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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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毎日が過ぎていきます。いや、もー、毎日20時21時の日々に、ようやくおさらば出来そうで、19時台に会社を出られると「うお、めっちゃはえー!」とテンション上がります。上がりますが、疲れているので真っ直ぐお家に帰ってお風呂とご飯です。シェラに嫁に来て欲しいです。

えー、ひっさびさの小ネタですが、内容はお世辞にも上品とは言えません(笑)纏まった時間が取れなくて、3日くらいかけて書いたので、もう、何を言いたかったのかもよく分かりません(笑)


**********

「・・・お前、浮気してるだろう」
「──は?」

今日も今日とて定時で帰り、「ただいま」と言った玄関先でのキスもいつものこと。
温かい絶品の夕食に和やかな会話、身重のシェラに代わって洗い物をし、食器を片付け、ココアと珈琲を用意して団欒の時間を過ごしていたらこれである。
数分前までにこにこ笑っていたシェラは、今はその菫色の瞳に涙を溜めて、震える拳を膝に押し付けている。
あまりのことに頭が追いつかず、思わずぽかん、と口を開けてしまったヴァンツァーだった。
ふと、せり出したシェラの腹を見る。
まだ7ヶ月だが、四つ子だからか、その腹はだいぶ大きい。
今か今かと子どもの誕生を待ち侘び、定期検診には必ず同伴する夫は、なぜか不貞を疑われていた。

「浮気! 認めたらどうなんだ!」
「・・・認めるも何も・・・」

多弁ではないが、頭の回転の速い男にしては珍しく、何も言葉が浮かばない様子だ。

「男らしくないぞ!」

興奮するのは身体に良くないな、と判断するだけの冷静さを取り戻した男は、シェラには気づかれないようにそっと息を吐いた。

「では訊くがな。俺にいつ浮気する暇がある?」
「ひ、暇・・・?」
「仕事はきっかり9時から17時。ここ数ヶ月は出張もない。スタッフと食事や飲みに行くこともない。やるならうちだ。通勤は30分足らずで、それ以外はずっとお前と一緒。風呂だってほぼ一緒だ。土日は言うまでもない。──で? 俺にいつそんな暇が?」
「そ・・・だっ・・・し、仕事抜けて」
「言っておくがな。商談はほとんどうちのオフィスだ。外出するにしても、1時間以上空けることは滅多にない」
「1時間もあればホテルにしけ込むくらい!」

酷い言葉遣いよりも、その内容に呆れてしまうヴァンツァーだった。

「あぁ、そうだな。ホテルにしけ込む時間くらいはあるかもな」
「──ほ、ほら! やっぱり!」
「──だが、ホテルにしけ込んでその上億単位の商談を纏めるのは、1時間ではさすがに骨が折れるぞ」
「ベッドの上でサインさせればいいじゃないか!」

思わず感心してしまい、ヴァンツァーは「なるほどな」と呟いた。

「枕営業というやつか」
「得意だろう!」

こればかりは否定出来ない。
もちろんこの世界に来てからはやっていないし、今シェラが口にしているような浮気だってあるわけがないのだが、かつての己はそのようにして生きていた。
その辺りを追求されると、言い訳のしようがないのだが。

「身体を売らなければいけないほど、金にも仕事相手にも困ってない」
「だからっ、火遊び、とか・・・」
「火遊びをするほど家庭に不満もない」
「・・・・・・」
「──というか」

毛を逆立てた猫のような風情のシェラを抱き上げ、膝の上に乗せる。

「うわっ」
「暴れるなよ。落ちたら危ない」
「や、やめろ・・・お、重いから!」
「これくらい、どうということはない」
「でも!」
「──ひとつ、教えて欲しいんだ」

声の真剣さに、シェラは思わず口を閉ざした。
そうして、膝に乗せられたおかげでほんの少し下にある、ヴァンツァーの目を見る。
見ていると吸い込まれそうになるような、深く澄んだ、美しい湖のような瞳。
ドクドクと心臓が煩くて、シェラはきゅっと唇を引き結んだ。
誰もが夢中になるような恵まれた容姿の男は、どこか困ったような表情でこう言った。

「どうやったら、お前以外を好きになれる・・・?」
「──へ?」

思わず素っ頓狂な声を上げたシェラに、ヴァンツァーは大真面目な顔を崩さない。

「浮気をするにしても、多少の好意は必要だろう」
「ま、まぁ・・・」
「お前以外の誰に、どうやったらそんな感情を抱けるんだ?」

そんなことを訊かれても、と眉を寄せたシェラである。

「・・・浮気する人間の心情なんて、私に分かるわけないだろう」
「お前は、したいと思ったことはないのか?」
「──あたりま」

声を荒げかけたシェラだったけれど、自分が口にしようとしていることが、ものすごく恥ずかしいことのような気がして慌てて口を噤んだ。

「シェラ?」
「ど、どうでもいいだろ、そんなこと・・・」

目を逸し、口の中でモゴモゴ喋るシェラの頬を指先で突付いて意識を向けさせ、ヴァンツァーはふんわりと微笑んだ。

「俺にも、よく分からない」
「・・・」
「この子たちが早く生まれてこないかと。最近はそればかり考えている」

そっと、膨らんだ腹を撫でる手がやさしい。
その手も、声も、嘘を吐いているようには感じられなかった。
ヴァンツァーが呼吸をするように嘘を吐ける男だということをシェラは知っているが、これが嘘や演技だとはとても思えなかった。

「・・・疑って、悪かった」

やがてボソッと呟かれた言葉に、ヴァンツァーは軽く首を振ることで応えた。

「なぜ突然あんなことを?」
「だって・・・」

唇を尖らせたシェラは、抱き上げられたままヴァンツァーの肩口に頭を乗せた。
親が子どもをあやすようなその体勢は、ふたりきりのときにはよく見られる光景であった。

「だって、書いてあった」
「──書いて?」
「男は、妊娠した妻に『女』を感じなくなって、浮気するって」

一体どこで仕入れた情報だ、と思いはしても、世間にはそういう男もいるのだろう、と一応の納得を見せたヴァンツァーだった。

「なるほど」
「・・・その気がなくなる、って書いてあった」
「ふぅん」

他人事のように──実際他人事なのだが──相槌を打つ男に、シェラは「だって」と言い訳のようなものを口にした。

「だってお前、全然触って来ないし!」
「──ん?」

何の話だ? と首を捻るヴァンツァーにシェラは尚も言い募った。

「妊娠する前は、あ、あんなにしてたのに!」

色白の顔を真っ赤に染める様子から何となく内容を察した男は、宥めるように銀色を頭を撫でた。

「禁止されているわけではないが、母胎のことを考えても、衛生面でも、避けた方が」
「分かってる」
「お前の身体のこともある。早く生まれてきて欲しいとは言ったが、今の段階で生まれるのは危険だ」
「分かってる!」

愚図った子どものような物言いに、ヴァンツァーはふ、と笑みを浮かべた。

「それで俺が浮気しているなんて思ったのか?」
「・・・だって、本当に、全然、触らないから」
「キスはしている」
「──じゃあお前、どうやって処理してるんだ!」
「え」
「え、じゃない! あれだけ毎日のようにしてたのに、もう何ヶ月もしてない。男なんだから、その、た、溜まるだろう!」
「・・・」
「私が手とか口でしようとすると、嫌だって言うし」
「嫌というか」
「じゃあする!」
「・・・」
「する!」

怒ったような必死そうな顔を直視出来ず、ヴァンツァーはそっと目を逸らした。

「よそ見するな」

グイッ、とシェラの手で顔の位置を戻されてしまい、菫色の瞳を真正面から見つめることとなったヴァンツァーは、目線だけでもズラそうとしたのだけれど。

「疚しいところがないならこっちを見ろ」

内心で嘆息して仕方なくシェラと目を合わせたヴァンツァーは、極力何も考えないように努めた。

「瞳が揺れてる」
「あのな・・・」

こちらの努力を無に帰そうとするシェラに若干咎めるような声を向けたヴァンツァーだったが、シェラが痛いほど真剣なことはよく分かったので一度口を閉ざした。
そうして、ほんの少し丸くなった頬に手を添わせた。

「非常に申し訳ないんだが」
「・・・下手なのは分かってる」

あからさまな断りの文句にシェラは俯いた。
この男を満足させられるような技巧など持ち合わせていない自覚はある。
それでも、頑張りたいと思っているのだ。
しかし、シェラの耳に届いたのは「いや、そういうことではなく」という言葉だった。
不思議そうに顔を上げたシェラの前には、どこか困惑したような美貌。

「何というか・・・俺の願望だ」
「──願望?」
「あぁ」

コツン、とヴァンツァーの額がシェラのそれと合わさる。

「お前は綺麗だから・・・あまり、させたくないんだ」

何だそれは、と思ったシェラである。

「私の顔がいけないのか」
「顔ではない」
「はぁ? じゃあ髪か?」
「違う」

自分の容姿が人より優れていることは自覚しているシェラだったが、それ以外で『綺麗』だと思える部分などほとんどない。
ヴァンツァーに指摘されるまでもなく口は悪いし、内面だってお世辞にも善人とは言えない。
言うまでもなく手は紅く染まっている。

「いいんだ、お前は・・・そのままでいてくれたら」

その言葉に、シェラは軽くキレた。

「・・・正直に答えろ」
「何だ」
「他の女性・・・いや、男も含めて、させたことはあるのか」
「・・・」
「3秒以内に答えろ」
「・・・ないとは言わない」
「お前、私がしたいことは何でもさせてくれるんだよなぁ?」
「それとこれとは」
「──よし、決めた」

嫌な予感しかしないヴァンツァーだった。

「いつかお前を、女の子みたいに啼かせてやる!」
「・・・」
「今はお腹が支えてやりづらいからな。出産したら覚悟しておけよ」

ニヤリ、とちょっと悪い顔で「可愛がってやるからな」とか言うシェラを前に、「どうしてこうなった」と頭を抱えたくなったヴァンツァーではあったのだけれど。
当初予定していたのとはだいぶ方向がズレたが、それでもシェラの機嫌は多少回復したようだったので、「まぁ、いいか・・・」とも思った。
実際にその危機的状況に陥ったとしても、きっとどうにかかわせるだろう。

きっと・・・たぶん・・・おそらく。

「──で? 結局、お前今はどうやって処理してるんだ?」

・・・無理かも知れない。


**********

ヴァンツァーをあんあん言わせ隊(コラ)

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