小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
明日、会社の先輩がお誕生日なので、うちの本部長が前祝に連れていって下さいました。お昼は会社近くで中華、夜はデザート、という感じで。
夜は『ぶどうの木』というお店に行きました。デセール専門店。フランス料理の最後に出てくるデザートを専門で扱ったお店です。
そこへ行った感想代わりに子ネタでも。
夜は『ぶどうの木』というお店に行きました。デセール専門店。フランス料理の最後に出てくるデザートを専門で扱ったお店です。
そこへ行った感想代わりに子ネタでも。
**********
「行きたいお店があるんだけど」
キニアンが所属するバスケ部が地区大会に出場するために、ひと月ほどデートが出来なかった。
電話やメールはするし、学校では毎日顔を合わせるけれど、物足りなかったのは事実。
だからカノンのその言葉に、キニアンは特に何も考えることなく頷いた。
しかし、行き先を聞いてほんのちょっと後悔した。
「『ぶどうの木』っていう、スイーツのお店なの」
「・・・スイーツ?」
「うん。今度シェラとソナタと一緒に行こうかと思ってるんだけど、偵察」
ふふっ、と微笑む少年はまるで少女のようで、そんな顔を見せられたら否とは言えない。
スイーツの店とはいえ軽食の類もあるだろう、と思っていたが、着いた店はデセール──デザートの専門店だった。
俺にどうしろと? と思ったキニアンだったので、アンティーク調の調度に囲まれた店内に通され、躾の行き届いた店員にメニューを渡された際、不躾かとは思ったが訊いてみた。
「あの・・・甘くないのって、ありますか?」
デザート専門店で甘くないものなんて、と少々良心が痛んだが、黒のベストにギャルソンエプロンを着けた男性店員はにこやかに微笑んだ。
「それでしたら、こちらなどいかがでしょうか?」
店員が示したのは、この店の看板商品とも言うべき一品だ。
──『スフレ・オ・フロマージュ』
たっぷりのチーズとカスタードを合わせてふんわりと焼き上げた温製デセールで、甘味を抑えているため男性にも人気の高い一品である。
「じゃあそれで」
「お飲み物はいかがいたしますか?」
「あー・・・珈琲で」
スフレ・オ・フロマージュには白ワインがついているのだが、未成年な上にあまりアルコールが得意でないキニアンは珈琲に替えてもらった。
「ぼくは、これ」
カノンがにこにこして指差したのは『フレーズ・フレーズ・フレーズ』という名の、季節のデセールだ。
苺好きのカノンは、ミルフィーユと迷っていたようだったがそちらに決めたらしい。
飲み物はアールグレイの紅茶だ。
珈琲も紅茶もデセールよりだいぶ早く運ばれてきたが、おかわりが出来るらしい。
茶器はウェッジウッド。
店内にあるキャビネットには、マイセンの皿やバカラのグラスなども飾られている。
白熱灯とランプの明かりであたたかみのある空間が演出され、静かな店内の雰囲気と相俟って耳の良いキニアンには非常に落ち着ける場所だった。
注文を受けてから作り始めるデセールを、カノンは『わくわく』と顔に書いて待っていた。
甘味はさして好まないキニアンだったが、久々に見る恋人の可愛らしい様子に緩みそうになる口許をカップで隠した。
やがて、カノンの注文したデセールが先に運ばれてきた。
スフレは焼き上げるのに時間がかかるため、冷たいデセールが先に運ばれてきたのだ。
しかし、苺と甘いものに目がないはずのカノンは、スプーンを手に取ろうとしない。
「どうした?」
「え? 何が?」
「食べないのか?」
「アリスの来るまで待ってる」
当然のような顔でそう言ったカノンに、キニアンは苦笑した。
「いいよ」
「でも」
「シャーベット入ってるんだろう? 溶けるぞ」
「うん・・・ごめんね?」
「謝ることじゃないよ」
いただきます、とスプーンを手に取ったカノンは、まずは見た目を楽しんだ。
苺とミントのムースグラッセの上に、パンナコッタ、苺のシャーベット。
ココナッツのエスプーマが綿雪のようにふんわりと盛られ、刻まれた苺とフランボワーズが散りばめられている。
エスプーマの上には、苺のクロッカン。
宝石のようにきらきらと輝くそれをスプーンで取り、ひと口。
菫の瞳まで宝石のように輝き、幸福そうな笑みが浮かぶ。
その表情だけで、味が分かるというものだ。
カリカリとした飴の食感のあとに、じゅわっ、と苺の果汁が口の中に広がる。
エスプーマは見た目通りふわっふわで口の中に入れた瞬間儚く消えていき、冷たくシャリシャリとしたシャーベットと一緒に食べると異なる食感が面白くて笑顔が零れた。
パンナコッタはミルクの味が濃く、ムースは苺の酸味が利いていて、ひと皿でいくつもの味と食感が楽しめる素晴らしいデセールだ。
やがて運ばれてきたキニアンのスフレからは、ほんのりと甘いチーズの香り。
焼きあがった直後にのみ膨らんでいるというそれは、外はサクッと焼き上がり、中はふわふわとした食感の違いを楽しめる。
「──あ、美味い」
ひと口食べたキニアンは、新緑色の瞳を丸くした。
甘さを控えたそれは確かにデザートを食べているという感覚は少ないが、品の良いほのかな甘みとあたたかさにほっとする。
焼きあがったスフレの表面が白くなっていたので粉砂糖かと思ったら、パルメザンチーズだったらしい。
これがチーズの香りをより引き立てている。
「ねぇ、アリス。ひと口ちょうだい?」
「あぁ、うん」
皿を少しカノンに向かってずらしてやると、自分のスプーンでスフレを掬ってひと口。
きらきらっ、と輝きを増した瞳に、キニアンはくすっと笑った。
「──ご満足いただけましたか?」
冗談めかしてそう言うと、天使の美貌に華やかな笑みが浮かぶ。
スフレも季節のデセールも、デセール専門店で出されるだけあって結構なボリュームがあった。
目にも楽しく胃袋も大満足な午後のひと時を楽しんだふたりは、仲良く手を繋いでファロット邸へと歩いて帰った。
そして、次の休み、ファロット一家+αふたりは、揃って『ぶどうの木』へと向かった。
異様なまでの美形集団に、品の良さが売りの店内も、騒然となったのであった。
**********
スフレは食べてないけど(笑)
どれもこれも美味しそうなのですが、さすが銀座、デザート一品に1500円は、貧乏人には痛いです・・・人の金だから美味しい(コラ)
でも、スフレは食べてみたいなぁ。
「行きたいお店があるんだけど」
キニアンが所属するバスケ部が地区大会に出場するために、ひと月ほどデートが出来なかった。
電話やメールはするし、学校では毎日顔を合わせるけれど、物足りなかったのは事実。
だからカノンのその言葉に、キニアンは特に何も考えることなく頷いた。
しかし、行き先を聞いてほんのちょっと後悔した。
「『ぶどうの木』っていう、スイーツのお店なの」
「・・・スイーツ?」
「うん。今度シェラとソナタと一緒に行こうかと思ってるんだけど、偵察」
ふふっ、と微笑む少年はまるで少女のようで、そんな顔を見せられたら否とは言えない。
スイーツの店とはいえ軽食の類もあるだろう、と思っていたが、着いた店はデセール──デザートの専門店だった。
俺にどうしろと? と思ったキニアンだったので、アンティーク調の調度に囲まれた店内に通され、躾の行き届いた店員にメニューを渡された際、不躾かとは思ったが訊いてみた。
「あの・・・甘くないのって、ありますか?」
デザート専門店で甘くないものなんて、と少々良心が痛んだが、黒のベストにギャルソンエプロンを着けた男性店員はにこやかに微笑んだ。
「それでしたら、こちらなどいかがでしょうか?」
店員が示したのは、この店の看板商品とも言うべき一品だ。
──『スフレ・オ・フロマージュ』
たっぷりのチーズとカスタードを合わせてふんわりと焼き上げた温製デセールで、甘味を抑えているため男性にも人気の高い一品である。
「じゃあそれで」
「お飲み物はいかがいたしますか?」
「あー・・・珈琲で」
スフレ・オ・フロマージュには白ワインがついているのだが、未成年な上にあまりアルコールが得意でないキニアンは珈琲に替えてもらった。
「ぼくは、これ」
カノンがにこにこして指差したのは『フレーズ・フレーズ・フレーズ』という名の、季節のデセールだ。
苺好きのカノンは、ミルフィーユと迷っていたようだったがそちらに決めたらしい。
飲み物はアールグレイの紅茶だ。
珈琲も紅茶もデセールよりだいぶ早く運ばれてきたが、おかわりが出来るらしい。
茶器はウェッジウッド。
店内にあるキャビネットには、マイセンの皿やバカラのグラスなども飾られている。
白熱灯とランプの明かりであたたかみのある空間が演出され、静かな店内の雰囲気と相俟って耳の良いキニアンには非常に落ち着ける場所だった。
注文を受けてから作り始めるデセールを、カノンは『わくわく』と顔に書いて待っていた。
甘味はさして好まないキニアンだったが、久々に見る恋人の可愛らしい様子に緩みそうになる口許をカップで隠した。
やがて、カノンの注文したデセールが先に運ばれてきた。
スフレは焼き上げるのに時間がかかるため、冷たいデセールが先に運ばれてきたのだ。
しかし、苺と甘いものに目がないはずのカノンは、スプーンを手に取ろうとしない。
「どうした?」
「え? 何が?」
「食べないのか?」
「アリスの来るまで待ってる」
当然のような顔でそう言ったカノンに、キニアンは苦笑した。
「いいよ」
「でも」
「シャーベット入ってるんだろう? 溶けるぞ」
「うん・・・ごめんね?」
「謝ることじゃないよ」
いただきます、とスプーンを手に取ったカノンは、まずは見た目を楽しんだ。
苺とミントのムースグラッセの上に、パンナコッタ、苺のシャーベット。
ココナッツのエスプーマが綿雪のようにふんわりと盛られ、刻まれた苺とフランボワーズが散りばめられている。
エスプーマの上には、苺のクロッカン。
宝石のようにきらきらと輝くそれをスプーンで取り、ひと口。
菫の瞳まで宝石のように輝き、幸福そうな笑みが浮かぶ。
その表情だけで、味が分かるというものだ。
カリカリとした飴の食感のあとに、じゅわっ、と苺の果汁が口の中に広がる。
エスプーマは見た目通りふわっふわで口の中に入れた瞬間儚く消えていき、冷たくシャリシャリとしたシャーベットと一緒に食べると異なる食感が面白くて笑顔が零れた。
パンナコッタはミルクの味が濃く、ムースは苺の酸味が利いていて、ひと皿でいくつもの味と食感が楽しめる素晴らしいデセールだ。
やがて運ばれてきたキニアンのスフレからは、ほんのりと甘いチーズの香り。
焼きあがった直後にのみ膨らんでいるというそれは、外はサクッと焼き上がり、中はふわふわとした食感の違いを楽しめる。
「──あ、美味い」
ひと口食べたキニアンは、新緑色の瞳を丸くした。
甘さを控えたそれは確かにデザートを食べているという感覚は少ないが、品の良いほのかな甘みとあたたかさにほっとする。
焼きあがったスフレの表面が白くなっていたので粉砂糖かと思ったら、パルメザンチーズだったらしい。
これがチーズの香りをより引き立てている。
「ねぇ、アリス。ひと口ちょうだい?」
「あぁ、うん」
皿を少しカノンに向かってずらしてやると、自分のスプーンでスフレを掬ってひと口。
きらきらっ、と輝きを増した瞳に、キニアンはくすっと笑った。
「──ご満足いただけましたか?」
冗談めかしてそう言うと、天使の美貌に華やかな笑みが浮かぶ。
スフレも季節のデセールも、デセール専門店で出されるだけあって結構なボリュームがあった。
目にも楽しく胃袋も大満足な午後のひと時を楽しんだふたりは、仲良く手を繋いでファロット邸へと歩いて帰った。
そして、次の休み、ファロット一家+αふたりは、揃って『ぶどうの木』へと向かった。
異様なまでの美形集団に、品の良さが売りの店内も、騒然となったのであった。
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スフレは食べてないけど(笑)
どれもこれも美味しそうなのですが、さすが銀座、デザート一品に1500円は、貧乏人には痛いです・・・人の金だから美味しい(コラ)
でも、スフレは食べてみたいなぁ。
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