小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
稽古をね。本番まで日がないけど、本番に支障が出る方がまずいから。
いやー、体調管理の出来ない役者って、嫌ねぇ~。無理をしている自覚はあるんだけどな(笑)
いやー、体調管理の出来ない役者って、嫌ねぇ~。無理をしている自覚はあるんだけどな(笑)
**********
「それか、アクセルだ」
美貌のコーチの言葉に、シェラもレティシアも目を瞠った。
「3アクセル-2トゥループのコンボ、3フリップ、2アクセル。スピンやスパイラルはそのままでいいが、多少は振り付けを手直ししなければならないかもな」
「本気か、お前?」
「もちろん」
「女子がショートで3アクセル?」
「苦手なことを矯正するのも必要だが、今のこいつはそのせいで伸びやかな演技が出来ていない」
「いやいや、待て待て」
レティシアは思わず苦笑した。
無茶は自分の専売特許だが、この悪友は『無茶振り』をさせたら天下一品だ。
まさか自分が常識を語る羽目になるとは。
「ヴァッツ。せめて世界選手権まで待て。グランプリ・ファイナルは今のプログラムだ」
「俺はどちらでも構わん。やるのはこいつだ」
顎でしゃくるようにされたシェラは、表情を引き締めた。
「・・・このままやる」
挑むような瞳に、ヴァンツァーは「好きにしろ」と言った。
頷いたシェラは、リンクに戻る。
不安があるなら、なくなるまで。
シェラは間違いなく天才と呼ばれるに相応しいスケーターだったが、才能を過信せずに努力出来る人間だった。
また、己に妥協を赦さない意思の強さを、たった17歳の少女が抱いている。
だからこそ、リンクサイドのコーチは喉を鳴らしたのだ。
「・・・なぁに笑ってんだよ」
「ああやって、誰もあれに追いつけなくなるんだ」
ため息のような、いっそ愛しさすら溢れるような感嘆の声音に、レティシアは眉を上げた。
珍しい、と思ったのだ。
この顔と身体とスケーティングだけはやたら美しい男は、その涼しげな瞳の奥に激情を隠している。
それは彼のスケーティングと振り付けを見れば一目瞭然。
かなり奔放な性格をしている自分より、余程情熱的な男だ。
女の影が絶えたことはないが、スケートより愛した女はいない。
自分のスケーティングに邪魔だと思えば容赦なく切り捨てる。
そんな男が、まだ17歳の少女に、その溢れる才能に惚れ込んでいる。
きっとシェラ本人には言ってやらないのだろうが、伊達に長年付き合っていない。
「ジャッジもスケ連も、馬鹿の巣窟だ」
レティシアはにんまりと笑った。
「あのお嬢ちゃんが、諦めると思ってんのかね?」
「思ってるんだろうよ。何度もダウングレードされれば、3回転-3回転を回避するだろう、と」
「『安全策を取るだろう』って?」
「あいつは馬鹿だから『安全』なんて言葉を知らない。100%か、それ以上かしかないんだ」
勝ち負けすら考えていない。
競技だから、勝敗は決する。
だが、もしシェラが誰かと戦っているとすればそれは。
「俺は、あいつを守ってやるつもりはさらさらない。──コーチや仲間や国に守ってもらって跳べたら苦労しない」
どこか吐き捨てるような物言い。
レティシアは知っている。
この、傍若無人な美貌のスケーターの祖国を。
「まぁまぁ、そう言いなさんな。相手はまだまだ高校生なんだぜ?」
ポンポン、と肩を叩いてやると、上から見下ろされた。
「だから?」
「たまにはやさしくしてやんねぇと、ポッキリ折れちまうって言ってんの」
「それならそこまでだったというだけだ」
これにはさすがの青年もため息を零して長身の男にデコピンした。
「いっ・・・」
「だったら、お前もそこまでの男だったってことだ」
「・・・・・・」
身長はずっとちいさいクセに、誕生日が少し早いというだけで兄貴風を吹かせる男に、ヴァンツァーはふんっ、と鼻を鳴らした。
「・・・おせっかい」
「はいはい、そうですよー」
ふたりが見つめる先では、匂い立つ大輪の薔薇が、まだ固く閉じたその花弁を綻ばせようとしていた。
**********
あはは、なんか終わりそうな雰囲気(笑)
「それか、アクセルだ」
美貌のコーチの言葉に、シェラもレティシアも目を瞠った。
「3アクセル-2トゥループのコンボ、3フリップ、2アクセル。スピンやスパイラルはそのままでいいが、多少は振り付けを手直ししなければならないかもな」
「本気か、お前?」
「もちろん」
「女子がショートで3アクセル?」
「苦手なことを矯正するのも必要だが、今のこいつはそのせいで伸びやかな演技が出来ていない」
「いやいや、待て待て」
レティシアは思わず苦笑した。
無茶は自分の専売特許だが、この悪友は『無茶振り』をさせたら天下一品だ。
まさか自分が常識を語る羽目になるとは。
「ヴァッツ。せめて世界選手権まで待て。グランプリ・ファイナルは今のプログラムだ」
「俺はどちらでも構わん。やるのはこいつだ」
顎でしゃくるようにされたシェラは、表情を引き締めた。
「・・・このままやる」
挑むような瞳に、ヴァンツァーは「好きにしろ」と言った。
頷いたシェラは、リンクに戻る。
不安があるなら、なくなるまで。
シェラは間違いなく天才と呼ばれるに相応しいスケーターだったが、才能を過信せずに努力出来る人間だった。
また、己に妥協を赦さない意思の強さを、たった17歳の少女が抱いている。
だからこそ、リンクサイドのコーチは喉を鳴らしたのだ。
「・・・なぁに笑ってんだよ」
「ああやって、誰もあれに追いつけなくなるんだ」
ため息のような、いっそ愛しさすら溢れるような感嘆の声音に、レティシアは眉を上げた。
珍しい、と思ったのだ。
この顔と身体とスケーティングだけはやたら美しい男は、その涼しげな瞳の奥に激情を隠している。
それは彼のスケーティングと振り付けを見れば一目瞭然。
かなり奔放な性格をしている自分より、余程情熱的な男だ。
女の影が絶えたことはないが、スケートより愛した女はいない。
自分のスケーティングに邪魔だと思えば容赦なく切り捨てる。
そんな男が、まだ17歳の少女に、その溢れる才能に惚れ込んでいる。
きっとシェラ本人には言ってやらないのだろうが、伊達に長年付き合っていない。
「ジャッジもスケ連も、馬鹿の巣窟だ」
レティシアはにんまりと笑った。
「あのお嬢ちゃんが、諦めると思ってんのかね?」
「思ってるんだろうよ。何度もダウングレードされれば、3回転-3回転を回避するだろう、と」
「『安全策を取るだろう』って?」
「あいつは馬鹿だから『安全』なんて言葉を知らない。100%か、それ以上かしかないんだ」
勝ち負けすら考えていない。
競技だから、勝敗は決する。
だが、もしシェラが誰かと戦っているとすればそれは。
「俺は、あいつを守ってやるつもりはさらさらない。──コーチや仲間や国に守ってもらって跳べたら苦労しない」
どこか吐き捨てるような物言い。
レティシアは知っている。
この、傍若無人な美貌のスケーターの祖国を。
「まぁまぁ、そう言いなさんな。相手はまだまだ高校生なんだぜ?」
ポンポン、と肩を叩いてやると、上から見下ろされた。
「だから?」
「たまにはやさしくしてやんねぇと、ポッキリ折れちまうって言ってんの」
「それならそこまでだったというだけだ」
これにはさすがの青年もため息を零して長身の男にデコピンした。
「いっ・・・」
「だったら、お前もそこまでの男だったってことだ」
「・・・・・・」
身長はずっとちいさいクセに、誕生日が少し早いというだけで兄貴風を吹かせる男に、ヴァンツァーはふんっ、と鼻を鳴らした。
「・・・おせっかい」
「はいはい、そうですよー」
ふたりが見つめる先では、匂い立つ大輪の薔薇が、まだ固く閉じたその花弁を綻ばせようとしていた。
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あはは、なんか終わりそうな雰囲気(笑)
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