忍者ブログ
小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
<< 12   2025/01   1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31     02 >>
[2200]  [2199]  [2198]  [2197]  [2196]  [2195]  [2194]  [2193]  [2192]  [2191]  [2190
仕事と芝居と。
現在、仕事がちょー多忙中。既に残業20時間オーバー。来月はウッハウハだぜ♪

さて、そんな中、橘は高校時代の劇部の顧問に誘われ、3月末に芝居もやることに。いや、やるって決めたのは正月なんだ。こんなに仕事が立て込む予定はなかったので、20分くらいの芝居だというし、「えーよー」と答えたわけですが、あはは、台本読む気力が残ってない(笑)

さて、せっかくのお菓子メーカーの陰謀の日・・・はもう過ぎてしまいましたが、便乗して、小ネタをば。


**********

その日、ファロット一家の乙女組は、3人仲良く茶色くて甘いヤツと格闘をしていた。
手際の良さはもちろんシェラが一番だが、その分彼が作るのは時間のかかるケーキだ。
カノンは胡桃のたっぷり入ったブラウニー、ソナタは生チョコレート。
それぞれがまったく別のものを楽しそうに作っていた。

「──出来た~♪」

一番最初に完成したのはソナタのものだ。
というのも、彼女が作った生チョコレートは、冷やす時間を除けば正味10分の作。
手で割った板チョコに温めた生クリームをドバッと入れ、混ぜ、溶かし、クッキングシートを敷いたトレーに流し込んで冷蔵庫でおやすみなさい、の超☆簡単レシピ。
冷えたチョコレートにココアパウダーをまぶせば、蕩ける口溶けの本格スイーツの出来上がり。
普段は食べる専門のソナタだったが、今年はやる気になったらしい。
出来たばかりの生チョコレートを持って、男性陣の待つリビングへと向かったのだった。

「召し上がれ~」

満面の笑みとともに差し出されたトレーを見て、青や緑の3対の瞳が見開かれた。

──でかっ!!
──・・・なんだ、あの妙なうねりは・・・

表情があまり変わらないコンビは、だが頬を引き攣らせ、チョコレート──らしきもの、を凝視している。

「あはは、ハニーってば、相変わらず独創的!」

だが彼女の夫だけは、その美貌に楽しそうな笑みを浮かべると、子どもの拳大はある、何かがウネウネッと飛び出している茶色い物体を掴み、口の中へ放り込んだのである。

──つえーーーっ!
──・・・勇者だ・・・

思わずゴクリ、と息を飲んだヴァンツァーとキニアンの前で、ライアンはふふふ、と相好を崩した。

「美味し~~~い♪」

心からの叫びと思われる喜色に溢れた声に、「ホントかよ・・・」と思った男がふたり。
大きさにもちょっと引くのに、歪な丸い物体から、タコかイカの足のようなものがウネウネッと出てきているのだ。
これは怯えるなという方が無理である。
それなのに、彼女の夫である男は躊躇いもなくそれを口に入れ、しかも美味いと言ったのだ。
吐き出そうとしている様子も、涙目になっている様子もない。
本当に美味しいものを食べたような反応に、ヴァンツァーとキニアンは顔を見合わせた。
代表して、ヴァンツァーが口を開いた。

「・・・ソナタ。ちなみに、この飛び出している白いのは何だ?」
「ココナッツ」
「「・・・・・・」」

でけーよ、とは賢明にも心の中で突っ込んだ無愛想コンビ。
チョコレート自体の大きさも規格外なら、ココナッツもフレークで十分なところをえらい大きく切り出したものだ。
だがしかし、身体に害のある組み合わせではなさそうなので、ふたりは意を決してソナタの作ったチョコレートに手を伸ばした。

「──あ、パパとアルのはこっちね」

そういって差し出されたのは、ごくごく普通の、ひと口サイズの生チョコレート。
ココナッツだってちいさく削られている。
その大きさだけで随分安心したふたりは、ソナタが初めてひとりで作ったお菓子を口に入れたのである。

「「──・・・あれ、美味い」」

思わず声を揃えたふたりに、ソナタは「あれ、ってどういうことよ」とちょっと頬を膨らませた。

「ハニー、普段は料理しないけど、味覚は確かだもんね」
「そりゃそうよ。シェラの子だもん」

えっへん、と胸を張って見せる。
やればデキる子、とライアンに頭を撫でられて嬉しそうにしているのが可愛い。

「材料だっていいもの使ってるし、何せ温めて混ぜるだけなんだから失敗するわけないわよ」

いやでも見た目がね、とはこれも心の中で呟いたヴァンツァーとキニアンだった。

「は~い、お次はこれだよ~」

カノンが持ってきた皿の上には、綺麗に四角く切られた、ひと口大のブラウニー。
こげ茶色の生地にところどころ胡桃が覗いているのがアクセントになっている。
見た目からして美味しそうだが、味も文句なし。
ちょっと苦味が強く、カノンが誰を対象に作っているのかが伺い知れようというもの。

「・・・何ていうか、俺、お前の彼氏で良かったわ」

ほっとしたキニアンが思わず呟くと、カノンはきょとんとした顔で首を傾げた。

「美味しいってこと?」
「とっても美味しいです」

何だか重々しく頷いているキニアンに、カノンは「ふ~ん」と気のない返事をしながらも、頬を染めて嬉しそうにしている。

「──ヴァンツァー!」

珍しく慌てた様子でリビングに飛び込んできたのはシェラで、呼ばれた男は「うん?」とソファ越しに振り返った。
困り切った顔をして駆け寄ってきた天使を落ち着かせようと、ヴァンツァーは「どうした?」とやさしい声で訊ねて髪を撫でてやった。

「あの、あのな」
「うん」
「頼みがあるんだ」
「うん」
「その・・・ケーキに使うんだけどな・・・ブランデーを、開けたいんだ」
「どうぞ」
「──本当か?!」
「嘘を吐いてどうする」

くすくすと笑った男は、菫の瞳をキラキラと輝かせているシェラの頭をもう一度撫でてやった。

「ありがとう!」

むぎゅ! と、これまた珍しくシェラの方からヴァンツァーに抱きつくと、スキップでもしそうな勢いでキッチンへと戻っていった。

「・・・シェラ、何かあったのか?」

ポツリ、とキニアンが呟けば、カノンがため息を零した。

「ここの家にあるブランデーってさ、どれもこれも、1本100万くらいするんだよ」
「──100?!」
「まぁ、お菓子だから香りづけ程度で1本全部使うってことはないだろうけどね」

顎が外れそうな顔になったキニアンは、涼しい顔で珈琲を飲んでいる男を見つめた。
気づいたヴァンツァーは、お気に入りの青年ににっこりと笑みを返してやった。

「チョコレートとブランデーは合うからな」
「いや、それにしたって・・・」

お菓子用のリキュールを使えば良いではないか、とキニアンは思ってしまう。

「『宇宙一美味しいザッハ・トルテを作るんだ!』と息巻いていたから、香り付けでも良いものを使いたいんだろう」
「──宇宙一? 何でまた」

ライアンが碧眼を丸くして訊ねると、ヴァンツァーは苦笑を返した。

「ふたりで行ったレストランで、食後にザッハ・トルテが出てきたんだ。俺は甘いものは苦手なんだが、それは今までに食べたことがないほど美味かった。気づいたら、ひと皿全部食べていてな」
「そんなことは、今までなかったんですね?」
「そのときも、少々行儀は悪いが、ひと口食べてあとはシェラにやるつもりだったんだ」
「それでシェラさん、対抗意識燃やしちゃったんですか?」
「らしい」

料理とお菓子作りにかける情熱は並みの料理人など目ではないシェラだ。
何とも可愛らしい逸話に、その場にいた5人はほっこりと和んだ。

──だが、分かっていなかった。

件のレストランのシェフは万人が認める天才であり、その域に達するのはいかなシェラとて容易ではなかった。
そしてシェラのその職人気質ゆえに、この日からしばらくファロット一家の食卓には毎日のようにケーキが供されることとなったのである。


**********

ヴァンツァーとキニアン涙目。
PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret(管理人のみ表示)
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
拍手
検索
リンク
Copyright ©  ひっくり返ったおもちゃ箱 All Rights Reserved.
*Material by Pearl Box  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]