小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
頑張んべー。
寝る前の一発。
寝る前の一発。
**********
「・・・ラ~~ララァっ、・・けほっ」
ピアノが1台置かれた室内。
歌のレッスンのために設けられた簡素な部屋の中にその少年はいた。
ふわふわとした綿毛のような銀色の髪、天使と謳われる華やかな美貌、抜けるように白い肌としなやかな身体は、少年のものでありながら、どこか中性的な印象も与えてくる。
それが、彼が『天使』と呼ばれる所以なのかも知れない。
「ララ~~ルラァ~・・・」
いつも一緒にいる少女の姿は、いまこの室内にはなかった。
どうにも声の調子が良くないのだが、少女にいらぬ心配をかけたくない少年は、何とか理由をつけてひとりここへとやってきたのだ。
しかし、何度やっても高音が上擦る。
華奢に見えても歌い、踊るための身体は造っている。
身体が声を支えられないというよりも、明確に喉の調子が良くないのだ。
「・・・こんなところで」
立ち止まるわけにはいかない。
それでなくとも、あの男に宣戦布告してやったのだから。
愛らしい顔を顰めると、少年は息を吸い込み、喉奥から声を押し出そうとした。
「──やめろ」
決して大きくはない、けれどよく通る声だった。
密閉された部屋のドアが開いたことで生まれる空気に逆らうことなく、まるで風の流れが見えているのではないかと思うほど自然に、その声は少年の耳に届いた。
「邪魔だ!」
届いた瞬間、少年──カノンは、彼を知る人間であれば誰もが驚きに目を瞠るほどの怒気をあらわに叫んだのだった。
「それもやめろ。喉を使うな」
負けず劣らずの仏頂面を晒した青年は、敵意をむき出しにしている猫のような少年の前へと歩み寄り、無造作に相手の顎を持ち上げた。
「なっ!」
「声出すな」
「触るなっ!」
青年の手を払いのけようとしたカノンだったが、逆に掴まれてしまった。
力を入れているようには見えないのに、びくともしない。
そして青年はカノンにはお構いなしに晒された喉に指を這わせていった。
怒りだか羞恥だか分からぬが、カノンは顔が真っ赤になるのを感じた。
──何て失礼な男!
手がダメなら蹴り飛ばしてやろうかと思ったのに、自分よりずっと高い位置にある緑の目がひた、と見下ろしてきたので思わず息を呑んでしまった。
鮮やかなわけでも、深いわけでもないその不思議な色彩は、若葉のようでも、森の奥の湖のようでもあった。
その緑の目が、はっきり呆れた色を浮かべた。
「練習熱心なのは結構だが、やり過ぎだ」
「なっ・・・あ、あんたに関係ない!」
「お前の喉は、お前の相方のそれよりずっと弱い。同じように歌えると思うな」
「何であんたにそんな──」
叫びかけたカノンの言葉は、最後まで紡がせてもらえなかった。
「大声出すな、って言ってるんだよ」
「・・・・・・」
喉に触れていた手がそのまま、カノンの口を覆っている。
青年の左手はカノンの手を掴み、右手は口許へ。
上背のある青年だから、ほとんど脅されるような格好だ。
菫色の瞳を真ん丸にして相手を凝視することしか出来ないカノンに、青年は静かな、抑揚の薄い声で告げる。
「これから先も歌いたいなら、今日から3日間は出来るだけ声を出すな」
そんなの無理だ! と目で訴えるカノンに、青年は軽く首を傾げた。
「無理じゃないだろう? 確かにお前たちのスケジュールはタイトだが、今週は歌番組の収録も、新曲の発表もなかったはずだ」
なんでお前が知ってるんだ! とまた叫びたくなったカノンだったが、大きな手がそれをさせてくれない。
いい加減離せ! と暴れようとするのに、何だか身体に力が入らないのだ。
「雑誌の取材とダンスレッスンなら、大声出す必要もないだろう。ヴォイスレッスンは休め」
言うだけ言うと、青年はカノンを拘束していた手を離した。
「・・・あんたに、そんなこと言われる筋合いない」
「同じ事務所のよしみだろう」
「・・・先輩風吹かせるな」
「そんな気はさらさらない」
おそらく言葉通りなのだろう。
長身の青年は軽く肩をすくめてみせた。
「いいか。絶対に大声出すなよ」
「だから」
「相方を独りにさせる気か?」
「・・・・・・」
「今の状態で歌ったら、確実にお前の喉は潰れる。だいたい、もう1ヶ月以上も調子悪いのに、どうして無茶を続けた」
咎めるような口調に、カノンは目を瞠った。
「・・・何で、知って・・・」
「聴けば分かるだろうが。仕事だからある程度は仕方ないが、マネージャーは何も言わないのか?」
「・・・気づくわけない。ソナタも気づいてないんだから・・・ぼくだって、ほんのちょっといつもと違うと思ってるだけなのに・・・」
「は? お前らの耳、大丈夫か?」
カッとなったカノンだったけれど、どうにか大声は出さなかった。
「とにかく、3日は絶対に歌うな。ヴォイトレも禁止。っていうか、会話も極力控えろ」
「勝手なこと」
「言うよ」
「・・・」
「次は、お前らが1位取るんだろう?」
「・・・」
「40%の力も出ないお前らに譲ってやる気はないからな」
「っ!」
「やるなら、全力で来い」
普段ほとんど動かない表情に、ほんの僅か挑発するような笑みが浮かぶ。
カノンはぐっと拳を握り、青年の顔を睨みつけた。
「・・・叩きのめす」
静かに、けれど強い意志を込めて告げられた言葉に、発売したシングル曲がデビューから13曲連続で初週の売上1位を記録している人気デュオの片割れは、どこか愉しそうに笑ったのだった。
**********
ライバル的な。
あれ。アー君なんか犬属性どこ行った?(笑)
そして、カノンたんはあとからソナタ経由で『ライアン印の特製のど飴』をもらうのでした。
おそまつ。おやすみ。
「・・・ラ~~ララァっ、・・けほっ」
ピアノが1台置かれた室内。
歌のレッスンのために設けられた簡素な部屋の中にその少年はいた。
ふわふわとした綿毛のような銀色の髪、天使と謳われる華やかな美貌、抜けるように白い肌としなやかな身体は、少年のものでありながら、どこか中性的な印象も与えてくる。
それが、彼が『天使』と呼ばれる所以なのかも知れない。
「ララ~~ルラァ~・・・」
いつも一緒にいる少女の姿は、いまこの室内にはなかった。
どうにも声の調子が良くないのだが、少女にいらぬ心配をかけたくない少年は、何とか理由をつけてひとりここへとやってきたのだ。
しかし、何度やっても高音が上擦る。
華奢に見えても歌い、踊るための身体は造っている。
身体が声を支えられないというよりも、明確に喉の調子が良くないのだ。
「・・・こんなところで」
立ち止まるわけにはいかない。
それでなくとも、あの男に宣戦布告してやったのだから。
愛らしい顔を顰めると、少年は息を吸い込み、喉奥から声を押し出そうとした。
「──やめろ」
決して大きくはない、けれどよく通る声だった。
密閉された部屋のドアが開いたことで生まれる空気に逆らうことなく、まるで風の流れが見えているのではないかと思うほど自然に、その声は少年の耳に届いた。
「邪魔だ!」
届いた瞬間、少年──カノンは、彼を知る人間であれば誰もが驚きに目を瞠るほどの怒気をあらわに叫んだのだった。
「それもやめろ。喉を使うな」
負けず劣らずの仏頂面を晒した青年は、敵意をむき出しにしている猫のような少年の前へと歩み寄り、無造作に相手の顎を持ち上げた。
「なっ!」
「声出すな」
「触るなっ!」
青年の手を払いのけようとしたカノンだったが、逆に掴まれてしまった。
力を入れているようには見えないのに、びくともしない。
そして青年はカノンにはお構いなしに晒された喉に指を這わせていった。
怒りだか羞恥だか分からぬが、カノンは顔が真っ赤になるのを感じた。
──何て失礼な男!
手がダメなら蹴り飛ばしてやろうかと思ったのに、自分よりずっと高い位置にある緑の目がひた、と見下ろしてきたので思わず息を呑んでしまった。
鮮やかなわけでも、深いわけでもないその不思議な色彩は、若葉のようでも、森の奥の湖のようでもあった。
その緑の目が、はっきり呆れた色を浮かべた。
「練習熱心なのは結構だが、やり過ぎだ」
「なっ・・・あ、あんたに関係ない!」
「お前の喉は、お前の相方のそれよりずっと弱い。同じように歌えると思うな」
「何であんたにそんな──」
叫びかけたカノンの言葉は、最後まで紡がせてもらえなかった。
「大声出すな、って言ってるんだよ」
「・・・・・・」
喉に触れていた手がそのまま、カノンの口を覆っている。
青年の左手はカノンの手を掴み、右手は口許へ。
上背のある青年だから、ほとんど脅されるような格好だ。
菫色の瞳を真ん丸にして相手を凝視することしか出来ないカノンに、青年は静かな、抑揚の薄い声で告げる。
「これから先も歌いたいなら、今日から3日間は出来るだけ声を出すな」
そんなの無理だ! と目で訴えるカノンに、青年は軽く首を傾げた。
「無理じゃないだろう? 確かにお前たちのスケジュールはタイトだが、今週は歌番組の収録も、新曲の発表もなかったはずだ」
なんでお前が知ってるんだ! とまた叫びたくなったカノンだったが、大きな手がそれをさせてくれない。
いい加減離せ! と暴れようとするのに、何だか身体に力が入らないのだ。
「雑誌の取材とダンスレッスンなら、大声出す必要もないだろう。ヴォイスレッスンは休め」
言うだけ言うと、青年はカノンを拘束していた手を離した。
「・・・あんたに、そんなこと言われる筋合いない」
「同じ事務所のよしみだろう」
「・・・先輩風吹かせるな」
「そんな気はさらさらない」
おそらく言葉通りなのだろう。
長身の青年は軽く肩をすくめてみせた。
「いいか。絶対に大声出すなよ」
「だから」
「相方を独りにさせる気か?」
「・・・・・・」
「今の状態で歌ったら、確実にお前の喉は潰れる。だいたい、もう1ヶ月以上も調子悪いのに、どうして無茶を続けた」
咎めるような口調に、カノンは目を瞠った。
「・・・何で、知って・・・」
「聴けば分かるだろうが。仕事だからある程度は仕方ないが、マネージャーは何も言わないのか?」
「・・・気づくわけない。ソナタも気づいてないんだから・・・ぼくだって、ほんのちょっといつもと違うと思ってるだけなのに・・・」
「は? お前らの耳、大丈夫か?」
カッとなったカノンだったけれど、どうにか大声は出さなかった。
「とにかく、3日は絶対に歌うな。ヴォイトレも禁止。っていうか、会話も極力控えろ」
「勝手なこと」
「言うよ」
「・・・」
「次は、お前らが1位取るんだろう?」
「・・・」
「40%の力も出ないお前らに譲ってやる気はないからな」
「っ!」
「やるなら、全力で来い」
普段ほとんど動かない表情に、ほんの僅か挑発するような笑みが浮かぶ。
カノンはぐっと拳を握り、青年の顔を睨みつけた。
「・・・叩きのめす」
静かに、けれど強い意志を込めて告げられた言葉に、発売したシングル曲がデビューから13曲連続で初週の売上1位を記録している人気デュオの片割れは、どこか愉しそうに笑ったのだった。
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ライバル的な。
あれ。アー君なんか犬属性どこ行った?(笑)
そして、カノンたんはあとからソナタ経由で『ライアン印の特製のど飴』をもらうのでした。
おそまつ。おやすみ。
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