小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
行ってきました。半年ぶりだってよ(笑)もうちょっと手をかけてやれ、って話です。すんごいもっさりした髪型だったので、このまま再来週のガッ君の舞台見にいくわけにもいかず。さっぱりしました。いつもの通り、ボブでパーマ。5歳くらい若返りました(笑)
橘は髪に触られると眠くなる性質なので、髪巻いてもらってるときにうつらうつらしてたら、びくっ、とかしちゃって、8年くらいの付き合いになる美容師さんに「大丈夫ですか?」って言われちゃいました。「寝てました」って言ったら笑われました。巻き方が痛かったのかと思って心配して下さったみたいです。違います(笑)
で、まぁ、パーマかけて、もっさりした髪を梳くので、2時間くらいかかるわけですよ。そうしたら、なんだか美容師ヴァンツァーと客シェラ的な話が浮かんできてしまって・・・久々に、ほんとに久々にちょこっとだけ小ネタ書いてみようかなー、なんて。
橘は髪に触られると眠くなる性質なので、髪巻いてもらってるときにうつらうつらしてたら、びくっ、とかしちゃって、8年くらいの付き合いになる美容師さんに「大丈夫ですか?」って言われちゃいました。「寝てました」って言ったら笑われました。巻き方が痛かったのかと思って心配して下さったみたいです。違います(笑)
で、まぁ、パーマかけて、もっさりした髪を梳くので、2時間くらいかかるわけですよ。そうしたら、なんだか美容師ヴァンツァーと客シェラ的な話が浮かんできてしまって・・・久々に、ほんとに久々にちょこっとだけ小ネタ書いてみようかなー、なんて。
**********
──ぼくが、シェラを世界で一番綺麗にしてあげる!
そう、純真無垢の笑顔で、2つ年下の幼馴染は言った。
あれから20年。
そのうち半分は、幼馴染にしか髪を触らせていない。
髪型なんて別に気にしていなかったし、カットモデルになれば美容院代も浮くから助かっていた。
そういえば、夏は暑いから短くしたいと言ったら、やたらと綺麗な顔を思い切り顰められた。
そして、一度たりとも頷いてくれたことがない。
だから、もう何年も、鎖骨に触れるより短くしていない。
幼馴染は専門学校を卒業後、学校で知り合った友人の両親が営む美容室で働かせてもらえることとなった。
顔の良さは抜群だったから、客が増えたとオーナーは喜んでいたらしい。
私も、月に一度は顔を出して毛先を揃えてもらっている。
美容院なんて2、3ヶ月行かなくてもなんともないのに、と呟いたら、めっきり笑顔の減った、それでも綺麗な顔に静かな怒りが浮かんだ。
無言の圧迫に負けて、毎月最後の土曜日は、幼馴染に髪を切ってもらうことになってしまった。
「こんにちは~」
店に入ると、愛想の良い小柄な青年が挨拶してきた。
幼馴染の友人で、この美容院を営むオーナーの息子さんだ。
「こんにちは・・・えっと・・・」
「あぁ、ヴァッツだろ? 今ちょっと予約のお客さん入ってて」
ここで待ってるか、と訊かれて、店内を見た。
探さなくてもすぐに分かる。
黒いシャツにデニムと至って軽装。
それでも、艶やかな黒髪と芸能人にもいないような綺麗な顔の幼馴染は、その長身もあってとても目立つ。
女性のお客さんと、何か楽しそうに話をしている。
ちいさい頃は『天使の笑顔』と評判の美少年だったが、最近私といるときはほとんど笑わない。
それなのに、知らない女性にはやたらと笑顔を振りまいている。
「・・・いいです」
「──え?」
「帰ります」
それだけ言って、店を出た。
引き止めるような声が聴こえた気がしたが、別に関係ない。
その夜、電話がかかってきて、「何で待ってなかったんだ」と不機嫌そうな声で言われ、頭にきた。
「髪切らなくても死にません!」
それだけ言って電話を切った。
電源も切った。
翌日、腹いせのつもりで別の美容室へ行った。
雑誌で見た、評判の美容室。
イケメンカリスマ美容師がいるらしい。
予約なしで行ったが、次の予約まで時間があるとかで、その人に応対してもらえることになった。
──・・・イケメン・・・?
こんにちわ~、と挨拶してきた、『Art Director』と書かれたプレートを胸につけているその人は、確かに整った顔をしていた。
けれど、そんなに騒ぐほどのものかな、とちょっと首を傾げてしまった。
代わりとばかりに脳裏に浮かんできた愛想の悪い顔に、思わず顔を顰めた。
「お客様、ラッキーですねー。ぼく、大抵予約で埋まっちゃってるので、2、3ヶ月待ちとかザラなんですよ~」
「・・・はぁ」
鏡越しに見る笑顔が、何だか癇に障る。
喋り方も小煩い。
「カットでよろしかったですかぁ?」
・・・何語だ、と言いたくなったが、黙って頷いた。
「綺麗な髪ですねー。今日はどれくらい切ります?」
「・・・毛先、揃えるくらいで」
「あぁ、そうなんですねー。じゃあ、まずシャンプーしますので」
「あ、はい」
髪を洗うのは、おそらく彼の仕事ではないのだろう。
別の担当に案内された。
その担当も男性だったが、きっとあまり経験を積んでいないのだろう。
仕事が手に馴染んでいないようで、丁寧と言えば丁寧だったが、首を支えて泡を洗い流すのも、どこかぎこちなかった。
もしかすると、髪の長い客を担当した経験が、それほどないのかも知れない。
「お疲れ様でした」
「・・・はい」
・・・なんか、違う・・・。
内心呟いて、チェアーに戻る。
「いつもはどちらで切ってらっしゃるんですかー?」
「・・・知り合いが、美容師なので」
「あぁ、そうなんですねー。どの辺のお店ですかー?」
ダッカールで髪を纏めながら話しかけられる。
美容師によって、自分のやり易い手順というものがあるのだろう。
頭頂部に近い髪をひと纏めにし、襟足に近い髪を残す。
・・・あいつ、頭の大きさ測って髪分けてたなぁ・・・
手で頭骨の大きさを測り、中心と、1回に取る髪の量を見極めていた。
だいたい、左右それぞれ3から4つのパーツに分けていたように思う。
「じゃあ、切りますねー」
鋏が入る『シャクッ』という音を耳にした瞬間、チクリと胸が痛んだ。
10数年ぶりに、幼馴染以外の手で切られる髪。
あいつはどんな顔をするだろうか、と思って、内心首を振った。
この髪を切ってもお金にならないのだし、だったらたくさんお客さんを取った方がいい、と言い訳染みたことを考える。
髪に触れる手の感触や切り方が違うことは、無理やり意識の外に追い出した。
そうして、30分ほどで毛先と前髪のカットが終わった。
ブローをしてもらい、鏡の中の自分を見つめる。
「・・・このお仕事、どれくらいなさってるんですか?」
「え? あー、見習い期間入れたら、7年くらいですね」
「お若いのに『Art Director』って、すごいですね・・・」
「あはは。ありがとうございます。雑誌で取り上げられてから、指名のお客様もだいぶ増えましたねー」
「そうですか・・・」
会計を済ませ、店を出る。
何となく気分が重くて、とぼとぼと帰路に着いた。
ぼんやりしながら歩いていたが、ふと気がつくと幼馴染の働く店の前だった。
何となく入るのが少し躊躇われたが、素通りするのも気が引けて、カラン、と音を立ててドアを開けた。
「あ、お嬢ちゃん」
昨日と同じく、小柄な青年が出迎えてくれる。
「・・・こんにちは」
どういうわけか、ちいさく身を縮めるようにしてしまう。
しげしげと眺められているから、余計に居心地が悪い。
「あれ、もしかして」
彼が何か言いかけたとき、俯いた視線の先によく磨かれた靴の先が見えた。
「──おい」
低い、意図的に低くしているとしか思えない声がかけられる。
ちらっと目線だけ上げると、女性客の心を掴んで離さない貴公子のような白皙が思い切り顰められている。
・・・やば。
「どこのド素人に切らせた」
口調はとても静かだというのに、そこに潜む怒気があまりにも凄まじくて思わず首をすくめた。
「シェラ」
「・・・『Art Director』だったもん・・・」
「そんな肩書きどうでもいいんだよ。──どうやったら、こんなガタガタになるんだ」
髪をひと房摘み、舌打ちまで漏らした幼馴染。
「・・・あの」
「待ってろ」
「──え?」
「あと1時間。そこで待ってろ」
そこ、と幼馴染が言うのは、店内にある待合室のような場所で、雑誌などが置いてある。
「でも」
「ここが嫌なら向かいの喫茶店でも行ってろ」
「・・・・・・」
「1時間したら戻ってこい」
「・・・なんで、そんな偉そうなの?」
年下のくせに、と呟いてむっと唇を尖らせると、盛大なため息が零された。
怒られる、とまた首をすくめると、コツン、と額を小突かれた。
そこを押さえて恐る恐る見上げれば、綺麗な顔には『この馬鹿が』と書いてあった。
「お前も、その髪が気に入らないからここに来たんだろうが」
「・・・・・・」
「俺以上にその髪を知ってるヤツなんかいないんだよ」
偉そうな言い方だったが、それが事実だということは自分が一番よく知っている。
また、ため息を吐くのが聴こえた。
「・・・泣くな。綺麗な髪に戻してやるから」
さっきまで偉そうだったのに、少し困ったような声音に変わった。
それが何だか嬉しくて、ひとつ頷いて店を出た。
──約束の1時間後、私の髪は魔法をかけられることになる。
**********
・・・だから、何で最後の最後でヘタレるんだ、お前は・・・
あー、もう、かっこいいヴァンツァーってどこにいるんだよ。
一応、友達以上恋人未満。
──ぼくが、シェラを世界で一番綺麗にしてあげる!
そう、純真無垢の笑顔で、2つ年下の幼馴染は言った。
あれから20年。
そのうち半分は、幼馴染にしか髪を触らせていない。
髪型なんて別に気にしていなかったし、カットモデルになれば美容院代も浮くから助かっていた。
そういえば、夏は暑いから短くしたいと言ったら、やたらと綺麗な顔を思い切り顰められた。
そして、一度たりとも頷いてくれたことがない。
だから、もう何年も、鎖骨に触れるより短くしていない。
幼馴染は専門学校を卒業後、学校で知り合った友人の両親が営む美容室で働かせてもらえることとなった。
顔の良さは抜群だったから、客が増えたとオーナーは喜んでいたらしい。
私も、月に一度は顔を出して毛先を揃えてもらっている。
美容院なんて2、3ヶ月行かなくてもなんともないのに、と呟いたら、めっきり笑顔の減った、それでも綺麗な顔に静かな怒りが浮かんだ。
無言の圧迫に負けて、毎月最後の土曜日は、幼馴染に髪を切ってもらうことになってしまった。
「こんにちは~」
店に入ると、愛想の良い小柄な青年が挨拶してきた。
幼馴染の友人で、この美容院を営むオーナーの息子さんだ。
「こんにちは・・・えっと・・・」
「あぁ、ヴァッツだろ? 今ちょっと予約のお客さん入ってて」
ここで待ってるか、と訊かれて、店内を見た。
探さなくてもすぐに分かる。
黒いシャツにデニムと至って軽装。
それでも、艶やかな黒髪と芸能人にもいないような綺麗な顔の幼馴染は、その長身もあってとても目立つ。
女性のお客さんと、何か楽しそうに話をしている。
ちいさい頃は『天使の笑顔』と評判の美少年だったが、最近私といるときはほとんど笑わない。
それなのに、知らない女性にはやたらと笑顔を振りまいている。
「・・・いいです」
「──え?」
「帰ります」
それだけ言って、店を出た。
引き止めるような声が聴こえた気がしたが、別に関係ない。
その夜、電話がかかってきて、「何で待ってなかったんだ」と不機嫌そうな声で言われ、頭にきた。
「髪切らなくても死にません!」
それだけ言って電話を切った。
電源も切った。
翌日、腹いせのつもりで別の美容室へ行った。
雑誌で見た、評判の美容室。
イケメンカリスマ美容師がいるらしい。
予約なしで行ったが、次の予約まで時間があるとかで、その人に応対してもらえることになった。
──・・・イケメン・・・?
こんにちわ~、と挨拶してきた、『Art Director』と書かれたプレートを胸につけているその人は、確かに整った顔をしていた。
けれど、そんなに騒ぐほどのものかな、とちょっと首を傾げてしまった。
代わりとばかりに脳裏に浮かんできた愛想の悪い顔に、思わず顔を顰めた。
「お客様、ラッキーですねー。ぼく、大抵予約で埋まっちゃってるので、2、3ヶ月待ちとかザラなんですよ~」
「・・・はぁ」
鏡越しに見る笑顔が、何だか癇に障る。
喋り方も小煩い。
「カットでよろしかったですかぁ?」
・・・何語だ、と言いたくなったが、黙って頷いた。
「綺麗な髪ですねー。今日はどれくらい切ります?」
「・・・毛先、揃えるくらいで」
「あぁ、そうなんですねー。じゃあ、まずシャンプーしますので」
「あ、はい」
髪を洗うのは、おそらく彼の仕事ではないのだろう。
別の担当に案内された。
その担当も男性だったが、きっとあまり経験を積んでいないのだろう。
仕事が手に馴染んでいないようで、丁寧と言えば丁寧だったが、首を支えて泡を洗い流すのも、どこかぎこちなかった。
もしかすると、髪の長い客を担当した経験が、それほどないのかも知れない。
「お疲れ様でした」
「・・・はい」
・・・なんか、違う・・・。
内心呟いて、チェアーに戻る。
「いつもはどちらで切ってらっしゃるんですかー?」
「・・・知り合いが、美容師なので」
「あぁ、そうなんですねー。どの辺のお店ですかー?」
ダッカールで髪を纏めながら話しかけられる。
美容師によって、自分のやり易い手順というものがあるのだろう。
頭頂部に近い髪をひと纏めにし、襟足に近い髪を残す。
・・・あいつ、頭の大きさ測って髪分けてたなぁ・・・
手で頭骨の大きさを測り、中心と、1回に取る髪の量を見極めていた。
だいたい、左右それぞれ3から4つのパーツに分けていたように思う。
「じゃあ、切りますねー」
鋏が入る『シャクッ』という音を耳にした瞬間、チクリと胸が痛んだ。
10数年ぶりに、幼馴染以外の手で切られる髪。
あいつはどんな顔をするだろうか、と思って、内心首を振った。
この髪を切ってもお金にならないのだし、だったらたくさんお客さんを取った方がいい、と言い訳染みたことを考える。
髪に触れる手の感触や切り方が違うことは、無理やり意識の外に追い出した。
そうして、30分ほどで毛先と前髪のカットが終わった。
ブローをしてもらい、鏡の中の自分を見つめる。
「・・・このお仕事、どれくらいなさってるんですか?」
「え? あー、見習い期間入れたら、7年くらいですね」
「お若いのに『Art Director』って、すごいですね・・・」
「あはは。ありがとうございます。雑誌で取り上げられてから、指名のお客様もだいぶ増えましたねー」
「そうですか・・・」
会計を済ませ、店を出る。
何となく気分が重くて、とぼとぼと帰路に着いた。
ぼんやりしながら歩いていたが、ふと気がつくと幼馴染の働く店の前だった。
何となく入るのが少し躊躇われたが、素通りするのも気が引けて、カラン、と音を立ててドアを開けた。
「あ、お嬢ちゃん」
昨日と同じく、小柄な青年が出迎えてくれる。
「・・・こんにちは」
どういうわけか、ちいさく身を縮めるようにしてしまう。
しげしげと眺められているから、余計に居心地が悪い。
「あれ、もしかして」
彼が何か言いかけたとき、俯いた視線の先によく磨かれた靴の先が見えた。
「──おい」
低い、意図的に低くしているとしか思えない声がかけられる。
ちらっと目線だけ上げると、女性客の心を掴んで離さない貴公子のような白皙が思い切り顰められている。
・・・やば。
「どこのド素人に切らせた」
口調はとても静かだというのに、そこに潜む怒気があまりにも凄まじくて思わず首をすくめた。
「シェラ」
「・・・『Art Director』だったもん・・・」
「そんな肩書きどうでもいいんだよ。──どうやったら、こんなガタガタになるんだ」
髪をひと房摘み、舌打ちまで漏らした幼馴染。
「・・・あの」
「待ってろ」
「──え?」
「あと1時間。そこで待ってろ」
そこ、と幼馴染が言うのは、店内にある待合室のような場所で、雑誌などが置いてある。
「でも」
「ここが嫌なら向かいの喫茶店でも行ってろ」
「・・・・・・」
「1時間したら戻ってこい」
「・・・なんで、そんな偉そうなの?」
年下のくせに、と呟いてむっと唇を尖らせると、盛大なため息が零された。
怒られる、とまた首をすくめると、コツン、と額を小突かれた。
そこを押さえて恐る恐る見上げれば、綺麗な顔には『この馬鹿が』と書いてあった。
「お前も、その髪が気に入らないからここに来たんだろうが」
「・・・・・・」
「俺以上にその髪を知ってるヤツなんかいないんだよ」
偉そうな言い方だったが、それが事実だということは自分が一番よく知っている。
また、ため息を吐くのが聴こえた。
「・・・泣くな。綺麗な髪に戻してやるから」
さっきまで偉そうだったのに、少し困ったような声音に変わった。
それが何だか嬉しくて、ひとつ頷いて店を出た。
──約束の1時間後、私の髪は魔法をかけられることになる。
**********
・・・だから、何で最後の最後でヘタレるんだ、お前は・・・
あー、もう、かっこいいヴァンツァーってどこにいるんだよ。
一応、友達以上恋人未満。
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