小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
金曜は休暇でした。世間は色々と騒がしいので、その対策で。でも仕事してました。電話もメールも来るから仕方なく。休暇って何だっけ、って話。
そんなイラっと感から逃れるべく、友人とちょこっと話していたケモミミシリーズをば。前はヴァンシェラと双子夫婦を書いたので、今回は四つ子ちゃんですかね。
そんなイラっと感から逃れるべく、友人とちょこっと話していたケモミミシリーズをば。前はヴァンシェラと双子夫婦を書いたので、今回は四つ子ちゃんですかね。
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「シェラーーーーーーーーー!!」
広い家中に響き渡るような大音声に、暖かな腕の中で微睡んでいたシェラは瞬時に覚醒した。
ガバッ! と跳ね起きると、すやすやと熟睡している男に目を向け、呆れと嬉しさが等分に込み上げる。
「シェラ! シェラ!!」
声は聞こえるのに足音はせず、バタン! と大きな音を立てて寝室のドアを開けた息子に、困ったような笑みを向ける。
「ロンちゃん・・・」
しーっ、と唇の前に指を立てる。
ヴァンツァーはまだ目を閉じているが、眉間にぎゅっと皺が寄っている。
間もなく目覚めるであろうが、眠れるなら寝かせてやりたい。
責任のある立場で働く男は、その類まれな頭脳とセンスで右肩上がりの経営を続けているが、それは決して楽な道ではない。
休日くらい、ゆっくり寝坊したっていいと思うのだ。
「~~~っ、でも、シェラ!」
ごめんなさい、と眉を下げる息子の話を聞こうと、シェラはベッドから抜け出す──何というか、今日はパジャマを着ていて良かった。
「どうしたの?」
床に膝をついて、落ち着かせようとロンドの手を握る。
「──あれ、ロンちゃん」
息子の頭に目を遣ったシェラに、ロンドは興奮を隠し切れない顔で言った。
「フーちゃんやっぱり天使だった!!」
「・・・え?」
いや、確かにフーガは愛らしく美しい。
小学校に上がったばかりとは思えない落ち着きっぷりと聡明過ぎる頭脳もあり、学校ではちょっと浮いているようだ。
黒髪にあまり表情の浮かばない美貌は浮世離れした雰囲気であったが、天使とは。
「見て!」
ロンドが手招きすると、リビングから寝室へ、おずおずと入ってくるもうひとりの息子。
肩で切り揃えた艷やかな黒髪と菫色の瞳を持つ神秘的な雰囲気の少年は、若干不安そうな顔をしている。
「ほら!」
くるっとフーガの身体を反転させ、背中を向けさせる。
そこには──。
「──翼?」
フーガの背中には、ところどころ縞模様のある白い羽。
「シェラとあーくんはわんちゃんで、パパとお兄ちゃんは猫でしょ? フーちゃんやっぱり天使だった!」
ファロット一家の面々には、動物の耳や尻尾が生えていた。
それは犬であったり猫であったりウサギであったりと色々だったが、フーガには翼が生えていた。
「ロン。天使じゃない。たぶんこれ」
「──梟、だな」
背後から聞こえた低い声に、シェラは振り返る。
「・・・悪い、起こしたか」
「構わん」
手早くローブだけ纏ったヴァンツァーは、身体の割に大きなフーガの翼に手の甲で触れた。
ほんのりと暖かい。
「成長すれば、真っ白な羽になるだろう」
「でも俺、髪黒いのに・・・」
羽だけ白いなんて変だよ・・・と不安そうな顔をしている息子に、ヴァンツァーは微笑んだ。
「俺も昔、レティーに梟のようだと言われたことがある」
「──父さんも?」
音もなく夜空を飛び、鋭い爪で獲物を捕らえる。
神話の中では女神が従える、知恵の象徴でもあった。
「一緒だな」
強く美しくやさしい父のことを神のように崇めているフーガは、ちょっと前までの哀しそうな表情を吹き飛ばして頬を染めた。
「ロンちゃんは、くまさんかな?」
ふふふ、と微笑んだシェラは、ロンドの黒くて丸みのある耳に触れる。
「違うよ、シェラ」
フーガが「ほら」と指差した先には、すんなりと伸びた艷やかで長い尻尾。
「ロンは黒豹だよ」
「「──え」」
シェラとヴァンツァーが同時に声を上げる。
当のロンドは、にこにこ笑いながら尻尾の先でフーガの頬を撫でている。
「黒豹・・・」
ヴァンツァーが、軽くショックを受けている。
自分は猫だったのに・・・と思っているに違いない。
「いや、まだ猫という線も・・・」
とぶつぶつ呟いている男は放っておいて、シェラは息子ふたりに話しかけた。
「あーちゃんとりっちゃんは?」
娘ふたりの姿が見えず、首を傾げる。
「お外にいるよ!」
「外?」
ロンドに手を引かれたシェラは、ガウンを羽織って寝室を出た。
庭に面したリビングの大窓の前には、癖のない銀髪の三女。
「りっちゃん」
シェラの声に振り返ったリチェルカーレは、ととと、と軽やかに駆けつける。
「りっちゃんは・・・猫かな?」
「やまねこって、フーちゃんが」
ふっくらとした斑点のある尻尾を見せてくれた娘に、シェラは「そうなんだ」と笑みを向ける。
ぴるぴるっと動く耳も可愛らしい。
なかなかに猫率の高い家族だなぁ、と思いながら「あーちゃんは?」と訊ねると、リチェルカーレは外を指差した。
庭に視線を向けたシェラは、絶句する。
「え・・・?」
庭にいるアリアの頭に動物の耳はなく、尻尾もない。
見た目だけで言うのであれば、人間そのもの。
「っていうか、あれって・・・」
家族も婿たちも、例外なく頭や尻尾に獣の特徴を持っていた。
フーガは鳥類ではあったが、やはり翼という特徴があった。
だから、それは流石に想定外だった。
「あ、シェラ!」
嬉しそうな顔で窓辺に駆け寄ってきたアリアの後を追うように、優雅に歩を進める大きな身体。
「アリアね、──おうまさんみたい!」
きれいなこでしょ? とにこにこ笑っている娘に寄り添う白馬。
しかし、シェラと、後からやってきたヴァンツァーは同時に思った。
──アリア、それ馬やない・・・ユニコーンや。
と。
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ケモミミシリーズではありますが、あーちゃんは幻獣だと思う。いや、わりとマジで。
りっちゃんは、ちいさい頃は愛くるしいけれど、成長すると肉食系(笑)ロンちゃんも、おっとりドジっ子に見えてめちゃくちゃ強いといい。で、フーちゃんは天使。ガチ天使。
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