小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
かっこいいヴァンツァー、書けるんだからね!
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「ロッドはあるか?」
宵闇の中、5人の相手を前にして隣の男に問われる。
「あるが」
「貸せ」
簡潔な言葉に、眉宇を顰めた。
「なぜ?」
理由はいくつかある。
「そいつらの狙いは私のようだが?」
ひとつはそれ。
「その女を置いていけ」という陳腐な台詞を投げてきた男たちの手には、アクションロッドやナイフ。
5人の武装した人間に迫られたら、普通は恐怖を感じるのだろうが。
「ならば私が相手をするのが筋だろう」
「まぁ、それでも構わんが」
こちらに視線ひとつ向けず、軽い嘆息が漏らされる。
「俺を排除しようとしているのに他人に任せるのは、何となく気分が悪い」
それは分からないでもない。
しかし、それにしても、だ。
「ロッドが必要か?」
それがふたつ目。
たった5人、それも訓練を受けた暗殺者や軍人でもないのに、この男に得物が必要だとはとても思えない。
私にすら必要ない。
体術でも十分だし、相手の得物を奪ってもいい。
「あまり痕跡を残したくない」
「痕跡?」
「無手で相手の服や身体に指紋や体細胞が残るのを避けたい」
「正当防衛だろう?」
「見るものがいればな」
「は?」
「さっさと無力化して帰る」
何となく、察せられた。
「・・・課題か」
「まだレポートがいくつか残っている」
真面目というか、もう一種の病気だと思うほどに単位を取り漁っている男は、驚異的な頭脳と集中力で学園創立以来の秀才の名を恣にしている。
「・・・まぁ、いいが」
ポシェットから手のひらより少し大きい程度に収納されたロッドを取り出し、一歩前にいる男に渡した。
ざわり、と数歩先にいる男たちが構える。
空気を通して緊張感が伝わるが、無論、私の前にいる男にそんなものはない。
「お前が抜かれたら、私が無手で戦うことになるな」
ふと思う。
そうすれば、この男の言う『痕跡』が残る可能性がある。
私の言葉に目の前の、恐ろしく整った顔の男は、目を丸くして軽く首を傾げた。
どこか可愛らしさすら感じる仕草に眉が寄る。
「・・・何だ」
「まぁ、いい」
呟いた男は、カシャン、と軽い音をさせてロッドを伸ばした。
それからは、何というか・・・。
「帰るぞ」
縮められたロッドが手元に返ってくる。
強いか強くないかで言えば、化け物みたいに強い男だ。
私よりも速く、私よりも力強く、──私よりも技巧が高い。
倒れ伏す男たちのように無様に負けるとは思わないが、勝つイメージはまったく湧かない。
「連邦大学惑星は、安全な星と聞いていたがな」
私たちにとってはどうということはないが、これが力のない少女や女性を対象にしたものであったならば。
「声が掛けられるだけ、安全だろう」
背後から忍び寄り、有無を言わさず昏倒させて連れ去る。
本気でやるならその方が確実だ。
「知能が低く、自分の力を誇示したい小物は湧いて出る」
「能ある鷹は爪を隠す、か」
「隠すわけではないと、俺は思うがな。本当に優秀なものにとって、それは『当たり前』なだけだ」
はた、と気づいた。
「・・・悪かった」
「何が」
「決して侮辱したつもりはない」
「だから何がだ」
立ち止まった私に合わせて歩みを止めた男の顔が見られない。
「その・・・別に、お前が負けると思ったわけではないんだ」
先程の、怪訝そうな表情。
それはそうだろう──突破されるわけがない。
万を超える訓練された軍人相手の戦場ですら、返り血ひとつ浴びず淡々と剣を振るう男だ。
「お前は、守りやすい」
「──は?」
私の謝罪に対する返答でも何でもなく、そんな言葉が返ってきた。
「下手に騒がず、動かず、余計なことをしない」
「・・・」
これは、逆に馬鹿にされているのだろうか?
「定点を守備するのは、さほど大変なことではない」
それが、この男にとっての『当たり前』。
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どう終わらせたらいいか分からなくなったので、この辺で。
な? 戦ってるヴァンツァー、かっこええやろ?
4月1日はうちのヴァンツァーの誕生日。今年は忘れなかったけど、小ネタを書いている時間はないのでそれはまた今度ね。
今、頭の中は『ホストと花屋』設定のヴァンシェラで埋め尽くされています。
今、頭の中は『ホストと花屋』設定のヴァンシェラで埋め尽くされています。
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「──お嬢ちゃん、その時計売ってくんない?」
幼馴染の働く店に花を活けに来たシェラは、そんな風に話しかけられた。
金茶色の髪の、シェラの幼馴染に比べると小柄な青年だ。
大きめに開けられたシャツの襟からは、金鎖のネックレス。
3つも4つも開いているピアスが軽薄そうな印象を与えてくる青年ではあるが、意外と後輩の面倒見は良いらしい。
「え? これですか?」
少女のように華奢な手首につけるには、ちょっとゴツめの腕時計だ。
「うん、即金で100万出すぜ」
「──ひゃっ?!」
文字通り飛び上がったシェラは、ガタガタ震えながらつけているのとは反対の手で腕時計を擦った。
「な?」
可愛らしい笑顔を浮かべる青年に、シェラは真っ青な顔でふるふると首を振った。
「えー、じゃあ120出す」
「~~~~~っ!!」
もうほとんど泣いているシェラだった。
軽く編んだ銀の髪がパシパシと頬を叩くくらい、勢いよく頭を横に振っている。
「んー、じゃあひゃくご──」
──パコン。
「いてっ」
軽い音がして、金茶の頭を押さえる青年。
「馬鹿か、お前」
腰にくるような低音の美声。
艷やかな漆黒の髪に、青い瞳、白皙の美貌は女にもないような色気がダダ漏れている。
「何だよヴァッツ」
「おいシェラ、こいつには売るなよ」
長身の幼馴染を見上げたシェラは、慌てて腕時計を外した。
「か、返す!」
「は?」
「返す!」
きっちりと着こなしたスーツに押し付けるようにして時計を渡すと、藍色の瞳が思い切り嫌そうな表情を浮かべた。
「いらん。もう飽きた」
「じゃあヴァンツァーからレットさんにあげればいいでしょう?!」
「こいつにはやらん」
「わ、私そんな高いのもらえない!!」
じわっ、と菫色の瞳に涙を浮かべたシェラを見遣り、ヴァンツァーは幼馴染の天使のような顔の前に腕時計をぶら下げた。
そして。
「──うわわっ!!」
手を放すと、磨かれた床へと真っ逆さま──に落ちる前に、どうにか掴み取ることに成功したシェラだ。
「拾ったなら、責任持って自分で処分しろ」
「なっ! 今のは」
「俺はいらん。レティーにもやるな──いや、売るならさっきの5倍以上にしろ」
「ご──?!」
「まぁ、それでもお得だけどな」
「~~~~~っ!!」
どうすればいいのか分からず、泣きそうな顔で幼馴染を見つめ続けるシェラなのであった。
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ほんとはもっと書きたい。このヴァンツァー好き(笑)
思い浮かんだ小ネタは仔竜シェラがひたすら可愛いだけの話・・・プレ14周年に4話目を書いて、もう1年以上経ってるとか嘘だろ・・・。
あ、生きてますよー(笑)
あ、生きてますよー(笑)
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シェラは、ヴァンツァーのことが大好きだ。
洗濯をしているときも、森へ狩りに行くときも、どこへ行くにもちょこまか、ちょこまかと、足元に纏わりつくようにしてくっついていく。
ヴァンツァーの方も表情は変わらないが邪険にすることもなく、好きなようにさせていた。
──けれど。
「いやっ! チェラもいク!!」
大きな瞳にぷっくりと涙を溜め、シェラはヴァンツァーの足元に縋った。
少し困ったような表情になった男は、しゃがみ込んで銀色の頭を撫でた。
「街に買い物に行くだけだ。すぐに戻る」
肉は山で、魚は川で獲り、野菜は庭の畑で育てる自給自足の生活をしてはいるが、必要になるものはある。
小麦や油、塩や石鹸などは時々買い出しが必要だ。
「チェラもちゅれテって!」
いやいや、と頭を振った拍子に涙が零れ、地面に落ちる直前に石となる。
透明度の高い水晶に、銀砂を混ぜたような美しい宝石。
この泪銀石ひと粒でも売ればしばらく遊んで暮らせる金額になる。
そのせいでシェラは以前人間に捕まり、無体を働かれそうになった。
「お前は、連れて行けない」
大好きな人からの否定の言葉に、シェラは顔を真っ青にした。
「やぁ・・・」
「せめて、その眼を隠せるようになるまでは」
「め・・・?」
「人前で泣くものダメだ」
「・・・」
「俺はお前の騎士だ。必ず護る──だが、わざわざ自分から危険に飛び込むことはない」
つるりと滑るような手触りの良い銀色の髪を、宥めるように撫でる。
じっと藍色の瞳を見つめるシェラの瞳は竜族特有の瞳孔をしていて、人間とは明らかに異なる。
目深にフードを被っても、何かの拍子に露見することはある。
「ふふ、かぁわいい。ねぇ、別に僕が街に行ってもいいんだけど」
ルウが善意から言えば、ヴァンツァーは呆れたような表情になった。
「あんたは歩くだけで妙な連中を引っ掛けるからやめろ」
「酷くない、その言い草!」
心外だ、とばかりに頬を膨らませるルウに、リィが「黒すけの言う通りだ」と告げる。
「道を聞いただけでお前を取り合う男どもが刃傷沙汰になるのは目立つからやめろ」
「僕のせいじゃないよ!」
真珠のような肌をした嫋やかな美貌の竜騎士は、黒髪であるにも関わらず男の欲を煽る独特の雰囲気があった──むろん、大の男が十人束になって掛かったところで、返り討ちに遭うだけだが。
むしろ、ルウに向かって行ってくれるならまだいいのだ。
問題は、被害が周囲に及ぶ可能性が非常に高いことにある。
「そうだ、土産を買って来てやる」
「みやげ・・・?」
ヴァンツァーの言葉に、シェラは瞳を瞬かせた。
「贈り物、プレゼント・・・分かるか?」
「──プレゼント! たんじょウびに、父様と母様がくれル!」
ぱぁぁ、と明るくなる表情に、ヴァンツァーは苦笑を返した。
「竜王たちが贈るようなものは無理だが・・・何が欲しい?」
「なんデもいい」
「何でも?」
「ヴァンツァーがくれルものなら、なンでも、うれチぃ!」
ぎゅっと首に抱きつかれた男は、その美貌にほんのりと笑みを浮かべた。
「そうか。じゃあ、いい子で待っていられるな?」
「・・・ヴァンツァー、けが、チないでかえってきテね?」
これには男が藍色の目を瞠った。
「チェラ、いっチょにいケないから・・・」
不安げに震える声。
契約を結んだ竜が傍にいれば、竜騎士はほとんど無敵だ。
だが、契約を結んだばかりで距離が離れれば、力を出し切ることは難しいだろう。
「ヴァンツアーがいタイの、やぁ・・・」
「大丈夫だ」
心配そうに眉を下げる己が竜に、ヴァンツァーはどこか晴れやかな表情で告げる。
「お前の騎士は、そこそこ強い」
強くなり過ぎて、人間相手には加減が難しい程度には強い。
「・・・」
まだじっとヴァンツァーの顔を見つめていたシェラは、「ちゅっ」と頬にキスをした。
「──シェラ?」
「おまじナい」
「まじない?」
「ブじに、かえっテきましゅヨうに。父様と母様がしてクレりゅ」
へへっ、とはにかむように笑う仔竜の頭をもう一度撫で、ヴァンツァーは神竜の結界を出た。
+++++
「──何だ、また見ているのか」
背後から届いた低い声に、シェラは指先で弄っていた氷塊を机に置いた。
氷塊と言っても、竜の魔力で創られた溶けることのないそれは、水晶のように透明で、金剛石のように強固だ。
「ヴァンツァーが、初めてくれたものだから」
氷塊の中には、飴色をした魚が一匹──否、事実それは飴だった。
シェラを置いて買い出しに行った男が買ってきたもののひとつ。
きらきらと陽に輝くそれをいたく気に入ったシェラは、甘い食べ物だと言われたにも関わらず、飴細工を氷に閉じ込めた。
「だいジにシゅりゅ!」
感激して抱きついてくる仔竜を困惑した表情で抱き上げた男は、微笑ましげに見てくる神竜の騎士に街で買ってきたものを渡した。
「ご苦労様」
「あぁ。ルーファス、これを」
ヴァンツァーは腰に下げた革袋から、大人の拳大の石を渡した。
「──え、僕に?」
驚くのも当然、ヴァンツァーが手渡したのは、一見所々緑がかった石ころだが、緑柱石の原石だ。
「いや、加工してくれ」
「・・・シェラにだね?」
訊ねられた男は「それ以外に何が?」という不思議そうな表情を浮かべた。
「どうしたのさ、この石」
「露天で売っていた?」
「──はぁ?! これ、たぶんインクルージョンほとんどないけど?!」
「だろうな。魔力の伝導率がだいぶいい」
ルウの驚きように、シェラは不安げな顔になった。
「・・・あの、高価なものなのですか?」
リィとルウには竜語で話しかける幼子に答えたのは、抱き上げている男だった。
「いや、お前が凍らせた飴と同じくらいだ」
「嘘でしょ?!」
「本当だ」
「・・・きみ、本当にこういう掘り出し物見つけるの上手いよね」
緑柱石はやわらかい鉱物だ。
だから、傷や内包物が含まれるのは当たり前。
それらが少なければ少ないほど宝石としての価値が上がり、更に魔道具の媒介としての性能も上がる。
「ルーファスに守護の陣を刻んで、首飾りや髪飾りに加工してもらうといい」
飴だけでは食べたらなくなるかと思い別のものも探した男だったが、思いがけず良い買い物が出来て満足そうだ。
「・・・ヴァンツァー」
「ん?」
「ほんトに、コウかじゃない?」
「もう少し値の張るものの方が良かったか?」
この問いかけに、シェラはふるふると頭を振った。
「チェラ、おルしゅばん、チてたダケなのに・・・」
綺麗な飴細工だけでも十分なのに、と不安げな表情を浮かべる。
「礼だ」
「おレい?」
「まじないをかけてくれただろう? だから、無事に帰って来られた」
珍しく目元をやわらげる己の騎士に、シェラは菫色の瞳を真ん丸にした。
「あんなの、あなたにキスしたいだけの方便だったのに」
くすくす、と昔を思い出してシェラは笑った。
「そうか。じゃあ、悪い子には罰として──その氷を溶かしてしまおうか」
「──だ、ダメです!!」
飴細工の入った氷塊を両手で握りしめ、シェラは背後を振り返った。
竜騎士となったヴァンツァーが操る炎なら、永久凍土の氷すら溶かしてしまう。
むぅっと、頭上の美貌を睨んだシェラだったが、目の前にぶら下げられた宝石に視線が寄る。
「直ったぞ」
直したのは僕だけどね、と、神竜の騎士がこの場にいたら呆れたように言うことだろう。
「わあ!」
受け取ったシェラは、一瞬前と打って変わって嬉しそうだ。
「見た目は直ったが、一度発動した魔道具にはもう効力を戻せない」
「いいんです!」
つけて、つけて、とねだる視線を向ければ、ヴァンツァーは呆れたような顔で緑柱石の首飾りを受け取り、シェラにつけてやった。
邪魔にならないよう持ち上げていた長い銀髪をおろし、シェラは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう!」
「ただの石だぞ?」
宝石としての価値も相当高い石だが、魔道具として役に立たないものを身に着けていても仕方がない、というのがヴァンツァーの考えだ。
「ただの石じゃありません! ヴァンツァーがくれた石です!」
「似たような石があれば、また作ってやる」
作るのは僕だけどね! という声が聞こえてきそうだ。
「ヴァンツァーがくれるものは、みんな大事なんです!」
どうして分かってくれないの? と、頬を膨らませるシェラに、ヴァンツァーは首を傾げた。
「俺には、お前が無事でいてくれることの方が大事だよ」
こつん、と額を合わせられ、シェラは焦点の合わないくらい近くにある美貌に目を丸くした。
怒り、焦燥、それから安堵。
普段表情に出ないヴァンツァーの感情が、胸を揺さぶった。
「伝わったか?」
こくっ、と頷いたシェラを頭を、ぽんぽん、と叩く大きな手。
「元気なのはいいことだが、お転婆も程々にな」
ちいさく笑うと、ヴァンツァーは部屋を出ていった。
残されたシェラは、紅く染まった頬を両手で押さえて、唇を尖らせた。
「・・・飛ぶのが下手なのは、ヴァンツァーのせいですよ」
父様と母様に笑われてしまう、とため息を零しつつも、力強い腕に抱き上げて運んでもらうのも大好きなシェラが自由に大空を飛べるようになるのは、もう少し先の話。
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瞳孔を隠せるようになったら、人前で泣かなくなったら、ひとりで空を飛べるようになったら。
一緒に出掛けられるようになるには色々クリアしないといけないけれど、甘やかされるのも、お土産を買ってきてもらえるのも捨てがたくて、なかなか大人になれないシェラさんなのでした。
・・・すぐに「子作りしましょう!」とか真っ昼間から言い出す子になるけどな!(笑)
仔豚ちゃんが好きだったのか。何だよ、もっと早く言えよ(コラ)
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「あねうえーーーー!」
声が聞こえた途端、テーブルに置かれた花瓶の中の蕾が一斉に開花した。
それまでは少し寂しい印象のある茶会の席が、一気に華やいだものとなる。
どうやら義弟は最愛の女性を誘うことに成功したらしい、と王太子妃は口端を持ち上げた。
「義姉上、シェラを連れて来たよ」
「よくやった」
ワシワシと癖のある黒髪がグシャグシャになるまで撫でられている王子は、嬉しそうな顔をしている。
「王太子妃殿下におかれましては、ご機嫌麗しく」
「なぁ、シェラ」
女性にしては張りのある低めの声に、下げていた頭を上げるシェラ。
燃えるような見事な赤毛は邪魔にならないよう軽く結んで背に流されている。
メリハリのある身体は、深紅の軍服に包まれており、その腰の剣は飾りではない。
彼女は王太子と比肩するほどの剣の腕を持つ。
「はい、妃殿下」
「これは私的なお茶の誘いなんだが」
「はい。わたくしのようなものにまでお声がけいただき」
「いや、そうじゃなくてな」
「はい?」
首を傾げる天使の如く清廉な美貌にため息を零す。
不興を買ったか、と一瞬顔を強張らせたシェラであったが、袖を引かれてそちらに視線を移す。
「『あねうえ』って、呼んで欲しいんだよ」
「──え?」
「シェラにも」
「ですが・・・」
そのような立場にないシェラは、王子と王太子妃の顔を交互に見遣った。
「何だ。きみはまだこの子のプロポーズにうんと言っていないのか」
「・・・」
何と答えて良いものか、と口を噤んだシェラの横で、王子は「いいんだよ、義姉上」と言った。
「きっとわたしには、まだまだ魅力が足りないんだと思う」
いえ、もう十分です、とは思っていても口に出せないシェラだった。
不敬を恐れずに言えば、こんなに美しく成長して欲しくはなかった。
『白豚』と呼ばれていた頃のままであったならば、きっと自分は喜んで頷いた。
このやさしい第二王子の魅力など、世界で自分だけが知っていれば良かった。
獣捕りの罠にかかって怪我をしていた仔犬を助け、「ごめんね、もう大丈夫だよ」と涙を流していた王子の美しさなど、他の誰も知らなくて良かったのだ。
ほんの少し、健康のために身体を動かして欲しくて乗馬や剣術を勧めはしたが、どちらも一流の腕前になってしまい、しなやかで強靭な長身まで得てしまった。
その上、本ばかり読んで引き篭もっていた名残で語学は堪能、チェスは優れた軍師でもある王太子が本気を出すほど。
──そういえば父が言っていた。
「第二王子殿下は、無知かも知れないが馬鹿ではないよ。むしろ優秀な方だ」
あの父が言うのだから、そうなのだろう。
「そして、お前の言うような無垢な方でもないと、私は思うがね」
その言葉には承服しかねたので無視したが。
「だから今はね、世界一イイ男を目指しているんだ!」
王太子妃付きの侍女がお茶の用意をする間、王子はテーブルに並べられた菓子のどれから手をつけようかと目移りしている。
「ははっ。世界一か。──だがそれはちょっと難しいな」
「どうして?」
きょとん、とした表情で首を傾げる義弟に、平素は灰色の瞳に金色を帯びさせながら王太子妃は肉食獣のような笑みを浮かべた。
「世界一は、我が夫だからな」
言われた王子はパチパチと瞬きをしたあと、「確かに!」と破顔した。
「兄上は、強くて、やさしくて、かっこ良くて、頭も良くて、強くて──あれ? とにかく、何でも出来るすごい人です」
自慢の兄上だ、と我が身の誉れのように嬉しそうな表情になる第二王子を、シェラは微笑ましげに眺めた。
この王子の口から出てくる名前が増えたことは、寂しくも嬉しい。
どこか怯えたような、哀しそうな表情よりも、明るく笑ってくれている方がいい。
──そう、思うのに。
こんな醜い心の内を知れば、やさしい第二王子は自分を見限るだろうことが分かるシェラだった。
綺麗なのは見た目だけ──かつての王子とは真逆だ。
美しい心に美しい見た目も手に入れた王子は、きっとこれから本当に天使のように愛らしい姫君と出会うのだろう。
強大な魔力が恐れられていたとしても、それは心身の成長とともに制御出来るようになっていく。
力を暴走させることがなくなれば、誰も王子を避けはしない。
「──ねぇ、シェラ」
「──は、はい!」
隣から声を掛けられ、はっとする。
「団長から一本取れたら、兄上が手合わせしてくれるんだ」
「え?」
「まだまだ先の話かもしれないけど。でも、兄上からも一本取れたら、デートしてくれる?」
「で、デート・・・ですか?」
「うん。王宮の薔薇園とか、遠乗りとかじゃなくて。城下町へお忍びデート」
「殿下、それは」
「シェラのことは、わたしが守るよ」
「・・・」
だから安心してね、と微笑まれて、返す言葉に窮する。
自分の身はもちろん、王子の身を守りきる自信もある。
お忍びとはいえ、近衛も何人かついて来るのだろう。
けれど。
「・・・殿下、わたくしは」
「それなら、私も稽古をつけてやろうか」
王太子妃の申し出に、シェラはぎょっとした。
「義姉上が?」
「ちょっと暇だったんだ。騎馬戦では圧倒的に私が有利だが、剣一本ならいい勝負が出来そうだろう?」
腰に剣を佩いている王太子妃だが、一番得意としているのは馬上での槍術だ。
これに関しては、万能の天才と言われる王太子でも常勝とはいかない。
「ありがとう!」
「なに、可愛い義弟のためだ」
「・・・」
これはもう、断れる雰囲気ではない。
シェラはこっそりとため息を零し、「承知しました」と返した。
副官であるアスティンとはそこそこいい勝負が出来るようになってきた王子ではあるが、団長にはまだ及ばない。
王太子に勝つなど、まだずっと先の話だ。
「約束だよ、シェラ!」
「はい、殿下」
苦笑を返したシェラは、王子の実力はもとより、王太子妃の強さも、正確には把握していなかったのだ。
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王子は成長期なのです。
ったら、楽しいな。
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──その日、大国タンガの王太子は『宝物』を手に入れた。
ザワザワというよりは、ガヤガヤ。
あまりにも執務室の外が騒がしくて、この国の第一王子──王太子は、山のように積まれた決裁書を捌いていた手を止めた。
「・・・何だ?」
賊にしては、人の声が煩いだけで剣戟の音や魔法を使う気配はない。
ただ、ドスドスと人の足音がする。
──お待ち下さい!
──ここから先は!
口々に制止の声をかけるのは衛兵だろう。
王太子の執務室まで乗り込んでくる骨のある大臣の顔も、いくらか思い浮かぶ。
さて、財務か軍部か。
宰相は有能極まりないが、害になりそうな人間はあえて排除しない。
そんな輩は、わざわざ手を下さなくても勝手に自滅する。
本人の言だが、己の手を下しはしなくとも巧妙に誘導はしているだろう、と王太子は見ていた。
「──で、殿下?!」
悲鳴のような声が部屋の外から届く。
呼ばれたら、出向かないわけにはいかないだろう。
王太子は若干面倒くさそうにしながらも、内から扉を開けさせた。
「どうした、随分騒がし──」
執務室から一歩出た王太子は、まず思ったよりも扉の前に人がいなかったことに眉を寄せた。
ではなぜあんな騒ぎに、と思い、ざわめきの中に荒い呼吸音を聞き取って視線を下げた。
「──お前」
太陽の下では金にも見える琥珀色の瞳が瞠られる。
王太子は、濃い色の髪と浅く日に焼けた肌、よく鍛えられた長身の美丈夫だ。
女が10人いたら確実に10人が振り返り、ほぼすべてが恋をするだろうほどの美形だった。
「護衛必要ですか?」と近衛に言われるほど武芸に秀で、王立学院の教授たちが諸手を上げるほどの秀才。
性格は鷹揚だが決断は早く、よく笑うが沈着冷静。
『完全無欠』と評される男は、足元の大きな塊に目を瞬かせた。
「あ、あに・・・あに、うえ・・・」
ぜぇはぁ、などという可愛らしいものでは済まない大袈裟なほどの過呼吸を繰り返すのは、お菓子が大好きな彼の弟。
では先程の『殿下』は彼のことか。
「あに・・・うえ」
一国の王子が、床に這いつくばり、助けを求めるように手を伸ばす。
どう見ても行き倒れだ。
しかし、周囲の兵士の誰一人として、第二王子に手を貸そうとはしなかった。
「よお、どうした?」
よいしょ、とぐったりしている弟を、うつ伏せの状態から仰向けにする。
白い額には汗がびっしりで、王太子は眉を寄せた。
何かに追われてきたのだろうか、だがそれにしては周囲の兵士が戸惑ったような顔しか見せないのが気にかかる。
「あに・・・あに、うえに・・・お、お願い、が・・・」
「──お願い?」
弟の持つ魔力が、人の身には大き過ぎるものであることを、王太子はよく理解していた。
意図的に使えば、それは万の軍にも匹敵するだろう。
その力から『化け物』と、その見た目から『白豚』と呼ばれることも、知っている。
「珍しいな。で? 何だってそんなに息切れしている?」
「は、はし・・・走って」
「走って?」
王族としては、たとえ王城内であろうと褒められた行為ではない。
けれど、王太子はまた「珍しいな」と呟いた。
「飛んで来なかったのか」
第二王子が、水差しやお菓子の籠ですら宙に浮かせて動かすことはよく知られている。
彼自身も、移動の際に歩かないことも。
それがなぜ、と思った王太子の眼下で、藍色の瞳が瞬く。
「飛んで・・・とん・・・──飛んでぇぇぇぇぇ!」
──ビシャーーーーーンッ!!
明るい真昼にも関わらず一瞬外が強い光に満たされ、次いで空気を震わせる轟音。
訓練された兵士はもちろん、大抵のことには動じない王太子でもさすがに肩を揺らして窓の外を見遣る。
そうだその手があった! と言わんばかりの絶望した表情で額の上に自分の腕を置く王子。
王子の動揺が招いた現象だろう、と兵たちは顔を見合わせた。
「・・・で? お前さんは、何だってそんなに慌てて?」
内心を押し隠した王太子に、白い顔を青褪めさせた第二王子は告げた。
「う、うま」
「馬?」
「馬が、欲しいのです」
「・・・羽が生えてたり、角がついてたりするやつか?」
「え? いえ、普通の」
「普通の?」
「はい、普通の馬が欲しいのです」
どうしたら良いのでしょう? とまだ整わない息の向こうから不安そうに訊ねる王子。
琥珀色の瞳を瞬かせた王太子は、首を傾げた。
「馬、怖いって言ってなかったか?」
「あの、てんし──」
「──天使?」
青かった顔を一気に紅くして口を押さえた弟の言葉に目を丸くした王太子は、横たわった大きな身体を持ち上げた。
ざわめく周囲に、視線だけで「持ち場に戻れ」と指示する。
立たせようとしたのだが、へにゃへにゃと脚に力が入らない様子の弟にそれを諦め、壁に凭れさせる。
「あの・・・シェラ、シェラ・ファロット伯爵令嬢が・・・」
「シェラ嬢が、馬欲しいって?」
「欲しいというか、馬に乗りたいと・・・」
「ふぅん」
何だかにやにやしている超絶美形の兄の顔を直視出来ず、王子は俯いた。
この兄には、邪険に扱われたことがない。
積極的に関わろうともしていなかったかも知れないが、表でも陰でも罵られたことはない。
それに勇気を得ての行動だったが、無謀だったろうか?
「いいぜ」
「──え?!」
「話聞かせな」
立ち上がった王太子は、今度は弟を立たせようとはせず、そのまま抱き上げた。
「うわっ! うわわ!!」
窓の外が強風でガタガタ言っているのも、きっと王子の動揺の現れだろう。
王太子は子どもを抱き上げるようにするとそのまま自分の執務室へ入ろうとする。
──あれが持ち上がるのかよ。
どこかから聞こえてきた声に王子の丸い身体がビクリと震える。
一瞬立ち止まった王太子は、声のした方にほんの少しだけ視線を流して答えた。
「──俺の女房より軽いぜ?」
表情は笑っているのに視線が冷たくて、兵士たちは顔を真っ青にした。
+++++
「よお、アイアン・メイデン」
正面からかけられたその言葉に、シェラは脚を止めた。
そうして真っ直ぐこちらに向かってくる偉丈夫に、美しい笑みを向けた。
「まあ、近衛騎士団長様。ごきげんよう」
完璧な淑女の礼を取る伯爵令嬢に、団長はその男らしい顔を顰めた。
「・・・やめろ、お前に丁寧に挨拶されるとムズムズする」
「酷い仰っしゃりようですこと」
ぷん、と軽く頬を膨らませる様子も大層可愛らしいが、団長は鳥肌の立つ腕を擦り、彼の一歩後ろにいる副官は仕方なさそうに笑っている。
「本当にやめろ」
「お言葉そっくり返します」
一気に冷たくなる声音と視線。
背後からかけられた声であれば無視したものを、と忌々しげに団長を見遣る。
「漁食家の団長があのような暴言を淑女に吐くなど、知られたら遊び相手もいなくなりましょう」
「いや、淑女とか・・・」
「何ですか?」
虫けらでも見るような態度に、団長は大仰に肩を竦めた。
「お前は、本当に見た目と中身が伴わんな」
「余計なお世話です」
「黙っていればふるいつきたくなるような美女だというのに」
「──そういえば、殿下に余計なことを吹き込みましたね?」
冷たい、どころではない。
それはもう殺気だった。
反射的に身構え剣の柄に手をかけようとした団長の喉元に、ピタリ、と細剣の切っ先が突きつけられる。
抜刀の瞬間すら目に入らなかった。
「・・・おいおい。さすがにそれはまずいだろう」
「見られなければ良いのです。で? 殿下にいらぬことを吹き込んで、何が目的です」
「いらぬこと?」
「とぼける気ですか」
「そんなつもりはない。何のことだ」
「殿下に言われたのです──ドレスの下に隠している武器について教えてくれ、と」
凍てつくようなシェラの視線に晒された団長は「ほんとに言ったのか・・・」と愕然とし、副官は「春ですねぇ」と呑気に笑みを浮かべている。
「わたくしの立場はあくまであの方の話し相手です。それなのに・・・あの方は『やっぱり自分みたいな化け物には教えてもらえないのかな』と哀しそうな顔をなさるのです」
その時のわたくしの気持ちがあなた方に分かりますか? と。
きつく睨みつけながらも、その紫水晶のような美しい瞳には涙が浮かんでいる。
「まぁ・・・何だ、その・・・殿下も男だからな」
「男だから何だと言うのです。男はみな武器に興味を持つとでも仰っしゃりたいのですか?」
「そりゃあ持つだろう。若く健康な男子なら」
「殿下には知る必要のないことです」
「そんなわけなかろう! お前は殿下の気持ちを弄ぶ気か!」
「なぜわたくしが!!」
一触即発の様相を呈するふたりの横で、副官は懐疑的な顔つきになった。
「ふたりとも、ちょっと待って下さい」
ギンッ、と鋭く睨みつけられるが、そんなものはどこ吹く風。
いちいち気にしていたら、腕も家柄も抜群のエリート集団のくせになぜか悪ガキの溜まり場のようになっている近衛の副官(オカン)などやっていられない。
「あー。殿下は素直ですからね。団長の言葉を、そのまま伝えたのでしょう」
「・・・どういうことです」
「刺さないと約束して下さいます?」
「刺されるような内容なのですか」
「むしろ、わたしとしては女性の耳に入れたくない内容ですね」
「・・・殿下に何を言ったのです」
「シェラ嬢の考えるドレスの下の武器とは、その手にお持ちの細剣やナイフ──まぁ、暗器類のことでしょう?」
「それ以外に何か?」
「は? ナイフ?」
「団長はお静かに。軍のエリート集団とはいえ、近衛も若い男の集まりですからね。隠語と言いますか・・・つまり、ドレスの下の武器とは、女性の肉体のことですよ」
菫色の瞳が零れ落ちそうに見開かれる。
「特に若く美しいご令嬢であれば、その美貌や肉体は社交界でのし上がり生き抜くための武器となりますからね。それを自分の前に曝け出して欲しいという、まぁ、砕けた口説き文句です」
「・・・殿下は、その意味を・・・?」
「どうでしょうかね。ミステリアスな女性を口説くときの言い回しを教えただけで、解説はしてませんから」
「それならばあの方は──」
耳元でささやかれた言葉を思い出し、息を呑む。
ブワッ、と頬が熱くなる。
言われたときには青褪め、手が震えすぎて針を持てなくなった。
驚いたように目を瞠り、それから労るように見上げてきた青い瞳に、何と返したのか覚えていない。
──あれは・・・口説き文句・・・?
「なるほど、殿下の恋も前途多難ですね」
「というか、こいつら両想いだろう。何の障害がある」
コソコソささやきあう団長と副官の言葉は、シェラの耳に入らない。
「あ──あなたたちが余計なことを言うから、殿下を哀しませてしまったではありませんか!」
絶叫するシェラに、団長は胡乱な眼差しを向けた。
「ほお。では意味を正しく理解し、お前にも正しく伝えていたら受け入れた、と」
「なっ!」
「お前が馬に乗りたいというから猛特訓して軍馬を操り、ほとんど生まれて初めてやさしくしてくれたひとを守りたいからと全身痣だらけになりながら剣を習い、クッキーに野菜のペーストを混ぜて焼いてくれるお前のために苦手なものでも積極的に食べるようになった」
「・・・」
「そんな殿下の想いに応える用意が、お前にあると?」
「・・・」
「お前の言う通り、殿下の心根は美しい。ちょっと甘ったれではあるが、自分が決めたことは投げ出さない。俺の剣を捧げるのに、何の不満もない」
シェラは涙を零さないよう、奥歯をぐっと噛み締めた。
「・・・殿下を守るのはわたくしの剣です」
「だったら話し相手だなんて言わずに、護衛だと名乗ればいい」
「嫌です」
「どうしてでしょう?」
「殿下はきっとこう仰るでしょう。『わたしが強くなれば、シェラは護衛なんてしなくていいよね』と」
にっこりと微笑んで。
「それがわたくしを気遣う言葉だということは分かっています。ですが、殿下にまで剣を置けと言われたら・・・死んでしまう」
他の誰に何を言われようが、もう気にしない。
けれど、あの方にまで否定されたら、生きていけない。
「それはないでしょう」
副官の声に、シェラはゆっくりと顔を上げた。
「殿下はきっとこう言うと思います。『シェラがわたしを守ってくれるなら、わたしはシェラを守るから、ずっと一緒にいようね』と」
言われてシェラは、はっとした。
やさしくて、強くて、ちょっと甘ったれな殿下の、はにかむ表情さえ思い浮かぶようだった。
「まぁ、『でも、シェラが危ないのは嫌だなぁ・・・』と哀しそうな顔をして、あなたが絆される姿も目に浮かびますけどね」
くすっと笑う副官に、シェラは言い返せなかった。
だから、強引にではあったが話題を変えた。
「ほ、他にも殿下を惑わせるようなことを仰ったでしょう」
「どれだ。色々言いすぎて覚えておらん」
「あと2、3年もすれば女が目の色を変えて飛びかかる、と」
何だそれか、と団長は肩の力を抜いた。
「事実だろう」
「殿下はご自身にかけられた呪いの類ではないかと怖がっておいでです」
お可哀想に、と眉を寄せるシェラに、団長は珍妙な生き物を見る顔つきになり、副官は笑いを噛み殺す表情になった。
「・・・何がおかしいのです」
余計なことを言えば首と胴体が切り離されそうな殺気。
軍ではエリート中のエリートである近衛の、更に上澄みふたりは、一瞬視線を合わせると揃って両手を上げた。
「分かった、分かった。今度から殿下と会話するときは、婉曲的な表現は使わないようにする」
「全然分かっておられないようですね。表現方法の話をしているのではありません。余計なことは──」
団長を睨みつけていたシェラだったが、はっとして細剣を納刀した。
ふわり、とほんの少しドレスの裾が揺れた以外、何も目に入らない。
きっと細く白いであろう脚に、どれほどの数の暗器が仕込まれているのか。
「シェラーーーーー!」
自分の足で駆けても息を切らさなくなった第二王子の用件は、王太子妃殿下とのお茶会の誘いだった。
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悪意を放つ人間が多すぎて埋もれてますが、仔豚ちゃんは結構愛されてるですよ。
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