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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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脳疲労でした。コーディングしてると、すぐですね。CSSはともかく、他人の書いたPHPを弄るのはなぁ。CSSも、どこに目当ての内容が書いてあるのかさっぱり(笑)直すことよりも、見つけることの方が大変だったり(笑)

来月からは、主にHP関係で忙しくなりそうです──仕事のな。ネット漬けということですな。ふふふ。


**********

「何してんの?」
「・・・・・・」

ひと月ぶりの恋人との再会だというのに、それはあんまりだ、とキニアンは思ったわけだが、まぁ、そこは女王様なので仕方ないか、と内心でため息を零した。

「夕飯に、呼ばれました」
「そう」

あまり興味がなさそうな様子でそれだけ言うと、カノンはシェラに「ぼくにもお茶淹れてもらえる?」とお願いした。
シェラが笑顔で了承すると、色濃く漂う疲労感でその美貌をどこか妖しげなものにした青年は、ぽすん、とキニアンの隣に腰掛けた。
定位置といえば定位置だが、これだけ長いこと会っていなかったものだから何だか妙にどきどきする。

「・・・カノ」
「──チェロ持ってきた?」

名前を呼ぼうとした矢先に訊ねられ、思わず「あ、はい」と頷いた。
カノンを送り届けるだけのとき以外は、チェロを持ってファロット邸に来るように女王様から仰せつかっているのだ。
大学でも使用するため、エア・カーにも億は下らない名器を安全に運ぶだけの機能を持たせてある。

「そ」
「・・・・・・」

またそれだけ言って、カノンはキニアンの肩に頭を預けた。

「──カノン?」
「疲れた。ちょっと肩貸して」
「あぁ、うん」

そのまま目を閉じ、深く呼吸をする。
何度かそれを繰り返したところで、ゆっくりと瞼が持ち上げられた。
宝石のような菫色の瞳が間近にあって、とくん、と心臓が鳴った。

──ずっと見たかった色。

思わず指先を伸ばし、銀色の毛先に触れた。

──ゾクッ。

やわらかな質感に、心臓は煩くなるばかり。
耳元で鼓動を聞いている錯覚に、キニアンは喉を鳴らした。

「・・・・・・」

ゆっくりと隠されていく菫を追うようにしてカノンの身体に覆いかぶさり、顔を傾け、唇を求めた。

「──ロイヤルミルクティーでいい?」

──ばっ!!

その速きこと風のごとし。
突き飛ばさないだけまだマシだったが、勢いよく顔を上げたキニアンはしっかりシェラと目を合わせるハメになってしまった。

~~~~~っ、かぁぁぁぁぁぁぁぁっ。

みるみるうちに赤くなっていく端正な容貌に、シェラは眉を下げた。

「お邪魔しちゃったみたいだね」
「あ、いえ、その、俺は、そんな・・・」
「今更キス見られたからって何なの?」
「カノンっ」
「あー、もー、シェラ~~~。ちゅーしてー」

テーブルに茶器を置いたシェラにむぎゅっと抱きつくカノン。
くすくす笑って抱き返しているシェラと、すぐそばにあったぬくもりがなくなってしまって何だか肌寒い思いをしているキニアン。

「せっかくアー君いるんだから、アー君に甘えなさい」
「二度目はないの」
「・・・・・・」

ずーーーん、と暗黒を背負ってしまった未来の婿の姿があまりに気の毒で、シェラはつん、とカノンの鼻の頭を突付いた。

「あんなに会いたがってたくせに」
「──・・・え?」

思わず顔を上げるキニアン。

「そんなことないもん」
「アー君から電話かかってきたあと、ちょっと元気になってたじゃない」
「違うったら!」

むぅぅ、と唇を尖らせるのが可愛くて、シェラは『えい、えい』とカノンの額を小突いている。
そんな花が咲き乱れる楽園のような光景にうっかり見惚れていたキニアンを、カノンは振り返りざまキッと睨みつけた。

「違うからね!」
「・・・あ、はい」
「ちょっと疲れてただけなんだから。アリスからの電話で、元気になったわけじゃないんだからねっ」
「あぁ、うん。大丈夫。分かってるから」

大真面目な顔で頷く彼氏に、カノンは今度はシェラに向かってぷくっと頬を膨らませた。

「あんなこと言うんだよ?! ひどくない?! 何、分かってるって。何も分かってないじゃん!」

完全な八つ当たりだったが、シェラは微笑ましそうに見つめているばかり。

「だから素直に甘えなさい、って言ってるのに」
「やだ、あんな鈍感、知らないっ」

むぎゅ、とシェラの胸に顔を埋めたカノン。
よしよし、と背中を撫でてやりながら、シェラはキニアンに向かって片目を瞑って見せた。

「今のを翻訳するとね、『ちょー寂しくて、ちょー会いたかったのに、ぎゅーってしてくれないんだよ?!』ってことみたい」
「シェラ! 勝手なこと言わないでよ!」
「あはは。可愛い~」
「もうっ!」

人のことならばよく分かる聖母は、このちょっとばかり素直でない息子が恋人を大好きなことがよく分かっているので、にこにこしながら八つ当たりを受け止めている。

「あー・・・えっと・・・何で、忙しくしてたんだ?」

当然といえば当然の疑問に、カノンはまだ頬を膨らませたまま答えた。

「・・・学位を取ってました」
「──学位?」

だってまだ大学2年生だ。
天才と誉れ高いカノンであれば可能には違いないのだが、そのあまりの内容に固まるキニアン。

「学位、って・・・」
「経営学修士」
「──修士?!」

音楽以外何も知らないだの、音楽馬鹿だの言われているキニアンだったし、実際ニュースの類はあまり見ないが、『修士』が何を指すかくらい知っている。

「・・・お前、大学院通ってたの? でも、在学中だろう?」
「大卒と同等の学力が認められれば、入れてくれるよ」
「念のために確認するけど、イル・ヴァーレの院・・・?」
「他に通うの面倒だし。そんな時間もないから」
「・・・・・・」

名門中の名門で、連邦中から頭脳という頭脳が集まってくる大学の、これまた精鋭たちの集まりである大学院に、この銀色の天使は籍を置いていたらしい。

「いつから?」
「もう1年くらいかな」
「そんなに・・・大変、だったんだろうな」
「論文がね。修士論文は、さすがにちょっと大変だった」
「この1ヶ月、頑張ってたもんねぇ」
「──あ、だから・・・」

ようやく得心がいったキニアンだ。
自分の知らないところで──つまりは週に1度程度は会うことを制限せずに──大学院に通っていた天才も、本腰を入れなければならなかったということだろう。

「そっか・・・」

何だか情けなくなったキニアンだ。
カノンは将来のためにこんなにも努力を重ねているというのに、自分はどうだ。
ほんの少し会えないだけで動転して、ボロボロの演奏になって、フラれるんじゃないかと恋人を疑って。

「・・・なんか・・・ごめん」
「何が?」
「いや・・・なんか・・・」

どう言えばいいのか分からず、がっくりと項垂れる。

「・・・たとえばさ」
「うん」
「たとえば俺がチェロ弾けなくなったら、どうする・・・?」
「怪我するとか?」
「いや、そういうんじゃなくて・・・何か、ダメになったり・・・」

シェラ特製のミルクティーを飲みながら、カノンはちょっと考えて口を開いた。

「弾きたくないの?」
「──え?」
「チェロ。弾きたくないの?」
「あ、いや・・・そういうんじゃない。なんていうか、今よりずっと下手になったり、とか・・・」
「チェロ、好き?」
「・・・・・・」

改めて問われて、どうなんだろう? と自問する。
やらされていた感覚の強かった幼少期は苦痛で、触れ合ううちに互いに通じるものがあることが感じられるようになった相棒。
もう、好きとか嫌いとか、そういう問題ではない気がする。

「・・・大事、だよ」

少なくとも、カノンと天秤にかけられないくらいには。
ということは、自分の中では何よりも大切なもののひとつに違いない。
短い言葉の中にそれだけの思いを込めて告げたキニアンに、カノンは疲労の漂う気怠げな様子ながら、口許に笑みを浮かべて見せた。

「じゃあ、いいじゃん」
「──え?」
「ぼく、巧いとか下手とかよく分からないし」
「・・・・・・」
「ただ、アリスの音は好きだよ。巧いから好きなわけじゃなくてさ」
「・・・今と同じように弾けなくても・・・?」
「それがどんな音なのかよく分からないけど・・・」

カノンはまたちょっと考えて「うん」と頷いた。

「アリスが楽しいなら、それでいいと思うよ。小難しいこと考えなくていいんじゃないかな?」
「──・・・・・・」

思わず目を瞠ったキニアンに、カノンはにっと笑った。

「プロになれなかったら、養ってあげようか」
「あ、カノンそれってプロポーズ?」
「違う、違う。犬を飼うってこと」

ちょっと身を乗り出したシェラに、チェロの弾ける犬って珍しくない? と明るく笑って半ば本気で言っているカノンに、キニアンは苦笑した。

「カーノン」

何だか嬉しくなって抱きしめた。

「ちょっ、こら。紅茶零れる!」
「じゃあ置いて」

耳元で話されて、思わず首をすくめる。

「っ・・・みみ・・・」
「置いて」
「・・・・・・」

耳と首が弱い上に、低音の声──特にキニアンのそれ──にも滅法弱いカノン。
悔しげに頬を染めながら、カップをテーブルに置いた。
ここぞとばかりにぎゅうっと細い身体を抱きしめるキニアン。
特に痩せたとか、そういう体調の変化はないようで安心する。
まぁ、シェラが傍にいてそんな愚は犯さないだろうが。
ふんわりとやさしくて甘い匂いに、ほっとする。

「久々」
「・・・離せ」
「もうちょっと」
「・・・シェラ見てるよ」
「んー。いいよ」
「・・・・・・」

さっきは慌ててたくせに、とむくれながらも頬が緩みそうになるのを止められない。
シェラはそっと席を立って、キッチンへと向かった。

「カノンさん」
「・・・なに」
「おかえりのキス、してもいいですか?」

これには眉を上げたカノンだった。

「どういう風の吹き回し?」
「なんかそんな気分」
「ふーん」

別にいいけど、と了承をいただいた青年は、微笑を浮かべて待ち望んだ感触を求めた。

「・・・あの」
「なに」
「えっと・・・」
「だから何」

口調ほど機嫌の悪くない女王様に、男前の顔をちょっと情けない様子にした青年は思い切って頼んでみた。


──お疲れ様のキスも、していいですか?



**********

よし。終われ。
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