小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
書いて見ましょうかね。リハビリ、リハビリ。
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「シェラって、お姫様みたいよねぇ」
ほぅ、と感嘆のため息を吐くビアンカの言葉に、ヴァンツァーは首を傾げた。
見た目は女のようだが、シェラがそんな大人しい性格でないことはよく知っている。
──まぁ、そういう意味ではもっと規格外の『王妃』がいたのだが。
「そうか?」
「あなた、自分も含めて周りに美形ばっかりだから、麻痺してるんじゃないの?」
「ビアンカも十分美しいと思うが」
不思議そうな顔で、そんなことを言う。
相手を口説いているわけでも何でもなく、ただ事実を口にしているだけなのだということをビアンカはもちろん分かっているが、ヴァンツァーのような美男子からそんなことを言われたら、普通の女の子だったら舞い上がっていることだろう。
「ありがとう。でも、シェラは何ていうか、気品があるのよね。男の子だから、本当なら王子様って言うべきなんでしょうけど」
「あぁ、そういう意味か」
納得顔のヴァンツァーに、今度はビアンカが首を傾げた。
「王子でも王女でもないが、あれは伯爵家の嫡男だった」
「──伯爵? って、確か貴族よね?」
「あぁ。俺たちの郷里では、あれは名門貴族の出身。故あって庶民と変わらぬような暮らしをしていたが、まぁ、血だろうよ」
真実だけではないが、嘘でもない。
ヴァンツァーの言葉に、ビアンカは身を乗り出した。
「あなたたちの国は、王様がいたの?」
興味津々といった風に瞳を輝かせている。
こちらの世界にも王政の国はあるが、共和宇宙に生きるものにとって、それは教科書の中の話だ。
「あぁ。大陸はいくつかの国に分かれていて、それぞれを王が治めている。戦争で領地を奪い合うこともあった」
「じゃあシェラはこっちに来なければ伯爵様になっていたの?」
「どうかな。半分放棄したようなものだから」
「放棄? どうして? 伯爵って、そこそこ偉いんでしょう?」
「公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。まぁ、位としては真ん中だが、伯爵と子爵では天地ほどもその地位に差があるからな。ましてあれの生家は、国王の信頼も篤く、国内でも片手に入るほどの名門だ」
「すっごい権力者だったってことじゃない」
「命の危険も、いくらでもあるがな」
ピンときたビアンカだった。
「分かった! 跡継ぎだと命を狙われるから、女の子として育てられたんじゃない?」
この言葉に、ヴァンツァーは思わず微笑んだ。
「まぁ、そんなところかな」
「ねぇ、ねぇ。王様がいるんだったら、ヴァンツァーはやっぱり昔の噂みたいに王子様だったの? それとも、シェラみたいに貴族?」
この問に、ヴァンツァーは首を振った。
「俺はただの・・・使用人だ」
「──使用人?!」
こんなに美形で、シェラ同様どこか品のある使用人がいるだろうか?
分かりやすい表情に、ヴァンツァーは口元に笑みを浮かべて頷いた。
「そう。ファロット伯爵──あれの生家の伯爵家に雇われた、使用人だ」
「ファロットって、シェラの生家のファミリーネームだったのね──もしかして、レットも?」
「あぁ。元々俺たちのような使用人に姓は存在しないが、同じ一族ではあるからな」
「三人は、幼馴染みたいなもの?」
「ひと言で説明するのは難しいな」
「ふぅん。使用人でも、貴族に雇われてその暮らしを間近で見ていたりすると、品が良くなるのかしら?」
「俺は自分をそうだと思ったことはないが」
「そうなの? あぁ、でもレットはちょっと違うわね」
決して粗野なわけではないけれど、上品とも言い難い。
「ふふっ。使用人と貴族っていうのが本当かも知れないけど・・・シェラがお姫様で、ヴァンツァーとレットが護衛の騎士だったりしたら、なんかぴったりって感じ!」
朗らかにビアンカが笑っていると、
「楽しそうですね」
と、天使のような笑みを浮かべたシェラが、ティーセットを運んできた。
「どんなお話を?」
香りの良い紅茶をサーブしながら訊ねるシェラに、ビアンカは姫と護衛騎士ふたりの話をしてやった。
シェラが思い切り嫌そうな顔をしてヴァンツァーを睨んだが、彼は素知らぬ顔をしてティーカップに手を伸ばしたのだった。
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さ。明日からまた、頑張るぞ!
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