小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
今日こそは早く寝よう、今日こそは早く寝よう、と思っていながら、気づくと日付が変わっている毎日。皆様いかがお過ごしでしょうか? ぼくは仕事中に意識が飛びます(コラ)
なので、今朝はiPod touchで4大陸のときの真央たんのFSを見て癒しと勇気をいただきました。何度見てもいいわぁー。あの3Aぱねぇわー。あの運動量で、フィニッシュしたあとにこにこ笑って息ひとつ乱してないって、恐ろしい子(笑)
そんなこんなで、うちのスペシャリストのたまごにも、頑張ってもらいましょう。
なので、今朝はiPod touchで4大陸のときの真央たんのFSを見て癒しと勇気をいただきました。何度見てもいいわぁー。あの3Aぱねぇわー。あの運動量で、フィニッシュしたあとにこにこ笑って息ひとつ乱してないって、恐ろしい子(笑)
そんなこんなで、うちのスペシャリストのたまごにも、頑張ってもらいましょう。
**********
コンクールが間近に迫っている高揚感とは別に、年頃の少女たちははしゃいでいた。
それは、同じ部活の伴奏者が流行り風邪で倒れてしまったために、急遽別の伴奏者が決まったためである。
その伴奏者というのは、バスケ部に所属する2年生で、かなり長身な上にハンサムと評判の少年であった。
顔立ちは整っているのだが、いかんせん愛想がないため取っ付きにくい印象を与えてくる少年で、話しかけてみたい、とは思ってもなかなか実行に移せないでいる女子が多かった。
──しかし、チャンスは訪れたのだ。
数日間とはいえ一緒に過ごす時間があるのだから、ピアノの腕を褒めながら、さりげなく近寄って、話しかけたり、あわよくば触っちゃったりなんかしちゃったりしてしまおうか、と考える部員は少なくなかった。
話してみると意外と気さくで、無愛想ではあるが礼儀正しい少年だということが分かって、余計に少女たちの興味を煽った。
──これは、もしかするともしかするかも知れない。
そう、思っている少女もいた。
だから、本番前の緊張や興奮とは別のところで、寮内にあるプレイルームは異様な熱気に包まれていたのだ。
少年は自身の所属する部活の練習に出るため、少女たちは部活の時間は伴奏を録音したものを流して練習をしていた。
部活の時間が終わって夕食を摂り、プレイルームに移ってからも、しばらくの間は録音したものでのパート練習が続いていたのだ。
「悪い、遅くなった」
そこへ、背の高い少年が現れた。
ちいさい歓声が上がりキニアンは軽く首を傾げたが、とりあえずピアノの前へと向かった。
「えっと・・・どうしたらいい?」
ソプラノのパートリーダーも務める部長に、伺いを立てる。
「パート練習していたの。あなたさえ良ければ、合わせたいんだけど」
「あぁ、分かった」
頷くと、キニアンはピアノの前に譜面を置いた。
プレイルームのピアノは音楽室のものと違ってグランドピアノではなかったが、贅沢は言っていられないだろう。
音響効果も、良いとはお世辞にも言えないが、悪くもない。
州大会に出場するような強い合唱部だから、伴奏者が変わっても特に問題はないだろう、と思ったキニアンだった。
──が、しかし。
「・・・・・・」
思わず、演奏の手を止めてしまった。
「ちょっと、どうしたの? 昼間は弾けてたのに」
「あ、いや・・・弾けるんだけど・・・」
伴奏することには何ら問題はない。
あるとすればそれは。
「・・・顧問って、この練習には付き合わないのか?」
「これはあくまで自主練習。部活の時間は終わってるわ」
「まぁ、そうなんだけど」
「何よ。何か言いたいことがあるの?」
腕組みをしている少女に、キニアンはポリポリと頭を掻いた。
「あんたたち、いつも通り歌ってるか?」
「え?」
「いつもと同じように声が出て、いつもと同じように歌えてるか? 違和感とかないか?」
この空間で唯一の少年の存在に、少女たちは顔を見合わせた。
「何を言っているのかさっぱり分からないんだけど、いつも通りだと思うわよ。人数も、伴奏以外は欠けてないんだし」
「そうか・・・」
「だから、言いたいことがあるなら言ったら? 練習時間が減るわ」
大きな大会の本番前で少しピリピリしているのだろう、苛立った様子の少女に、キニアンは軽く息を吐き出すと告げた。
「じゃあ、遠慮なく」
それから、無口で無愛想と評判の少年が口にしたこと細かな指摘と指示に、少女たちは目を真ん丸にした。
ひとりひとりの歌い方の癖から声の出し方、ブレスの位置、ビブラートのかけ方にスタッカートのタイミングなど。
20名以上いる部員のほぼ全員分の指摘事項を、ひと息に言ってのけた。
「──特に、あんただ」
視線を向けるのは、部長であるソプラノのパートリーダーに対してだった。
「たぶん、あんたが一番上手い。声もよく通る。──だから、あんたの声だけやけに聴こえるんだ」
「・・・・・・」
「この曲で一番低い音は、女子が出すにはちょっと低い。なのに、アルトの人数が少なくてソプラノが一番多い。テナーがいれば違っただろうけど、圧倒的に低音の支えが足りないんだよ。アルトはメインじゃない。でも、アルトが支えないと高音が上滑りする。かといって、低音を豊かに出すには声帯と身体の鍛え方が足りない」
呆然とした様子で耳を傾けている少女たちの中で、部長だけはキニアンを睨みつけるような視線を送っている。
「・・・何が言いたいわけ?」
「出来れば、ソプラノからメゾソプラノに、メゾからアルトに人数を振り分け直した方がいい。ソプラノは、そんなに必要ない」
あの、とアルトの少女が軽く手を挙げた。
おそらく1年生だろう。
上級生に対して意見することに、戸惑った様子がある。
「あの・・・わたしたちの声が、ちいさいってことですか・・・?」
「そうじゃない。低音は丁寧に歌わないと土台にならない。声を大きく出しても、音を支えきれないんじゃ意味がないんだ」
「えっと、じゃあ、どうすれば・・・?」
キニアンは苦笑した。
「本当は、もっと身体を作らないといけないんだ。でも、あと数日しかないのにそんなことは無謀だろう? だったら、もう少し人数を」
「人数の振り分けだって一緒だわ! あと3日しかないのよ? 新しいパートで満足に歌えるかどうかなんて」
「だったら、あんたがアルトを歌うんだ」
「──・・・何ですって?」
懐疑的な顔つきになった部長に、キニアンは平然とした顔で言った。
「あんたが、アルトのパートを歌うんだ」
出来るだろう? とでも言いたげな口調に、少女はわなわなと拳を震わせた。
「わたしはソプラノのパートリーダーなのよ?! それなのにどうして!」
「別にアルトをそのまま歌えなんて言ってない。アルトの旋律を、オクターブ上で歌うんだ」
「・・・え?」
「それでもきっと、ソプラノ全員の声とあんたの声は張り合える。オクターブ上だけど、アルトの旋律も引き立つはずだ」
「・・・・・・」
「もちろん、本当に時間がないから判断は任せる」
部外者が口出して悪かったな、と謝罪する少年をしばらく見つめていた少女は、ひとつ質問をした。
「・・・あなたは、その方がいいと思うのね?」
「たぶんな。少なくとも、今のままじゃバランスが悪い」
「でも、このメンバーで州大会まで残ったわ」
「別に下手なわけでも、悪いわけでもないんだ。むしろあんたたちは上手いと思う」
ただ、と少し困ったようにキニアンは頬を掻いた。
「んー・・・俺の耳が、ちょっと特殊なんだと思う・・・」
「初見で弾いてたし、ピアノを習ってるの?」
「いや、ピアノは専門外。やってるのはチェロ」
「──チェロ?」
あれだけのピアノの腕を持ちながら専門外だと言い切り、更に専門はチェロなのだ、と言う少年に、少女たちはこそこそとややさきあった。
「両親が音楽家でね。まぁ、なりゆきで」
父親に聞かれたら殺されそうな台詞だが、昔は確かにそうだったのだ。
「音楽家・・・」
「──あ、チェロでキニアンって、もしかしてエルバート音楽院の?!」
「あぁ、うん。なんだ、知ってるのか?」
「知ってるもなにも、現代最高のチェリストじゃない! じゃあ、お母さんはヴァイオリニストの・・・」
「あぁ──」
「──あの、『天国の聖母(マリア)様』!」
「・・・・・・」
何だ、そのふたつ名は・・・と頭を抱えたキニアンだった。
比類なき音楽の才能を持つ母の奏でる音は確かに天上の音楽と呼ばれることもあるが、実物を見たらそんな感想は吹き飛ぶぞ、とため息を零す。
「有名な音楽一家なのね」
「あー、うん。親はね」
自分の才能にはとことん無頓着なこの少年は、いつもの調子でそう言った。
「もし、あなたの言うようにしたら・・・入選できる可能性もある、ってこと?」
「さすがにそれは分からない。他の出場者の歌を聴いたことがないからな」
肩をすくめる少年の言葉に、少女は大きく息を吐き出した。
「──分かったわ。とりあえずやってみて、それから判断する」
「アルトのパート、歌えるのか?」
「馬鹿にしないでちょうだい。わたしは部長よ? 他のパートだって全部覚えてるわ」
その威勢の良い台詞に、キニアンはちょっと笑った。
無愛想な少年の笑顔に、少女たちは一様にどよめいた。
「じゃあ、とりあえずやってみよう」
それから2時間ほどの練習で、少女たちは夢も見ないで眠れるほどくたくたになったのだった。
**********
んー、まだ続くのか?
ちなみに、オクターブ上でアルトを歌ったネタは実話です(笑)
コンクールが間近に迫っている高揚感とは別に、年頃の少女たちははしゃいでいた。
それは、同じ部活の伴奏者が流行り風邪で倒れてしまったために、急遽別の伴奏者が決まったためである。
その伴奏者というのは、バスケ部に所属する2年生で、かなり長身な上にハンサムと評判の少年であった。
顔立ちは整っているのだが、いかんせん愛想がないため取っ付きにくい印象を与えてくる少年で、話しかけてみたい、とは思ってもなかなか実行に移せないでいる女子が多かった。
──しかし、チャンスは訪れたのだ。
数日間とはいえ一緒に過ごす時間があるのだから、ピアノの腕を褒めながら、さりげなく近寄って、話しかけたり、あわよくば触っちゃったりなんかしちゃったりしてしまおうか、と考える部員は少なくなかった。
話してみると意外と気さくで、無愛想ではあるが礼儀正しい少年だということが分かって、余計に少女たちの興味を煽った。
──これは、もしかするともしかするかも知れない。
そう、思っている少女もいた。
だから、本番前の緊張や興奮とは別のところで、寮内にあるプレイルームは異様な熱気に包まれていたのだ。
少年は自身の所属する部活の練習に出るため、少女たちは部活の時間は伴奏を録音したものを流して練習をしていた。
部活の時間が終わって夕食を摂り、プレイルームに移ってからも、しばらくの間は録音したものでのパート練習が続いていたのだ。
「悪い、遅くなった」
そこへ、背の高い少年が現れた。
ちいさい歓声が上がりキニアンは軽く首を傾げたが、とりあえずピアノの前へと向かった。
「えっと・・・どうしたらいい?」
ソプラノのパートリーダーも務める部長に、伺いを立てる。
「パート練習していたの。あなたさえ良ければ、合わせたいんだけど」
「あぁ、分かった」
頷くと、キニアンはピアノの前に譜面を置いた。
プレイルームのピアノは音楽室のものと違ってグランドピアノではなかったが、贅沢は言っていられないだろう。
音響効果も、良いとはお世辞にも言えないが、悪くもない。
州大会に出場するような強い合唱部だから、伴奏者が変わっても特に問題はないだろう、と思ったキニアンだった。
──が、しかし。
「・・・・・・」
思わず、演奏の手を止めてしまった。
「ちょっと、どうしたの? 昼間は弾けてたのに」
「あ、いや・・・弾けるんだけど・・・」
伴奏することには何ら問題はない。
あるとすればそれは。
「・・・顧問って、この練習には付き合わないのか?」
「これはあくまで自主練習。部活の時間は終わってるわ」
「まぁ、そうなんだけど」
「何よ。何か言いたいことがあるの?」
腕組みをしている少女に、キニアンはポリポリと頭を掻いた。
「あんたたち、いつも通り歌ってるか?」
「え?」
「いつもと同じように声が出て、いつもと同じように歌えてるか? 違和感とかないか?」
この空間で唯一の少年の存在に、少女たちは顔を見合わせた。
「何を言っているのかさっぱり分からないんだけど、いつも通りだと思うわよ。人数も、伴奏以外は欠けてないんだし」
「そうか・・・」
「だから、言いたいことがあるなら言ったら? 練習時間が減るわ」
大きな大会の本番前で少しピリピリしているのだろう、苛立った様子の少女に、キニアンは軽く息を吐き出すと告げた。
「じゃあ、遠慮なく」
それから、無口で無愛想と評判の少年が口にしたこと細かな指摘と指示に、少女たちは目を真ん丸にした。
ひとりひとりの歌い方の癖から声の出し方、ブレスの位置、ビブラートのかけ方にスタッカートのタイミングなど。
20名以上いる部員のほぼ全員分の指摘事項を、ひと息に言ってのけた。
「──特に、あんただ」
視線を向けるのは、部長であるソプラノのパートリーダーに対してだった。
「たぶん、あんたが一番上手い。声もよく通る。──だから、あんたの声だけやけに聴こえるんだ」
「・・・・・・」
「この曲で一番低い音は、女子が出すにはちょっと低い。なのに、アルトの人数が少なくてソプラノが一番多い。テナーがいれば違っただろうけど、圧倒的に低音の支えが足りないんだよ。アルトはメインじゃない。でも、アルトが支えないと高音が上滑りする。かといって、低音を豊かに出すには声帯と身体の鍛え方が足りない」
呆然とした様子で耳を傾けている少女たちの中で、部長だけはキニアンを睨みつけるような視線を送っている。
「・・・何が言いたいわけ?」
「出来れば、ソプラノからメゾソプラノに、メゾからアルトに人数を振り分け直した方がいい。ソプラノは、そんなに必要ない」
あの、とアルトの少女が軽く手を挙げた。
おそらく1年生だろう。
上級生に対して意見することに、戸惑った様子がある。
「あの・・・わたしたちの声が、ちいさいってことですか・・・?」
「そうじゃない。低音は丁寧に歌わないと土台にならない。声を大きく出しても、音を支えきれないんじゃ意味がないんだ」
「えっと、じゃあ、どうすれば・・・?」
キニアンは苦笑した。
「本当は、もっと身体を作らないといけないんだ。でも、あと数日しかないのにそんなことは無謀だろう? だったら、もう少し人数を」
「人数の振り分けだって一緒だわ! あと3日しかないのよ? 新しいパートで満足に歌えるかどうかなんて」
「だったら、あんたがアルトを歌うんだ」
「──・・・何ですって?」
懐疑的な顔つきになった部長に、キニアンは平然とした顔で言った。
「あんたが、アルトのパートを歌うんだ」
出来るだろう? とでも言いたげな口調に、少女はわなわなと拳を震わせた。
「わたしはソプラノのパートリーダーなのよ?! それなのにどうして!」
「別にアルトをそのまま歌えなんて言ってない。アルトの旋律を、オクターブ上で歌うんだ」
「・・・え?」
「それでもきっと、ソプラノ全員の声とあんたの声は張り合える。オクターブ上だけど、アルトの旋律も引き立つはずだ」
「・・・・・・」
「もちろん、本当に時間がないから判断は任せる」
部外者が口出して悪かったな、と謝罪する少年をしばらく見つめていた少女は、ひとつ質問をした。
「・・・あなたは、その方がいいと思うのね?」
「たぶんな。少なくとも、今のままじゃバランスが悪い」
「でも、このメンバーで州大会まで残ったわ」
「別に下手なわけでも、悪いわけでもないんだ。むしろあんたたちは上手いと思う」
ただ、と少し困ったようにキニアンは頬を掻いた。
「んー・・・俺の耳が、ちょっと特殊なんだと思う・・・」
「初見で弾いてたし、ピアノを習ってるの?」
「いや、ピアノは専門外。やってるのはチェロ」
「──チェロ?」
あれだけのピアノの腕を持ちながら専門外だと言い切り、更に専門はチェロなのだ、と言う少年に、少女たちはこそこそとややさきあった。
「両親が音楽家でね。まぁ、なりゆきで」
父親に聞かれたら殺されそうな台詞だが、昔は確かにそうだったのだ。
「音楽家・・・」
「──あ、チェロでキニアンって、もしかしてエルバート音楽院の?!」
「あぁ、うん。なんだ、知ってるのか?」
「知ってるもなにも、現代最高のチェリストじゃない! じゃあ、お母さんはヴァイオリニストの・・・」
「あぁ──」
「──あの、『天国の聖母(マリア)様』!」
「・・・・・・」
何だ、そのふたつ名は・・・と頭を抱えたキニアンだった。
比類なき音楽の才能を持つ母の奏でる音は確かに天上の音楽と呼ばれることもあるが、実物を見たらそんな感想は吹き飛ぶぞ、とため息を零す。
「有名な音楽一家なのね」
「あー、うん。親はね」
自分の才能にはとことん無頓着なこの少年は、いつもの調子でそう言った。
「もし、あなたの言うようにしたら・・・入選できる可能性もある、ってこと?」
「さすがにそれは分からない。他の出場者の歌を聴いたことがないからな」
肩をすくめる少年の言葉に、少女は大きく息を吐き出した。
「──分かったわ。とりあえずやってみて、それから判断する」
「アルトのパート、歌えるのか?」
「馬鹿にしないでちょうだい。わたしは部長よ? 他のパートだって全部覚えてるわ」
その威勢の良い台詞に、キニアンはちょっと笑った。
無愛想な少年の笑顔に、少女たちは一様にどよめいた。
「じゃあ、とりあえずやってみよう」
それから2時間ほどの練習で、少女たちは夢も見ないで眠れるほどくたくたになったのだった。
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んー、まだ続くのか?
ちなみに、オクターブ上でアルトを歌ったネタは実話です(笑)
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