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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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あったかかったですね~。明日も同じくらいでしょうか。ここ数日あたたかい日が続きますが、まぁまた寒い日が戻ってくるのでしょう。

相変わらず忙しいので、癒し系のお子様をば。

橘はフーちゃんが大好きなのです。

**********

ファロット家の三男坊は、黒髪に菫の瞳の美少年だ。
華やかというよりは影のある美貌で、笑えば花が綻ぶように愛らしいが、家族の前以外ではあまり表情が動かない。
その顔立ちはシェラ譲りであったが、女として育てられたシェラほど少女めいた印象はない。
運動よりも読書を好み華奢ではあるが、身長も同年代の平均的な男子より少し高く、骨格は男のもの。
女装をすれば素晴らしい美少女になるかも知れないが、むしろ、家族以外には怜悧とも取れる硬質な顔立ちは、どう見ても男なのだが・・・。

「きみ可愛いね! 時間があるなら最近オープンしたカフェで」
「──俺は男です」

「背が高くてスラッとしてるね! モデルとか興味な」
「──それは女性向けの雑誌では?」

「あれ、きみどこかで会ったこと」
「──初対面です」

ひとりで街を歩くと、決まってこのようなやり取りがなされるのである。
無視すればいいものを、いちいち返事をしてしまうのがフーガの真面目なところである。

「・・・何なんだ」

自分が母親──便宜上──似であることは自覚しているフーガだったが、女子力などというものは当然持ち合わせていない。
それこそシェラの方が100倍女らしいし、長女・ソナタと同じ程度には男らしいと自負している。

「何がいけないんだ・・・この髪か・・・?」

艶々とした真っ黒な髪は、シェラや姉と同じように背中まで伸ばしている。
家族みんなが「綺麗だ」と言ってくれるので伸ばしているが、この髪のおかげで女に見えているのだとしたら考えものだ。
少なくとも、男に声を掛けられて悦ぶ趣味はない。

「・・・たまにはいいか」

よし、と軽く息を吐くと、フーガは買ったばかりの本を鞄にしまって先を急いだ。


+++++


「「「ええーーーーー!」」」
「ふ、フーちゃん?!」
「「ど、どどど、どうしたの?!」」

日が暮れる少し前に自宅へと帰ったフーガは、シェラと兄姉妹に驚愕の表情と声でもって出迎えられた。

「か、髪・・・」

顎が外れそうな顔をしているシェラに、「うん、切った」と頷きを返す。
背中まであった髪は首筋が露わになるほど短く切られている。
ショートカットなど、何年ぶりか。
涼やかな目元とその硬質な雰囲気でもって、もうどうしたって女の子には見えない。

「えーー! もったいなーい!!」
「あんなに綺麗だったのに!」

ソナタとカノンの言葉に、「だって」とフーガは唇を尖らせた。

「街歩くたびに男にナンパされたり、女に間違えられたり・・・めんどくさいから」
「えー? フーちゃんは可愛いけど、男の子にしか見えないよ?」
「ロン、そう思うなら『可愛い』とか言うな」
「なんで?」

きょとん、とした青い瞳を瞬かせているロンドに、ため息を零すフーガ。

「・・・フーちゃんの髪ゆわくの、好きだったのに・・・」
「お人形さんと、おんなじ髪型・・・」

しょぼん、とした妹たちの表情を見るとさすがに罪悪感の湧いてきたフーガだったが、切ってしまったものは仕方ない。
まじまじと見つめられるのが居心地悪くて、「似合わない?」と不安気に問えば、即座に否定が返る。

「そんなことはないけど・・・」
「でもやっぱりちょっともったいないかなー、って」

フーガ自身は、これで女の子に間違えられることもないだろうと結構満足していたのだが、何だか家族にはあまり評判がよろしくない。
一応みんなに聞いてから切るべきだったか、と後悔し始めていた。

「──フーガ?」

そこへ、ヴァンツァーも外出先から帰ってきた。
フーガは肩を震わせて、恐る恐る背後を振り返った。
見上げた藍色の瞳は驚きに瞠られていて、やはり不安になる。

「あの・・・父さん、これは・・・」

短くなった襟足の辺りを手で撫でるようにして、言い訳のようなものを口にしようとしたフーガだったのだけれど。

「──短いのも似合うんだな」
「──え?」

びっくりしてフーガは菫色の瞳を真ん丸にした。

「ほとんど長い状態しか見たことがなかったが・・・」

そう言って、ヴァンツァーは首筋に触れるフーガの黒髪を指で摘んだ。
ほんの少しくすぐったくて、フーガは首をすくめた。

「短いのも、凛々しくていいな」

にっこりと笑う父に、フーガはぽかん、とした表情を向けた。

「どうした?」

不思議そうに首を傾げられ、フーガはポツリと呟いた。

「・・・変じゃ、ない・・・?」
「──変? 誰かにそう言われたのか?」
「う、ううん! そうじゃないけど」
「変なものか。まぁ、お前の髪は手触りが良いから少し寂しい気もするが、よく似合っているよ」

よしよし、と頭を撫でられて、フーガは何だか嬉しくなった。

「──ふむ。その髪型なら、今までとは少し違う服装も良さそうだな」
「服?」
「食事が終わったら、少し俺の部屋においで」
「──デザインしてくれるの?!」
「色々と浮かんできた。付き合ってくれるか?」
「もちろん!」

父さん大好きっ子のフーガは、ぎゅーっと逞しい父の身体に抱きつき、溢れんばかりの笑顔を見せている。

「パパ、パパ! フーちゃん、王子様がいいと思う!」
「スーツ!」
「メガネ!」

ロンドの声にアリアとリチェルカーレも続けるが、微妙に妹たちの方向性がおかしい。
けれど当のフーガは父に抱き上げられて嬉しくて堪らず、そんなことには気づかない。
そうして、ヴァンツァーはフーガを抱いたままリビングへと向かったのだった。

「・・・いやー、パパってば相変わらずパネェわ」
「フーちゃん、めろめろ」
「わ、私だって、フーちゃんには短いのも似合うと思ってるんだからな!」

あいつばっかりズルい! と鼻息を荒くするシェラの頭を、カノンとソナタは「よしよし」と撫でてやった。

「フーちゃんって、やっぱり連れてくるの彼氏かな?」

ソナタの言葉に、シェラとカノンが顔を見合わせる。

「・・・あんまり説得力ないかも知れないけど、父さんみたいな男は反対だな」
「アー君みたいに素直で可愛い子ならいいけど、あんなふてぶてしいのはちょっと・・・」
「でも奥さんにはやさしいし、子煩悩だよ? ま、子どもは出来ないかも知れないけど、他人なんて石ころとでも思ってそうな男が、自分のことだけ溺愛してくれるって、結構ソソると思うんだけど。フーちゃん、そういうの弱そうだし」
「「・・・・・・」」

ソナタの発言に、銀髪ふたりは言葉を返せなかった。


**********

おやすみなさい。
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