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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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昨日は眠狂四郎の舞台を見てきました。3回目。でも、全然違った。一部キャストが違ったりもしましたが、それはまぁ、瑣末なこと。演出も、台詞も、殺陣も、場転の仕方まで何もかも違った。一番違ったのは人物に深みが出ていたことでしょうか。伊達に120公演もしてませんね。若手の演技も、かなり様変わりしてました。頭ふらふらさせながら台詞言ってた子が、その癖を直してましたからね。後半疲れてくるとやはり癖が出るんですが、1年にも満たない期間でよく直した。

笑いあり、涙あり、とても楽しかったです。──音響以外はな・・・。おまいの音響ブースにはフェーダーないのかよ・・・ほとんどカットアウトでやんの。音響がブツ切れなおかげで気持ちが切れてしまうのが残念ですが、でもまた物語の中に引き込んでくれるくらい、役者の力が上がってましたね。台詞のテンポと場面の緩急がついてて見やすかったです。

そんな舞台も今日で千秋楽でした。お疲れ様、ガッ君。役者やスタッフの皆さん。特にガッ君は、ほんとにちょっと休んで下さいお願いします(笑)ちょっとだけでいいですから(笑)でも、ぼくはどこまでもついていきますよ。

さてさて、うちのわんこは成長しているでしょうか・・・?

**********

昼休み。
少々慌しく昼食を摂ったキニアンは、音楽室へと向かった。
楽譜はコピーしたものを受け取っておいたので、教員に許可を取ってピアノの前に座る。
一応譜面を置き、軽くさらってみる。

「──うん、平気だな」

ピアノの音だけを聴かせるわけではなく、あくまで伴奏ならば、そう気を張ることもない。
もちろん、これまで懸命に練習してきたであろう合唱部の生徒たちに失礼のないようには演奏するつもりでいたが。

「──あ、もうやってる」

音楽室の入り口からひょっこりと覗いた顔に、キニアンは目を丸くした。

「・・・何してんの?」
「カノン連れてきた」
「いや、そりゃ見れば分かるけど・・・」

ソナタの隣には、彼女よりいくらか背の高い銀髪の少年。

「キニアンがピアノ弾くって話したら、行くって言うから」
「・・・やっぱり来るのかよ」
「え? あぁ、本番も行くけど、練習の話」

ちょっと勘違いをしているらしい同級生に、訂正を入れる。

「カノンの好きそうな超絶技巧曲じゃないぞ?」
「聴いちゃいけないわけ?」

ツン、と顎を逸らしている女王様に、キニアンは軽くため息を零した。

「俺は構わないけど、合唱部のやつらが・・・」
「邪魔しないもん」

ね、とソナタに確認を取る。
ソナタは、何だか自分より背の高い兄が、ちいさな弟か何かになったかのような愛しさが込み上げてきた。
この、ちょっとばかり素直でない双子の兄は、彼氏のことが好きで好きで、大好きで仕方ないのだ。
だから、彼が何かをするときには自分も一緒にいたいし、それを内緒にされたりするとちょっぴり傷付いたりもする。
頼りになるお兄ちゃんだとずっと思っていたのだが、最近のカノンは本当に可愛い。

「うん」

だから、にっこりと笑って頷いてやった。
ほら、とばかりに、カノンは腕組みをして見せた。
ソナタは、その様子をくすくす笑って見守っている。

「もう来てたの」

そこへ、合唱部の生徒たちがやってきた。
昨年までは男子生徒も所属していたらしいが、卒業してしまい女子のみになってしまったらしい。
今回の曲は、女声3部合唱だ。
ソプラノのパートリーダーを務めている少女はちらっ、とカノンたちの方に視線を向けたが、すぐにキニアンに向き直る。

「早速で悪いけど、弾いてみてくれる」
「あぁ、うん」

腕組みをし、キニアンの腕を見極めようと表情を険しくしている彼女の周りでは、少し不安そうな顔をした少女や、期待に満ちた目をした子、リーダーと同じく険しい顔をしている子など様々だ。

「あ・・・あの、あたし、譜捲り担当で・・・」
「あぁ、そうなんだ。よろしく」

ちょっと顔を赤らめている少女にも、キニアンは相変わらずにこりともしない。
もちろん、機嫌が悪いわけではない。
約20名の人間からの視線を浴びながらも、キニアンはいつも通りの無表情だ。
普段制限をかけてある耳のボリュームは、音楽室に入ったときから演奏モードにしてある。
軽く息を吐き出し、鍵盤に指を置く。
合唱部の少女たちは、皆目を瞠った。
伴奏担当の子は、学校でも家でも、何時間も練習してようやく弾けるようになったと言っていた。
指が攣りそうだ、と零していたが、今目の前にいる少年が演奏する様子からはそんな苦労は微塵も感じない。
よく見れば、かなり大きな手をしている。
指も長い。
その手で、涼しい顔をしてあちこちに音の飛ぶ伴奏を弾きこなしている──そう、弾きこなしているのだ。
ほぼ初見だというのに。
3分ほどの演奏が終わると、キニアンはソプラノのパートリーダに訊ねた。

「こんな感じでいいか?」
「・・・・・・」
「やっぱり前の伴奏と違うか?」
「──え?」

ぼーっと聴いていた少女は、はっとして目をぱちくりさせた。

「とりあえず、楽譜通りに弾いたんだけど。伴奏っていっても、タイミングとか慣れないと歌いづらいかも知れないな」
「・・・あなた、本当に弾けるのね・・・」
「え?」
「初見じゃないの?」
「初見だけど?」
「・・・何で弾けるの・・・?」

何でって言われても、とキニアンは頭を掻いた。

「難しいって言っても、これ伴奏だからなぁ。ピアノの音を聴かせるための曲じゃないから、ピアノ曲に比べたら難しくないし・・・あぁ、でも、女子の手だと、ちょっと大変かもな」

うーん、と唸っている少年に、突如少女たちの間から歓声が上がった。
慌てて耳のボリュームを下げたキニアンである。
すごーい、すごーい、と言って寄ってくる少女たちに、「え? え?」と目をぱちくりさせているキニアン。
何がすごいのか彼にはよく分からないのだが、少女たちは興奮した様子でしきりに褒めてくる。
親からも──特に父親からは──滅多に褒められたことがないので、困惑してしまう。

「すごいねー!」
「キニアンがピアノ弾けるなんて意外!」
「運動部なのに、文系もいけるんだ!」
「何かかっこいい!!」

そんなことを口々に言ってくる少女たちに、やはりどう対処していいのか分からないキニアン。
え、え、とキョロキョロしていると、カタン、と席を立つ音が聴こえた。

「──カノン?」

音のした方に目を向ければ、椅子に座っていた少年が席を立って音楽室の外へ出ようとしている。
キニアンも椅子から立ち上がった。

「どうした?」
「別に。もうすぐ昼休み終わるから。帰る」

ふいっ、と顔を背けるカノンの横で、ソナタが額を押さえている。
何だかよく分からなかったけれど、時計を見れば休み時間は残り10分ほどだ。
確か、次は移動教室だったはずだ、と思い出す。

「悪い。次の授業の用意しないと」

キニアンは合唱部の少女たちにそう告げた。

「放課後って、やっぱり部活よね?」
「あぁ。練習、何時までやってる?」
「みんな寮なの。だから、遅くまでやってることもあるし、寮のプレイルームを使わせてもらうこともあるわ」
「あぁ、じゃあ部活終わってまだやってそうなら、そっちに合流するよ」
「分かったわ。よろしく」
「あぁ」

じゃあ、と楽譜のコピーを手にしたキニアンは、音楽室を出て行ってしまったカノンたちを追いかける。
スタスタ歩いているカノンの少し後ろを歩いているソナタに、そっと耳打ちした。

「なぁ、何であいつ怒ってるんだ?」

ソナタはとても珍しい生き物でも見るような目で、長身の少年を見上げた。

「・・・怒ってるのが分かるのに、その理由が分からないからじゃない・・・?」

キニアンは、とても不思議そうな顔で首を傾げたのだった。


**********

キニアンは、もともとモテる設定なんです。ヘタレてるだけで。イケメンなんです。ヘタレてるだけで。
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