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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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牛丼は吉牛だなぁ・・・すき家は安いんだけど、味からすると吉野家だよなぁ・・・

そんなどーでもいーことを考えながら、キニアンを着替えさせてみる。

**********

服を渡されたキニアンは、『これをどうしろと?』という顔になった。

「試着」

当然のような顔をしてそんなことを言ってくるヴァンツァーに、まさかいちいち着替えるのか? と思ったキニアンだ。
困惑気味の少年の考えていることなど手に取るように分かるヴァンツァーは、にっこりと笑ったものである。

「舅の言うことは聞くものだぞ」
「・・・・・・」

めちゃくちゃなことを言ってるぞこの人、と思いはしたのだが、『早く、早く』と子どものような表情を浮かべた美貌の男に、ため息を殺して軽く頷いた。
そうして、渡された服を持って試着室へと向かったのである。
さすが本職、サイズはぴったりだったのだが、着替えて試着室内の姿見を見たキニアンは、ぽかん、と口を開けた。

──・・・これは・・・何と言うか・・・

「着替え終わった~?」

ライアンの声に、どうしようか、とは思ったものの、試着室のカーテンを開ける。

「わぁお!」

碧眼を真ん丸にしたライアンは、長い睫毛をぱしぱし、と瞬かせて出てきた少年を凝視した。
店舗の中に彼氏と一緒に買い物に来ていた女性や、店の外を歩く女性たちが足を止めてきゃーきゃー言っている。
色味は決して派手ではない。
モノトーンで纏めている。
スーツはグレー、銀色のピンストライプが入った黒いYシャツは、開襟タイプでくっきりと浮かんだ鎖骨が見える。
足元は蛇皮の靴だった。

「──ホストだね」

ぱちぱち、と手を叩いているライアンは、背後にある姿見をちらっと見て自分の服装を確認しているキニアンに笑顔を向けた。

「『物慣れない感じがイイ』って言う有閑マダムからの指名がすごそう」
「・・・・・・あんた、面白がってるだろう」
「えー、かっこいいと思うよ?」

ほら、ときゃーきゃー騒いでいる女の子たちに視線を向ける。
非常に居心地の悪い思いをしているキニアンは、「あの・・・」とヴァンツァーに目を向けた。
顎に指を当ててキニアンの様子を観察していたヴァンツァーは、僅かに首を傾げた。
思わず不安になったキニアンである。

「・・・俺、変ですか?」
「他人がデザインした服だろうと、似合わないものは渡さない」
「あ・・・すいません」

思わず謝ったキニアンである。
玄人に暴言を吐いてしまった、と反省するキニアンに、しかしヴァンツァーは「間違えた」と呟いた。

「・・・ヴァンツァーさん?」
「普通にかっこ良くなったな・・・」

なぜか少し残念そうな表情になるヴァンツァーが一体何を目指しているのか、知りたいような知りたくないような気分になったキニアンだ。

「普通にかっこ良くちゃダメなんですか?」

訊ねてくるライアンに、ヴァンツァーは至極真面目な顔をして頷いた。

「カノンは、口にしないだけでキニアンのことを『かっこいい』と思ってるんだ。『かっこいい』なんてことは分かり切ってるんだよ」
「──あぁ、そうか。『普通に』かっこいいのなんて、当たり前なんだ」
「そういうことだな」

納得、納得、と頷いているライアンとヴァンツァーに、キニアンはおずおずと声をかけた。

「あの・・・俺はいつまでこの格好をしていれば・・・?」

何かこういうのはちょっと・・・と困惑顔の少年に、ヴァンツァーは不思議そうな顔を向けた。

「次の服が決まるまで」

何を言っているんだ、という顔をしているヴァンツァーに、キニアンはぽかん、としてしまった。
そうして、茫然としている少年に背を向けると、さっさと店員に限度額のないカードを渡して決済してしまった。

「──わ、え、ちょ・・・! ヴァンツァーさん、何やってるんですか?!」
「買い物」
「見れば分かります! 何で買ってるんですか!!」

これには首を傾げたヴァンツァーだ。

「買い物に来たから」

それ以外に何が? という表情の男に、キニアンは頭を抱えそうになった。

「・・・いくらですか」
「いらない」
「そういうわけにはいきません」

はぁぁぁ、と深くため息を吐く少年に、最年長の男はちいさく微笑んだ。
その微笑みにも、きゃーきゃー言っている女性たちが山のようにいた。

「シェラみたいだ」
「──え?」
「シェラも、昔よくそう言っていた」
「・・・・・・」

あなたそんな頃から浪費癖があったんですか、と思っても口にしなかったキニアンであるが、正直だからしっかりと顔に出ている。
シェラ辺りが聞いていたら、「でしょう?!」と同調するに違いない。

「本当に、いいんだ。──きっとカノンが喜ぶから」
「──・・・」

新緑色の目を瞠ったキニアンである。

「悪いが、お前のためじゃない」

これを聞いて、キニアンは逆にほっとした。
そうして、苦笑したのである。

「・・・かっこいいなぁ」

カノンやシェラが、何だかんだ言ってヴァンツァーのことが大好きだという理由が、少し分かった気がする。
これだけ深く愛されて、動かされない心なんてない。

「──さ。次だ」
「え、まだ何か見るんですか?」
「言っただろう? それだと普通にかっこいいんだよ」
「・・・・・・」

『普通』じゃないかっこ良さってどんなだろう、と不安になるキニアンを尻目に、ヴァンツァーとライアンは次の服装の候補についてあーでもないこーでもないと意見を交換していたのである。


**********

まだ続くんだと思われる。

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