小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
久々の小ネタ。すんげー前に書いたオメガバースのやつ。まったくもって、えろはない。
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「──アスティン。休みが欲しい。スケジュールを空けてくれ」
端麗な美貌の男が書類に目を落としながら口にした言葉に、目の前の青年は軽く目を瞠った。
「珍しいですね、副社長が休みなんて」
クスッと微笑んだ、こちらも端正な容貌の男は「よろしいのではないでしょうか」と返した。
「我が社のワーク・ライフ・バランス推進のためにも、上がそれを実践するのは良いと思いますよ」
いつになさいます? と訊ねると、美貌の男──ヴァンツァー・ファロットは、顔を上げてアスティンに目を遣った。
「明日から丸1週間」
「──・・・3日になりませんか?」
分刻みのスケジュールで動く副社長のスケジュールを脳内でどう並べ替えても、一度に3日以上の時間を作ることは難しい。
アスティンは穏やかな表情の裏で目まぐるしくその優秀な頭脳を働かせながら、どうにか平静を装ってそう問い掛けた。
「ならん」
「理由を伺っても?」
社内の調整だけならまだしも、他社との商談や会合もある。
リスケジュールするにしても、副社長は多忙過ぎた。
──だから普段から休息を入れろと言っているのに・・・。
止まったら死ぬとでも思っていそうな男の仕事スタイルを思い返し、つい恨み言のような愚痴が、アスティンの頭の端を掠める。
眉間に皺が寄りそうになるのをどうにか堪えたアスティンに、ヴァンツァーはゆったりと微笑みを浮かべて見せた。
艶やかな黒髪に白皙の美貌、高身長、高学歴、高収入。
誰がどう見ても生粋の【ALPHA】であり、何でも持っている男ではあったが、その美貌に表情らしい表情が乗ることはほとんどない。
珍しいを通り越して夏に雪が降るのを目の当たりにする心持ちになったアスティンは、ただただ目を丸くして上司を見つめ返すことしか出来ない。
「俺の可愛い番が、離してくれないんだ」
「・・・・・・《HEAT》、ですか」
そういえばあの子は今日休みだったか、とアスティンは内心ため息を零した。
「あれはどうも《HEAT》の時期が不安定だ」
どんな種のどんな性別の人間に抱かれても子を成す【OMEGA】は、数ヶ月に1度、《HEAT》と呼ばれる発情期を迎える。
美しく嫋やかな外見の多い【OMEGA】は、【ALPHA】ほとでないにしろ優秀な人間も多い。
それでも社会的になかなか台頭出来ないのは、その性衝動によるところが大きい。
《HEAT》を迎えれば、性行為以外何も手につかなくなる。
だから、その衝動を抑える薬を服用しながら社会に適合しようとする【OMEGA】は少なくない。
「あなたが離させない、の間違いでしょう。本人は抑制剤を飲んで出社したがっているのでは?」
「だから?」
「・・・・・・」
「俺がいるのに、なぜ飲ませる必要がある」
「彼は優秀です。本人に出社の意思があるのなら、尊重すべきでしょう」
「たまにならな。あれは長年に渡って薬を服用しすぎている。俺に逢うまで1度も解放したことがなかったくらいだ」
「──・・・嘘でしょう?」
「だから薬が効きづらくなって《HEAT》の時期も不安定だ。本人の意思を尊重して、結果廃人になるところなど見たくない」
「・・・・・・」
黙り込んだ秘書に、ヴァンツァーは再度告げた。
「1週間だ、アスティン」
この上司が他人の心配をしているところなど見たことのなかった男は、『諾』を返してその後のスケジュール調整に奔走した。
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おや、シェラたんが出て来ない。アスティンはアルファでもオメガでも、どっちでもアリだよなぁ。──あぁ、アスティンはオメガで、アルファなバルロとナシアスに愛されるのでもイイと思うよ!(コラ)
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