年を見上げた。
「──じゃあ、あなたがコーチになって下さい!」
これには男ふたりが目を真ん丸にした。
「ファロット選手は、3アクセル得意ですよね? ちょうどいいじゃないですか。教えて下さいっ!」
にっこり笑って頭を下げる少女に、ヴァンツァーは痛む頭を抱えた。
「お前・・・正気か? 俺はコーチなどやったことはない」
「でも、誰だって最初は初心者です。跳べるんだもん。教えられるはずですよ」
大丈夫、大丈夫、と根拠のないことを口にしてにこにこ笑っている少女は、コーチが辞めたショックで頭がおかしくなったのだろうか、と疑ってしまう。
「それに、試合でほんの少し私の演技を見ただけなのに、ジャンプの癖まで指摘出来るんだから、きっとコーチに向いてますよ」
「多少なりともフィギュアスケートの知識と経験がある人間なら、誰でも同じように指摘出来る」
「そうですか? 少なくとも、うちのチームにはジャンプのタイミングのことを指摘してくれる人はいませんでしたけど・・・」
「それなら、そいつら全員クビにしろ。素人じゃあるまいし」
「ファロット選手って、美形なのに口悪いんですね」
あはは、と笑う少女に、金茶色の髪の青年が盛大に吹き出した。
「・・・レティー・・・レティシア」
「だって・・・おま・・・ぶっははははははっ!!!!」
ゲラゲラ笑って死にそうになっている友人のことなど放っておいて、ヴァンツァーは期待に満ちた瞳で見上げてくる少女に告げた。
「何でもいい、滑ってみろ」
「──え?」
「今季のプログラムでも、以前のでも、ショートでもフリーでもいい。それを見て決める」
「──分かりました! 音、用意してきますね!!」
やったー! とまだ決まってもいないのに大はしゃぎで控え室の方へ向かった少女の背中に、ヴァンツァーは大きなため息を零した。
レティシアは、まだ痛む腹を押さえて目尻の涙を拭っている。
「おっもしれーな、あのお嬢ちゃん! 最っ高だな!」
「・・・だったらお前がコーチになれよ」
「俺はスケーターじゃなくて、ダンサー。コリオグラファーです」
お、と何かに気づいた顔になるレティシア。
「それいーじゃん! お前がコーチで、俺がコリオグラファー。楽しそうじゃね?」
「・・・また、お前はそういう馬鹿なことを」
「いーじゃん! どうせ退屈なんだろ? 暇つぶしくらいにはなるんじゃねーの?」
「・・・・・・」
馬鹿か、という顔でため息を零したヴァンツァーは、5分ほどして戻ってきた少女の演技を見て、彼女の元コーチを嘲笑った。
「・・・馬鹿が・・・」
──こんな面白い素材を、自ら捨てるとは。
こうして、伝説の序章が、幕を開けたのである。
**********
長いな・・・出会い編、ですかね。あんまり考えて書いてません。なんとなく、思いつくままに書き連ねてみました。あー、久々のシェラが可愛くて悶える(笑)
怪我をしたわけでもなく、23歳というアスリートとしてもっとも脂の乗った時期に、彼は引退をした。
マスコミはこぞって理由を知りたがったが、彼が口を開くことはなかった。
彼の長年の友人でもあるダンサーだけがそれを知っていたが、口が軽そうに見えて友人思いの男は、本人が言わないなら、とのらりくらりと追求の手をかわしていた。
「言っちゃえばいいのに──飽きました、って」
ケラケラと笑っている金茶色の髪の男に、黒髪の男は鼻を鳴らした。
「言うのも面倒なんでね。何ならお前が代わりに言ってくれよ」
「ごめんだね。それこそ面倒くせー」
「だろう?」
藍色の瞳は憂いを帯び、それが青年の美貌を更に際立たせている。
フィギュア界では知らぬものなどいないほどの有名人である彼は、引退しても時折リンクの上に立つことがあった。
昼間は一般にも開放されるリンクを、夜間に貸し切るのだ。
スケート教室の生徒たちが練習を終えた、更にそのあとに滑ることになるので、リンクにはほとんどいつも彼ひとりだった。
現役を退いたばかりだから、スピードもキレも、ジャンプの高さも、選手だった頃と何も変わらない。
そして、リンクの上に立っているときは、常の無表情が嘘のように楽しそうな顔をしている。
「滑るのが嫌になったわけじゃねぇんだろうが」
「スケートは好きだよ。そもそも、俺にはこれしかないしな」
「プロになる気もねぇの?」
「さぁ・・・呼ばれれば出演するかも知れないが・・・今は、滑っていても、心が躍らないんだ。ここには、落ち着くから来るだけ。以前のように、沸き立つものがあるわけじゃない」
珍しく弱気なことを口にする友人に、金茶色の髪の男は肩をすくめて嘆息した。
涼しげな美貌に反して中身はかなり情熱的な男だからこそ、冷めると永久凍土の氷のように溶けることを知らない。
「五輪でも世界選手権でも、取れと言われたタイトルは取ってきた。──もう、十分だろう?」
祖国のことを言っているのだろう。
スケートは楽しい。
ジャンプやステップで観客が沸けば、子どものように嬉しくなった。
難易度の高い技に挑み、強敵たちと鎬を削り、誰よりも高い評価を得て優勝する。
だからリンクの上に立っている時間は好きだったけれど、それ以外は地獄だった。
思い出したくない過去が脳裏に蘇り、思わず頭を振った。
「──あれ? 練習ですか?」
そのとき、澄んだ声がふたりの耳に届いた。
リンクの上の青年と、リンクサイドの青年はともにそちらに目を遣った。
ふたり同時に目を瞠る。
「──あああっ! ヴァンツァー・ファロット選手だ!!」
そこには、銀色の天使がいたのだ。
『銀盤の天使』、『氷上の妖精』と呼ばれる少女。
彼女もまた、フィギュアスケーターだった。
「すごーい、すごーい! はじめまして!!」
スケート靴を履いているのにぴょんぴょん飛び跳ねている少女は、走った勢いのまま氷の上に乗ると、青年に握手を求めた──というより、半ば無理やり青年の手を握った。
「あなたの3アクセル、すごく好きです!!」
にっこりと笑ってそんなことを言ってくる少女の勢いに押され、ヴァンツァーは目を丸くしたまま固まっている。
珍しいものが見られた金茶色の青年は、おかしそうに腹を抱えて笑っている。
「私も、3アクセル練習してるんです!」
「・・・知っている。試合で決めたこともあるだろう」
「──うわぁ、見てて下さったんですか?!」
すごーい、とはしゃいでいる少女に、ヴァンツァーは苦笑した。
「今から練習か? 悪いな。他に人が来るとは聞いていなかった」
「あ、違うんです。本当は昼間のはずだったんですけど、急用が出来ちゃって」
直前に時間を変更してもらったから、周知がなされていなかったのだろう、と少女は頭を下げた。
「コーチは?」
訊ねた青年に、少女は少し困ったように笑った。
「・・・いません」
「──は?」
「今日、辞めるって連絡がありました」
その話で昼間の練習が出来なくて、と頬を掻いて笑う少女。
笑い事ではない。
これからシーズンが始まるというときに、コーチ不在の選手など聞いたことがない。
それも、この少女はシニアに上がったばかりの頃にグランプリ・ファイナルで優勝してしまうような実力者だ。
「・・・後任は?」
「これから決める予定なんですけど・・・たぶん、グランプリ・シリーズの間はコーチ不在で進めると思うんです」
「馬鹿な。ファイナルに出られたとして、世界選手権まで2ヶ月しかないんだぞ? 新しいコーチとの急拵えの連携で、上手くいくはずがない」
「うーん・・・でも、やってみないと分からないですよね。振り付けはもう出来てるので、あとは滑り込んでいくだけですから」
明るく笑う少女に、言い知れぬ怒りを覚えた。
もしかしたらそれは急に辞めたコーチに対してだったかも知れないし、彼女のスポンサーやバックアップをする人間たちにだったかも知れない。
ともかく、冷たく見える藍色の瞳が紅く色を変えそうなほど、彼は憤っていた。
「構成は」
「はい?」
「プログラム構成だ。特にジャンプ」
「えっと・・・ショートは3フリップ-3トゥループ、3ルッツ、2アクセル。フリーは、3アクセルと3回転-3回転を入れる予定なんですけど・・・」
素晴らしい美青年が非常に険しい表情をしているので、少女はびくびくしながら構成を口にした。
途端に、女性よりもずっと妖艶な美貌が、思い切り顰められたのだった。
「──無理だ」
「え・・・?」
「コーチもいないのに、3アクセルに3回転のコンビネーション? やめておけ。怪我をするだけだ」
「でも」
「どうしても出場するなら、3アクセルはやめろ」
「そんな・・・」
「お前のアクセルを見たことがある。アクセルだけじゃなく、お前のジャンプは回転の速さが命だ。回転の速さで跳ぶ選手は、ジャンプのタイミングですべてが決まる。高さと飛距離のある選手なら、ある程度タイミングや軸がズレても着氷出来ることもあるが、お前のジャンプには高さはあるが飛距離がない。その分滞空時間が短くなる。だから、タイミングを逃すと着氷出来ない。出来ても回転不足。最悪、転倒して怪我をする可能性もある。特にアクセルは、他のジャンプとは難易度が桁違いだ」
「・・・・・・」
「コーチ不在で不安定な精神状態で、一瞬のタイミングが命の3アクセルに挑むのは、無謀を通り越して自殺行為でしかない」
じっと瞬きもせずに青年の言葉に耳を傾けている少女。
金茶色の青年は、内心で「可哀想に」と思っていた。
顔は綺麗だが、図体がデカくて偉そうできつい物言いをする男にこんなことを言われたら、普通の女の子なら泣き出してしまう。
今日、コーチが辞めたのなら尚更。
精神は疲弊しているはずだ。
「じゃあ・・・」
黙って聞いていた少女だったが、きゅっと唇を引き結んで青年を見上げた。
「──じゃあ、あなたがコーチになって下さい!」
これには男ふたりが目を真ん丸にした。
「ファロット選手は、3アクセル得意ですよね? ちょうどいいじゃないですか。教えて下さいっ!」
にっこり笑って頭を下げる少女に、ヴァンツァーは痛む頭を抱えた。
「お前・・・正気か? 俺はコーチなどやったことはない」
「でも、誰だって最初は初心者です。跳べるんだもん。教えられるはずですよ」
大丈夫、大丈夫、と根拠のないことを口にしてにこにこ笑っている少女は、コーチが辞めたショックで頭がおかしくなったのだろうか、と疑ってしまう。
「それに、試合でほんの少し私の演技を見ただけなのに、ジャンプの癖まで指摘出来るんだから、きっとコーチに向いてますよ」
「多少なりともフィギュアスケートの知識と経験がある人間なら、誰でも同じように指摘出来る」
「そうですか? 少なくとも、うちのチームにはジャンプのタイミングのことを指摘してくれる人はいませんでしたけど・・・」
「それなら、そいつら全員クビにしろ。素人じゃあるまいし」
「ファロット選手って、美形なのに口悪いんですね」
あはは、と笑う少女に、金茶色の髪の青年が盛大に吹き出した。
「・・・レティー・・・レティシア」
「だって・・・おま・・・ぶっははははははっ!!!!」
ゲラゲラ笑って死にそうになっている友人のことなど放っておいて、ヴァンツァーは期待に満ちた瞳で見上げてくる少女に告げた。
「何でもいい、滑ってみろ」
「──え?」
「今季のプログラムでも、以前のでも、ショートでもフリーでもいい。それを見て決める」
「──分かりました! 音、用意してきますね!!」
やったー! とまだ決まってもいないのに大はしゃぎで控え室の方へ向かった少女の背中に、ヴァンツァーは大きなため息を零した。
レティシアは、まだ痛む腹を押さえて目尻の涙を拭っている。
「おっもしれーな、あのお嬢ちゃん! 最っ高だな!」
「・・・だったらお前がコーチになれよ」
「俺はスケーターじゃなくて、ダンサー。コリオグラファーです」
お、と何かに気づいた顔になるレティシア。
「それいーじゃん! お前がコーチで、俺がコリオグラファー。楽しそうじゃね?」
「・・・また、お前はそういう馬鹿なことを」
「いーじゃん! どうせ退屈なんだろ? 暇つぶしくらいにはなるんじゃねーの?」
「・・・・・・」
馬鹿か、という顔でため息を零したヴァンツァーは、5分ほどして戻ってきた少女の演技を見て、彼女の元コーチを嘲笑った。
「・・・馬鹿が・・・」
──こんな面白い素材を、自ら捨てるとは。
こうして、伝説の序章が、幕を開けたのである。
**********
長いな・・・出会い編、ですかね。あんまり考えて書いてません。なんとなく、思いつくままに書き連ねてみました。あー、久々のシェラが可愛くて悶える(笑)
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