小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
なんとなく。
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「──あれ。シェラ、ウィッグつけてるの?」
学校から帰ってきた双子は、「おかえりー」と笑顔で迎えてくれた今日もスーパー可愛いシェラを見て目を丸くした。
「うん・・・よく分かったね、ウィッグだって」
本物の銀髪使ってるのになぁ、と呟き、くるくると巻かれたふわふわのロングヘアーに指を絡める。
「分かるよ。色が違うもん」
髪のひと房を取ったカノンは、その感触を確かめるように指先で弄んだ。
「それに、パーマかけたらパパが怒るもの」
おかしそうに笑ってむぎゅっとシェラに抱きつくソナタ。
シェラは抱き返しながら「そうなんだ」と嘆息した。
「あの男、最悪なんだ」
そのときの苛立ちを思い出したのか、シェラは形の良い眉をひそめた。
今更言われなくても父が『さいてー』で『さいあく』なことは身に沁みて分かっている双子だったが、とりあえずシェラがイライラの原因を話したそうにしていたので訊いてみた。
「私が、『小悪魔になりたい』って言ったら、腕組んだまま1分間動かなかったんだぞ?!」
何なんだ、とぷんすか怒るシェラに、双子は絶句した。
「それって、私じゃ『小悪魔』になれないってことだろう? あいつデザイナーなのに、クライアントの要望を突っ撥ねたんだ!」
ド最悪だあの男、と頬を膨らませるシェラ。
双子の子どもたちは、ひどい頭痛のするこめかみを押さえ、顔を見合わせると深くため息を吐いた。
「・・・で? ぼくたちが学校行ったあとだよね? どうしてその格好なの」
「うん。しばらく黙って考えていたあいつは、たぶん考えるのが面倒になったんだろう。『別にそのままでいいんじゃないか?』って言い出したんだ」
──ですよね。
双子は胸中声を揃えた。
コレに関しては全面的に父に賛成だった。
何も手を加える必要などない。
本当に、シェラは天然だ。
しかし、シェラはそれでは納得いかなかったらしい。
「頭きたから、アトリエに乗り込んでエマとレイチェルに頼んだ」
「「・・・で?」」
「何でも今、巷では『小悪魔ageha』って雑誌が流行ってるらしくて、そこでモデルやってる女性たちのことを『アゲ嬢』って呼ぶらしいんだ」
「「へぇ。──で?」」
「髪をふわふわゴージャスに巻いて、カラコン入れて、頭のてっぺんから爪先までお人形みたいに着飾った女の子たちのことなんだって」
「「そうなんだ(アゲ嬢とキャバ嬢が類義語だというのはシェラには黙っていてあげよう、うん)」」
「うん。で、こうなった」
確かに、頭のてっぺんから爪先までふわふわドーリィな感じで、ネイルまでしっかり手入れしてある。
「それ見てパパは何て言ったの?」
ふとソナタが訊ねた言葉に、シェラは顔を真っ赤にして怒りだした。
「それがまた最悪なんだ!!」
双子は「「知ってますけど聞きましょう」」といった感じで頷いた。
「あいつ・・・あいつ・・・」
そうしてシェラは叫んだ。
「ちらっとこっちみて、『──そんなものか』って鼻で笑ったんだ!!」
あんな最悪な男見たことない、と叫ぶシェラに、双子はやはり顔を見合わせた。
──・・・今回ばかりは、父さんが正しいと思うよ。
──・・・今回ばかりは、パパが正しいと思うわ。
そうは思った双子だったが、よしよし、と軽く涙ぐんでいるシェラを慰めてやった。
「よしよし。可哀想にねぇ」
「シェラは、『可愛いね』って言って欲しかったんだよね」
頭を撫でられたシェラは、ぷっくりと菫の瞳に涙を溜めた。
──やーべぇ可愛い・・・
眩暈すら感じた双子だったが、一応今回に限っては父を擁護してやろうと思った。
「パパは、今日のシェラ見て『可愛くない』と思ったわけじゃないと思うよ?」
「・・・だって、何にも言わなかった」
「うん。たぶんね、父さんはこう思ったんだ」
にっこり笑った双子は、綺麗なユニゾンをシェラに聞かせた。
「「『──俺の傍にいる素のままのシェラが、一番小悪魔で可愛い』ってね」」
目を丸くして「そうなの・・・?」と訊いてくるシェラに、「「そうなんです」」と頷いた双子。
シェラはしばらく考えていたが、やがにはにかむようにして微笑んだ。
「・・・うん。だったらいいや」
──あーもーシェラってば食べちゃいたいくらいに可愛い! これぞ小悪魔!!
と内心叫んだ双子なのであった。
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なんとなく。
シェラが可愛ければそれでいいです。
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