小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
き、今日1日頑張るんだ・・・やるこたーいっぱいある。寝たら死ぬぞ・・・。
眠気覚ましに、いちゃこらぶでも。
眠気覚ましに、いちゃこらぶでも。
**********
「ねぇ、アリスぅ」
いつも以上に舌っ足らずな甘えた声に、夕飯の準備をしていた青年はキッチンの入口に目を遣った。
お尻の辺りで手を組んでもじもじしている姿は大変可愛らしいが、ご飯の催促だろうか? それとも食後のデザートのリクエストだろうか? と内心で首を傾げる。
「あのね、あのね」
「何ですか?」
ちょこちょこと寄ってきて、つんつん、と袖を引かれる。
これは本格的に、何かお願いごとでもあろうのだろう、と嬉しくもくすぐったい気持ちで穏やかな視線を返せば、カノンは期待に満ちた瞳でキニアンを見つめて言った。
「ぼく、アリスのお嫁さん?」
「──へ?」
シチューの鍋を混ぜる手を止め、きょとん、とした顔になる青年に、カノンはむぅ、と唇を尖らせた。
「お嫁さん? 違うの?」
「え、あ、はい・・・およめさん・・・です・・・?」
「──だよねぇ!!」
肯定の言葉を返すと、カノンは極上の笑みを浮かべて見せた。
まぶしっ、と若干怯んだキニアンだったが、なぜ突然そんなことを言い出したのかが気になった。
「なに、今更──はっ! もしかして、やっぱり指輪気に入らなかったのか?!」
半年前に渡した指輪は、今もしっかりカノンの左手で輝いている。
渡した当初は風呂に入るときや手を洗うときに外そうかどうしようか迷っていたり、でもなくしたら、と悩んでいたりする姿を微笑ましく思っていたものだが、最近はずっと肌身離さずつけていてくれる。
それがとても嬉しかったのだが、やはり何か思うところがあるのだろうか。
「そんなわけないじゃん。これぼくのだもん」
アリスにだって、返してあげないよーだ! と言って笑う顔が可愛くて、クラッと眩暈がしたキニアンだった。
最近、ただひたすらにカノンを甘やかしたくて仕方がなく、何だかダメ男街道まっしぐらな気がしてしまう青年だったが、もう、この顔が見られるならそれだけでいい気がする。
「そっかぁ、お嫁さんかぁ・・・ふふふ」
本人が嬉しそうなのは大変喜ばしいことだったが、一体どうしてしまったというのだろうか。
「なに、結婚式でも挙げたくなったの?」
キニアンが何気なくそう告げると、菫色の瞳が真ん丸になった。
「あれ、違った?」
「・・・なんで、そんなこと言うの?」
「なんとなく」
本当に、ただなんとなくそう思っただけなのだけれど、カノンの表情がみるみるうちに曇ってしまった正直焦った青年だった。
──おい! ちょっと前まで機嫌よく笑ってただろう!
何でだ!! と狼狽する青年のことなどつゆ知らず、カノンはしょんぼりとした様子で項垂れている。
「・・・ぼく、アリスのお嫁さんだもん・・・」
「あぁ、うん、そうだけど」
「だから、それでいいんだもん」
「・・・・・・」
全然良くないんでしょうが、とため息を零したキニアンは、ちょっと身を屈めてカノンの顔を下から覗き込んだ。
「シンデレラ城がいいですか?」
「──・・・え・・・?」
これ以上は無理だ、というくらい大きく見開かれる瞳。
不安気に揺れるそれを宥めるように、キニアン努めてやさしく微笑んだ。
「他の場所がいい? でも、好きだろう、ねずみーランド?」
「・・・・・・」
ぱくぱく、と唇を動かしていたカノンがやがて「お・・・お金」と呟くものだから、キニアンは思わず吹き出してしまった。
「んー。確かに、今すぐに、って言われたら厳しいかも」
「・・・・・・」
「半年か、1年か・・・足りない分は、一所懸命働いて貯めますよ」
「ち、ちが・・・」
「え?」
「お、お金、ぼ、ぼく出す!」
「──はい?」
「ぼ、ぼく・・・ちち、貯金、あ、あ、あるからっ! お、おおお、お金ならあるからっ!!」
「・・・・・・」
「あ、あああ、アリスは、いいの! 何にもしなくて、いいの! き、気が変わらないでいてくれたら、それでいいの!!」
どうしよう、どうしよう、と額に手を当ててあたふたしているカノンの姿を見て、キニアンはとりあえずコンロの火を止めた。
そして、
「ちょっと落ち着け」
と言って、おもむろにカノンを抱きしめたのだった。
かぁぁぁぁ、と顔を紅くする様子は大層可愛らしかったが、今の発言はいただけない。
「何にもしなくていい、ってことはないだろう?」
「・・・・・・」
「それに、気が変わるって何だ」
ちょっと怒ったような声音に、カノンは恐る恐る顔を上げた。
やはり、いつもよりちょっと険しい表情をしている。
いや、仏頂面──に見える──は割りといつもなのだが、それでもやさしく微笑むことが多くなってきたというのに。
「・・・怒ってる・・・?」
「怒ってないよ。呆れてるけど」
「むぅ・・・」
「むぅ、じゃありません」
尖ったカノンの唇を、片手でむぎゅっと掴んで嗜める。
「俺が嫌だって言うと思ったのか?」
「そういうわけでも・・・ないけど」
「気が変わると思ったんだろう?」
「だって・・・」
「ん?」
「だって、注目浴びるんだよ? アリス、そういうのあんまり好きじゃないじゃん」
「まぁな」
「ほら」
「でも、お前といたら注目浴びるのなんてしょっちゅうだし」
「──ほえ?」
あどけなく解けた眉間に、そっと唇を寄せる。
また、白い顔が紅くなった。
「俺の『お嫁さん』はとっても美人なので、人が避けて歩くんですよ?」
知ってました? とからかうような口調で問えば、カノンはぽかん、とした顔になった。
まさか自分の容姿が優れいていることに気づいていないということはないだろうが、「何だ、その顔」と訊いてみたキニアンだった。
「およめさん・・・?」
「違うの?」
「びじん・・・?」
「そうだろ?」
「・・・・・・」
ゆっくりと考えてたらしいが、やがてきらきらと菫色の瞳が輝き出した。
「あ・・・あったりまえじゃん! ぼくが美人なんて、当然でしょ、シェラと父さんの子なんだから!!」
そんなことを言いつつも、その顔には『もっと褒めて』と書いてある。
思わずくすっと笑ってしまったキニアンだった。
「はいはい。その、俺の美人なお嫁さんは、結婚式を挙げたいんですね?」
「うん!」
素直で大変よろしい。
くすくす笑ったキニアンは、ふわふわの銀髪を撫でてやった。
「いつがいいですか? ジューン・ブライド?」
「でも、6月は雨が降るよ」
「まぁな」
「夏は暑いし、冬は寒い」
「ぷっ。お前、結構現実的なのな」
頭脳は明晰だけれど、どこか夢見がちな乙女のようなところがあるカノンだと思っていたのに、これは新しい発見だった。
「春は風が強いし、秋がいいかなぁ?」
「俺はいつでもいいですよ」
「えへへ」
「ゆっくり考えような」
「うん! ねぇ、お腹空いた!!」
あーもー可愛いなぁ、と相好を崩した青年は、「はいはい」と言ってコンロの火を再度熾したのだった。
**********
平和そうでよろしいんじゃないでしょうか。
頑張れ、俺。
「ねぇ、アリスぅ」
いつも以上に舌っ足らずな甘えた声に、夕飯の準備をしていた青年はキッチンの入口に目を遣った。
お尻の辺りで手を組んでもじもじしている姿は大変可愛らしいが、ご飯の催促だろうか? それとも食後のデザートのリクエストだろうか? と内心で首を傾げる。
「あのね、あのね」
「何ですか?」
ちょこちょこと寄ってきて、つんつん、と袖を引かれる。
これは本格的に、何かお願いごとでもあろうのだろう、と嬉しくもくすぐったい気持ちで穏やかな視線を返せば、カノンは期待に満ちた瞳でキニアンを見つめて言った。
「ぼく、アリスのお嫁さん?」
「──へ?」
シチューの鍋を混ぜる手を止め、きょとん、とした顔になる青年に、カノンはむぅ、と唇を尖らせた。
「お嫁さん? 違うの?」
「え、あ、はい・・・およめさん・・・です・・・?」
「──だよねぇ!!」
肯定の言葉を返すと、カノンは極上の笑みを浮かべて見せた。
まぶしっ、と若干怯んだキニアンだったが、なぜ突然そんなことを言い出したのかが気になった。
「なに、今更──はっ! もしかして、やっぱり指輪気に入らなかったのか?!」
半年前に渡した指輪は、今もしっかりカノンの左手で輝いている。
渡した当初は風呂に入るときや手を洗うときに外そうかどうしようか迷っていたり、でもなくしたら、と悩んでいたりする姿を微笑ましく思っていたものだが、最近はずっと肌身離さずつけていてくれる。
それがとても嬉しかったのだが、やはり何か思うところがあるのだろうか。
「そんなわけないじゃん。これぼくのだもん」
アリスにだって、返してあげないよーだ! と言って笑う顔が可愛くて、クラッと眩暈がしたキニアンだった。
最近、ただひたすらにカノンを甘やかしたくて仕方がなく、何だかダメ男街道まっしぐらな気がしてしまう青年だったが、もう、この顔が見られるならそれだけでいい気がする。
「そっかぁ、お嫁さんかぁ・・・ふふふ」
本人が嬉しそうなのは大変喜ばしいことだったが、一体どうしてしまったというのだろうか。
「なに、結婚式でも挙げたくなったの?」
キニアンが何気なくそう告げると、菫色の瞳が真ん丸になった。
「あれ、違った?」
「・・・なんで、そんなこと言うの?」
「なんとなく」
本当に、ただなんとなくそう思っただけなのだけれど、カノンの表情がみるみるうちに曇ってしまった正直焦った青年だった。
──おい! ちょっと前まで機嫌よく笑ってただろう!
何でだ!! と狼狽する青年のことなどつゆ知らず、カノンはしょんぼりとした様子で項垂れている。
「・・・ぼく、アリスのお嫁さんだもん・・・」
「あぁ、うん、そうだけど」
「だから、それでいいんだもん」
「・・・・・・」
全然良くないんでしょうが、とため息を零したキニアンは、ちょっと身を屈めてカノンの顔を下から覗き込んだ。
「シンデレラ城がいいですか?」
「──・・・え・・・?」
これ以上は無理だ、というくらい大きく見開かれる瞳。
不安気に揺れるそれを宥めるように、キニアン努めてやさしく微笑んだ。
「他の場所がいい? でも、好きだろう、ねずみーランド?」
「・・・・・・」
ぱくぱく、と唇を動かしていたカノンがやがて「お・・・お金」と呟くものだから、キニアンは思わず吹き出してしまった。
「んー。確かに、今すぐに、って言われたら厳しいかも」
「・・・・・・」
「半年か、1年か・・・足りない分は、一所懸命働いて貯めますよ」
「ち、ちが・・・」
「え?」
「お、お金、ぼ、ぼく出す!」
「──はい?」
「ぼ、ぼく・・・ちち、貯金、あ、あ、あるからっ! お、おおお、お金ならあるからっ!!」
「・・・・・・」
「あ、あああ、アリスは、いいの! 何にもしなくて、いいの! き、気が変わらないでいてくれたら、それでいいの!!」
どうしよう、どうしよう、と額に手を当ててあたふたしているカノンの姿を見て、キニアンはとりあえずコンロの火を止めた。
そして、
「ちょっと落ち着け」
と言って、おもむろにカノンを抱きしめたのだった。
かぁぁぁぁ、と顔を紅くする様子は大層可愛らしかったが、今の発言はいただけない。
「何にもしなくていい、ってことはないだろう?」
「・・・・・・」
「それに、気が変わるって何だ」
ちょっと怒ったような声音に、カノンは恐る恐る顔を上げた。
やはり、いつもよりちょっと険しい表情をしている。
いや、仏頂面──に見える──は割りといつもなのだが、それでもやさしく微笑むことが多くなってきたというのに。
「・・・怒ってる・・・?」
「怒ってないよ。呆れてるけど」
「むぅ・・・」
「むぅ、じゃありません」
尖ったカノンの唇を、片手でむぎゅっと掴んで嗜める。
「俺が嫌だって言うと思ったのか?」
「そういうわけでも・・・ないけど」
「気が変わると思ったんだろう?」
「だって・・・」
「ん?」
「だって、注目浴びるんだよ? アリス、そういうのあんまり好きじゃないじゃん」
「まぁな」
「ほら」
「でも、お前といたら注目浴びるのなんてしょっちゅうだし」
「──ほえ?」
あどけなく解けた眉間に、そっと唇を寄せる。
また、白い顔が紅くなった。
「俺の『お嫁さん』はとっても美人なので、人が避けて歩くんですよ?」
知ってました? とからかうような口調で問えば、カノンはぽかん、とした顔になった。
まさか自分の容姿が優れいていることに気づいていないということはないだろうが、「何だ、その顔」と訊いてみたキニアンだった。
「およめさん・・・?」
「違うの?」
「びじん・・・?」
「そうだろ?」
「・・・・・・」
ゆっくりと考えてたらしいが、やがてきらきらと菫色の瞳が輝き出した。
「あ・・・あったりまえじゃん! ぼくが美人なんて、当然でしょ、シェラと父さんの子なんだから!!」
そんなことを言いつつも、その顔には『もっと褒めて』と書いてある。
思わずくすっと笑ってしまったキニアンだった。
「はいはい。その、俺の美人なお嫁さんは、結婚式を挙げたいんですね?」
「うん!」
素直で大変よろしい。
くすくす笑ったキニアンは、ふわふわの銀髪を撫でてやった。
「いつがいいですか? ジューン・ブライド?」
「でも、6月は雨が降るよ」
「まぁな」
「夏は暑いし、冬は寒い」
「ぷっ。お前、結構現実的なのな」
頭脳は明晰だけれど、どこか夢見がちな乙女のようなところがあるカノンだと思っていたのに、これは新しい発見だった。
「春は風が強いし、秋がいいかなぁ?」
「俺はいつでもいいですよ」
「えへへ」
「ゆっくり考えような」
「うん! ねぇ、お腹空いた!!」
あーもー可愛いなぁ、と相好を崩した青年は、「はいはい」と言ってコンロの火を再度熾したのだった。
**********
平和そうでよろしいんじゃないでしょうか。
頑張れ、俺。
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