小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
言われたら、ねぇ。ノっちゃいますよね。──たとえ仕事中であろうとも(コラ)
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大天使様に、自宅近くまで送り届けてもらったコヅでしたが、グラリ、と世界が歪んだかと思ったらまた見知らぬ場所に来てしまいました。
今日は森に縁があるのでしょうか。
でも、先ほどの森よりは明るい場所です。
周りにはちいさい花々も咲いています。
でも、コヅは可愛らしい顔を歪めました。
「・・・えぇ~・・・姉様たちに怒られる・・・」
もう、家を出てからだいぶ時間は経っています。
帰りが5分でも遅れると、にっこり微笑めば美しい姉たちが、般若か夜叉かといった恐ろしい顔になるのです。
本当はとてもやさしい姉たちなのです。
ちょっと過保護が行き過ぎて、可愛さ余って憎さ千倍くらいになってしまっているだけなのです。
次から次へとめまぐるしく変化する展開に、コヅはちょっと涙目になりました。
「──So cute!」
すると、森の小道の向こうから、ものすごいステップを踏んで男性がひとりやってきます。
シャツにパンツにブーツと至って軽装ではありますが、非常に端正な容貌をしています。
貴族的と言っても良いくらい、気品のあるその男性──おそらく30代でしょうか──は、なぜかフェンシングのステップでこちらへやってきます。
・・・今日は色んな人に会うなぁ・・・
とぽかん、としていたコヅですが、口ひげをたくわえた男性が自分の前に跪いたのでびっくりしました。
「You, so cute!」
「・・・はぁ」
最近はこの手の人が多いのだろうか、と目をぱちくりさせたコヅです。
まだ肌寒いけれど、春も近いし・・・と思っていると。
「わたしはフィリップ・キャンデロロ」
「え? フランス人? だってさっき英語」
「では、ダルタニアンと」
「いや、それもフランス」
「ふむ。きみは非常に真面目な青年のようだ」
「・・・あまり褒められている気がしませんが」
「Oh,no!」
「え、ですから」
「あああ、困った顔も可愛らしい」
やたらテンションの高いその美中年は、さっと魔法のように一輪の薔薇を取り出しました。
真っ赤な、情熱の色です。
これまたぽかん、としているコヅに、キャンデロロ様(←『様』まで名前)は仰いました。
「さぁ、My Princess」
「ぼく、男なんですけど」
「ああん、きみの可憐さからして、そんな性別なんて瑣末なこと!」
「え、根本じゃ」
「さ、これ持って」
もともと押しには弱い日本人。
しかもコヅは非常に素直で、純粋で、その上真面目で可憐な好青年なのです。
言われるままに、真っ赤な薔薇を受け取りました。
「──よし」
何が『よし』なんだ、と訊こうとした瞬間には、コヅは彼の腕の中でした。
「──ひゃあ」
「ん~、驚いた声も可愛らしい」
抱き上げたコヅに向かってにっこり微笑んだ男は、まるで氷上を滑るようにして元来た道を戻り始めました。
「あ、あの」
帰らないと、日本には怖いお姉さんたちが待っているのです。
男ひとり抱き上げているというのにまったくバランスを崩さないその身体能力には目を瞠るものがあり、自分もこうなりたいな、と思うコヅでしたが、それとこれとは話が別。
彼女たちは怖いのです──そりゃあもう、真剣に、すっげー怖いのですよあの気迫が。
「何だい、My sweet」
「・・・どうしてあなたはフランス語を喋らないのですか?」
「それは作者が知らないからだよ」
「はぁ・・・って、そうじゃなくて、ぼくを家に帰して下さい」
「あぁ、そうだね。家に帰ろう」
「・・・帰してくれるのですか?」
「もちろんだとも。早く帰ろうではないか」
力強く頷いてくれる美中年に、コヅはほっとしたようにはにかみました。
その瞬間、「うっ」とくぐもった声が聞こえ、一瞬男の脚が止まったのです。
どうかしたのか、という心配そうな視線を向けるコヅ。
「あの・・・重いでしょう? ぼく、歩けますから」
「Nooooooohhhh!! わたしの楽しみを奪わないでおくれ、Honey!!」
「はぁ・・・」
「さ。早く帰ろう────ふたりの愛の巣に」
「え・・・?」
ぼくの家じゃないの? と思ったときには時すでに遅く。
コヅは森の奥深くにある、キャンデロロ様の屋敷へとお持ち帰られ、何だか知らない間にウェディング・ドレスまで着せられ、あれよあれよ、という間に『リンゴーン』と教会の鐘の音を頭上で聴いていたのでした。
・・・ガンガン続く
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間違いない。神クラスの天才だ。
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