小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
いやだって終わらせないと気持ち悪いし。
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仕事から帰ってきたヴァンツァーは、やたら上機嫌な笑顔に迎えられて面喰らった。
アトリエでも何だか不機嫌だったし、女傑ふたりには「「女心も分からないなんて、ホント顔と身体だけの男は」」と声を揃えられた。
シェラも頷いていたので「好きなくせに」と呟いたらものすごい眼で睨まれた。
――やはり月の(以下略)
だから、玄関まで迎えに出てきた上、にこにこ笑って抱きつかれたときには正気を疑ってしまった。
熱はないようだったが、何か悪いものでも食べたのだろうか、と訊こうとしたら唇の横にキスをされた。
ゆうに二十秒は固まっていた自信がある。
頭が真っ白になることは、実はありそうでないことなのだが、このときばかりは『ぽんっ』と音がするくらい綺麗に思考が飛んだ。
それなのに元凶は、ふふふ、と笑ってダイニングへ向かって行った。
ダイニングには子どもたちもいて、「「おかえりー」」となにやらにやけた顔をしていた。
「・・・あれに何を吹き込んだ」
「失礼しちゃう! パパの擁護してあげたのに!」
「ね~。ぼくたちがいなかったら、しばらく夜はオアズケだったかも知れないのにね」
感謝して欲しいよ、と頷きあう双子に、ヴァンツァーはちらっとキッチンを見た。
鼻歌まで歌いながら夕飯の支度をしている。
上機嫌だ。
恐ろしいほど機嫌が良い。
いや本気で怖い。
「…何だったんだ?」
訊ねてくる父に、最近ますます両親に似てきた双子はそっくりなため息を吐いた。
「「顔がいいと女心なんて理解しなくても何とかなるもんね」」
「…職場でも言われたよ」
これには吹き出した双子だ。
皆考えることは一緒だな、と思い、父のダメ男っぷりが浮き彫りになった。
「俺の周りには、何を考えているのか分からないやつが多い」
肩をすくめる父にびっくりした双子だ。
しかもどうやら本気で言っているらしい。
「何でシェラに『可愛い』って言ってあげなかったの?」
「言ったさ」
「心がこもってない、って言われなかった?」
「それが?」
「ちゃんと『可愛い』って言ってあげれば、シェラ怒らなかったのに・・・」
「今更」
ボソッと呟いた父に双子は非難の眼を向けた。
「あり得なーい」
「信じられなーい」
若干顔をしかめたヴァンツァーだ。
何が嫌って、近頃その言葉を言われ慣れてきてしまった自分が一番嫌だ。
「あんまり言い過ぎても浮気してるのか、とか思うけど」
「おざなりはダメでしょ。シェラ人一倍寂しがりなんだから」
「そんなことは」
「なかったら『私、可愛い?』なんて眩暈するくらいキュートなこと言わないよ」
「『小悪魔になりたい』だよ?! そんなもん、パパのこと誘惑したいからに決まってるじゃない!」
「いや、別に今更ならなくても」
「そりゃそーよ。パパなんかシェラにめろめろのデレデレなんだから」
「ツンデレ何それ美味しいの? ぼくデレしか知らない、ってね」
「それでも不安になるのが女の子じゃないの」
「ちょっと何年生きてるわけ?」
双子に『そこに正座しろ』とばかりに睨まれたヴァンツァーは、割と勢いに押されるタイプなので大人しくテーブルについた。
そして、向かいに座った双子から、シェラがだいたい済ませていた夕食の支度を終えるまでの十数分、ひたすら説教を喰らっていたのである。
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本当はまだ書きたいネタがあるんだけど、長くなりそうなので割愛。
中途半端でもいい。双子が活き活きしていれば。
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