小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
それでは、第3弾、行ってみよ。
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善良な市民を好色な男の魔手から守った達成感でいっぱいの大天使様は、同居人の待つ広大な城へと戻りました。
「おかえり」
そんな彼を迎えてくれたのは、すらりとした長身に、女性ならば誰もが歓声を上げるに違いない、艶のある美貌の青年でした。
大天使ウィアーとはまた別のタイプの美形です。
そう、ウィアーが天使ならば、彼はさしずめ『魔性の男』といったところでしょうか。
「ジュベール! 帰ってきていたの?!」
ウィアー君は軽く腕を広げて待っている青年に向かって、早足に近づいていきます。
そうして、正面から腰に腕を回すようにして抱きしめられると、長身の青年を見上げて微笑みました。
「ただいま」
「おかえり。──散歩は終わったのかい?」
「・・・パトロールだよ」
頬を膨らませるウィアー君に、ジュベールは喉の奥で哂いました。
「拗ねても可愛いだけだ」
言って指先で頬を撫でると、眉間に皺を寄せていたウィアー君は軽く眉を持ち上げました。
「・・・ジュベール、甘い匂いがする」
「ブライアン、って呼んでくれって言ってるのに」
「でも、『ジュベール』って響きが綺麗で好きなんだ」
ダメ? と小首を傾げる様子に、青年は苦笑しました。
「・・・お前には敵わないな。──マフィンを焼いたんだ。食べるだろう?」
「もちろん──あ」
「紅茶も、だろう?」
心得ている青年に、ウィアーはにっこりと微笑んで頷いた。
やがて、モロゾフをヤり倒してきた魔王・プルシェンコは、天使の笑顔で褒めてもらおうと、尻尾ふりふり自分の城へと戻ってきました。
すると、何やら甘い香りがしたので食堂へ向かったのですが、そこには誰もいませんでした。
しかし、食べたものがそのままになっています。
これは、几帳面なウィアー君にあるまじき行為です。
「・・・・・・」
魔王は、端整でありながらシベリアの大地のような凍れる容貌に、深い皺を刻みました。
そうして、足早に城の最上階、その最奥の部屋へと向かったのです。
「・・・やはりな」
「あぁ、おかえり」
「何をしている」
「嫌だなぁ。ちょっと見ない間に、随分と無粋な男になったものだ」
「ブライアン」
「・・・うわ、見て、この鳥肌。やめてくれるかな、その呼び方」
お互いその美貌に嫌悪の表情を浮かべて睨み合っています。
火花が散ってますいやむしろテポ○ンです。
「あ・・・ジュベ・・・っ」
舌っ足らずな口調で悩ましげな吐息を漏らすのは、キングサイズの寝台の上で青年に背後から抱きかかえられている大天使様です。
衣服の前は肌蹴られ、白い肌が薄紅く染まっている様が何とも色っぽいです。
「・・・お前、何をしている」
「何って、愛妾を可愛がっているんじゃないか」
「それは、俺の、愛妾だろうが」
「相変わらず了見の狭い男だ。──夫の愛妾は、ぼくの愛妾でもあるはずだ」
「どんな理屈だそれは」
「Shareだよ、share──ジェーニャ」
「・・・お前にその愛称で呼ばれる筋合いはない」
「夫婦の親睦を深めようというぼくの配慮じゃないか」
「深めんで構わん」
腕組みして『いつ攻撃してやろうか』と狙っている魔王に、ジュベールは妖艶な笑みを向けました。
「──ほら、ヨハンもぼくがいいって」
ね、と呼吸を荒くしている少女のような美貌に微笑みかけました。
とろん、とした表情で唇を震わせ、ゆっくりと頭上の美青年を見上げます。
薄く開かれた唇から覗く舌先に、身を屈めて歯を立てました。
細くしなやかな身体が派手に跳ね、仔犬が啼くような声が漏れます。
「──まさか」
「マフィンに『スパイス』を入れたんだけど、まさかこんなに効くとはね」
「──それは薬物に対する耐性がまったくないんだぞ!」
「人聞きが悪いなぁ・・・身体に害はないよ」
ただ、ちょっと熱くなるだけだ、とささやいて大天使様の耳に息を吹きかけます。
きつく目が閉じられた反動で、ぽろりと涙がひと筋頬を伝いました。
「・・・・・・」
魔王様、辛抱たまらんご様子です。
鼻息を荒くし、ズカズカとベッドに乗り上げます。
「ちょっと。ぼくが愉しんでるんだけど」
「うるさい」
魔王様、ターゲット・ロックオンです。
爛々と燃えるように輝く瞳に、ウィアー君はぶるり、と身を震わせました。
「ぁ・・・ゃ、むり・・・」
ふるふると首を振ったって、頬を染め、瞳を潤ませて言ったのでは煽るだけです。
「──ふたりで、たっぷり可愛がってあげるからね・・・ヨハン」
ささやいて大天使様の額に唇を落とした魔王様の正妻は、それはそれは、妖艶な笑みを浮かべたのです。
そうして、その後散々に啼かされた大天使様は魔王様に土下座までさせ、その様子を見守りウィアー君にはちみつ湯を作ってやっているジュベールは、それはそれは愉しそうにくすくすと笑っていたのでした。
どこまで続けられるのか・・・
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1日がこうして終わっていくのですよ・・・ふっ。
しかし、どこの世界も『魔王』というのはヘタレだな・・・ちっ。
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