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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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あるけれど。

やっぱり最後は、音で勝負だと思うんだ。

**********

「ちょーかっこ良くなーい?」

高校生活も、残すところあと1年。
大学進学を控えたり、就職を希望していたりと、進路は様々だけれど。
どこかピリリと張り詰めた空気になるのは、もう少し先のこと。
今はまだ、嵐の前の静けさとも言うべきか、これまでの学生生活とそう変わらない過ごし方をするものが多い。
そんな、ある日の放課後のこと。

「やばーい! ちょーイケメン!」
「だよねー! しかもチェロだってー」

──ぴくくぅ。

女子生徒たちの話が気になったのは、きっとその楽器のせい。
つきあって1年半ほどになる恋人が、相棒とも言っている、ちょっぴり妬けてしまう相手──そんなこと絶対本人の前では言わないけれど。

「楽器出来る男って、なんでこんなにかっこいいんだろ?」
「ピアノとか、目の前で弾かれたら多少見た目がマズくても好きになっちゃうかも?!」
「あはは、分かる~」

そんな平和な会話が展開されている中に、だって、どうしても気になってしまったから、カノンは「何の話?」と声をかけて入っていった。
『王子様』とか『天使』とか呼ばれて久しい少年に、少女たちは一様に顔を赤らめた。
同じクラスなのだから会話をすることだってあるけれど、それでもふわふわの銀髪に紫水晶のような瞳が美しい少年に話しかけられれば、ドキドキしてしまうのが女の子というもの。

「あ・・・あの・・・」
「うん?」
「チェロ、でね・・・?」
「うん」
「ロックの曲を演奏するふたり組がいて・・・」
「うんうん」
「・・・それが、かっこ良くて」

そう言って、手元の携帯端末を示す。
そこには、動画投稿サイトの画面。
どうやらここに、件のチェロ奏者がいるらしい。

「──へぇ、そうなんだ」

にっこりと笑った少年の方が画面の中のふたりよりずっと美しい容姿をしてはいるのだけれど、『イケメン』と『楽器』という強力なコンボはかなりの威力らしく。

「それ、ぼくも見させてもらっていい?」
「──あ、うん、もちろん!」

ありがとう、とまた微笑みを浮かべる美少年に、少女たちはぽーっとなって見惚れている。
周りの迷惑になるといけないから、とイヤホンを渡され、端末を操作して演奏を聴く。

──・・・あれ。

端正な容貌の男ふたりによって奏でられる、激しい曲調。
そうそう音楽を嗜むわけでもなく、またロックという分野は完全に門外漢であるカノンだったので、曲は聴いたことのないものだった。
情熱を叩きつけるような演奏と、奏でるというよりは掻き鳴らすような弓の動き。
速いパッセージは、特に音が狂っているようには聴こえない。
時折チェロをくるり、と回し、ただ音を出すだけでなくアクションも交えての演奏。

──ふむ・・・。

ふたりの男が時折視線を交わし、音による掛け合いをする。
それは、『お前、ここまで来られるか?』と、どこか挑発するような音だったり。
『この激しさ、たまんないだろう?』と誘うようでもあったり。

──ふーん。

しばらく聴いていたカノンだったけれど、動画が2分ほど進んだところでイヤホンを外した。

「ありがとう。ごめんね邪魔して」

にっこり笑ってそう言うと、女の子たちはぶんぶん首を振った。
そして、カノンは「じゃあね」と言って教室を出たのだった。
その足で隣の教室へと赴くと、同じように帰り仕度をしている青年の姿。
これから部活であることは分かっているから、間に合って良かった。

「アーリス」
「・・・・・・」

呼ばれた青年は、思わず表情を強ばらせた──いや、彼が表情に乏しいのはいつものことだが。

「・・・何でしょう」
「あのね、あのね、ちょっとお願いがあるんだけど」

にっこりと、それはもう愛くるしいまでの笑みを浮かべた天使様。
それこそ天にも昇るような気持ちにさせてくれるそれを目の当たりにし、しかしキニアンは嫌な予感しかしなかった。

「・・・断れないんですよね?」
「アリス、やさしいからそんなことしないって、信じてるもん」
「・・・・・・」

相変わらずにこにこと。
本当にそう思っているのかかなり怪しい満面の笑みを浮かべた女王様に、キニアンはため息を零しつつも、「なんですか?」と訊ねた。

「次、部活休みの日っていつ?」
「──え?」
「今度の土日とか、お休みある?」
「それって・・・」

もしかしてデートのお誘いだろうか、と軽く目を瞠り、内心は飛び上がらんばかりになった青年に、カノンは可愛くおねだりをした。

「アリスのチェロが、聴きたいな~」

ダメ? なんていって小首を傾げられては『否』と言えるはずもなく。
ちょうどこの週末は土日とも休みだったから、どちらでもいいと答えると。

「──ほんと?! わぁ、じゃあうちに来てね」

頬を染め、嬉しそうに微笑む顔が見られたからまぁいいか、と。
キニアンは「分かった」と頷いて部活へと向かったのだった。



**********

デレてみた。

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