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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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いやー、まさかまさか。金曜の夕方から調子おかしくて、その夜中から39度ですよ(笑)あはは。土曜日に病院行って、3連休寝て過ごしました。扁桃腺がものすごく腫れてて、今もまだ少し痛いんですが、熱はそこから来ているようで、腫れが引いてくるまで熱も引かず、なかなかしんどい3日間でした。
ようやく37度を切ってくれたので、このまま治ればいいなぁ、と。

おそらく疲れが出たのだと思いますが、ちょうど連休のときに熱出るって、いかにも仕事人間っぽくて嫌ですね・・・。ま、もう少しで夏季休暇なので、頑張りますよ。はい。


**********

泣き声が聴こえる。

──泣くな・・・。

こちらの胸が締め付けられるような悲痛な声に、そう返してやりたかったというのに。
身体の感覚も、耳に届く声も、どんどん遠くなっていった。
必死にこちらの名前を呼ぶ声に何か返してやりたくて、脳裏に幼い竜の姿を思い浮かべた。

──・・・シェラ。

泣くな。
誰か、この声を届けてくれ。


+++


「ちょっ、ヴァンツァー、きみ無茶しないでよ!」

結界に接触してきた魔力の波動を感知するのがあと1秒でも遅ければ、転移の術を使った男は弾き飛ばされ、悪くすれば四肢が引き裂かれていたかも知れない。
屋敷から慌てて飛び出してきた長い黒髪の青年は、続けて文句を言おうと柳眉を吊り上げたのだけれど、目の前の光景に思わず絶句した。

「何だこれ。何でこんなに精霊たちが騒いで・・・」

青年の後ろからやってきた黄金の髪の青年は、尋常でなく騒ぐ──というより、喚いている精霊たちの様子に緑柱石のような瞳を丸くした。

「ヴァンツァー! ヴァンツァー!」

地に倒れ伏す見知った男の脇には、泣きじゃくる幼子の姿があり、精霊たちはその幼子の泣き声に呼応するように騒いでいる。

「・・・エディ、あれ」
「あぁ。竜だ」

すっ、と目を眇めたふたりは、倒れ込む男と仔竜の元へ駆け寄った。
近寄ってきた影にビクッ、と肩を揺らした仔竜だったが、ふたりの姿を目にして大きな目を真ん丸にした。

「──・・・竜神様」

ぽかん、としている仔竜の頭をポンポン、と叩いた金髪の青年は、足元の様子を見て苦笑した。

「こりゃまた、派手に泣いたな」

ジャラジャラと音がしそうなほど、地面には泪銀石が大量に散らばっている。
人間がこれを見たら眼の色を変えてかき集めるに違いない。

「何があったか、話してくれる?」

金髪の青年が倒れた男を助け起こす。
黒髪の青年のやさしげな青い瞳に促され、仔竜はしゃくり上げながらも何とか話そうとする。

「・・・名前を、訊かれました。ヴァンツァーは自分も名乗ってくれて・・・だから、私も名乗ったのですが・・・人の言葉で名乗ったからか、上手く伝わらなかったようで」

竜の言葉で名乗った途端、苦しみだしたのだ、と。

「あー・・・。もしかしてお前、真名を名乗ったのか?」

それの何がいけないのだろう? と不思議そうに目を瞬かせている仔竜の様子に、黒髪の青年が困ったように言った。

「きみは、今まで竜の里を出たことがなかったんだね?」
「はい」
「人間にも、ほとんど会ったことがなかった?」

思い出した人間たちの姿に、銀の眉がきゅっと寄る。

「・・・ヴァンツァーは、怪我をしていた足を治してくれました。この首輪も外してくれる、と・・・だから、その真心に応えるには、真名を名乗った方がいいだろうと思ったのです」

ホロリ、とまた一筋涙が溢れ、地面にぶつかる直前に石となる。

「・・・きみには少し酷な話をするけれど・・・」

黒髪の青年の言葉に、仔竜は表情を引き締めた。

「竜族どうしであれば、真名を名乗り合ってもあまり影響はないんだ。でも、人間相手だと話は違う」
「・・・どう、なるのですか・・・?」
「心臓が止まる」

ひゅっ、と鋭く息を呑んだ仔竜は、直後激しく頭を振った。

「いや・・・嫌です! 嫌! ヴァンツァーが死んでしまうなんて、そんなの嫌です!!」

またポロポロと涙を流し、精霊たちが騒ぎ出す。

「この子は人並み外れて魔力が強いし、竜の力にもそれなりに耐性があるからすぐに死ぬことはなかったけれど、だいぶ鼓動が弱くなっている」
「真名は、滅多なことでは口にしてはいけない。竜は決して仲間を裏切らないが、人は違う。だから、もし人に真名を知られてしまったときのために、耳にした人間にその覚悟がなければ心臓が止まるようになっている」
「・・・覚悟?」

目元をゴシゴシ擦った仔竜に、金色の青年は真剣な表情で頷いた。

「──契約を結ぶ覚悟だ」
「契約・・・」
「僕とエディのようにね」
「あなたと、竜神様・・・──竜と、竜騎士ですか?」

金色の青年は、仔竜の頭をよしよし、と撫でた。

「そう。ただ、この契約は生涯一度しか結べない。解除も出来ない。どちらかの命が失われれば、もう片方もそれに殉じる」
「その代わり、竜騎士となった人間は絶大な竜の力と永い寿命を手にする──望むと、望まざるとに関わらず、ね」
「・・・ヴァンツァーは、望まないでしょうか・・・」

不安そうな顔になる仔竜に、黒髪の青年は「どうかな」と曖昧に微笑んだ。

「ま、やってみれば分かるさ」
「──やってみる?」
「契約を結んでみて、こいつが拒否したらそこで終わり」
「終わり、って」
「そのまま死ぬ」
「──絶対いやっ!!」

ぷっくりと涙を溜める仔竜の様子に、青年ふたりは場違いな笑い声を上げた。

「随分この子が気に入ったみたいだね」
「竜は綺麗なものが大好きだからな」
「冷たそうに見えて、やさしい子だし」
「こいつを生かしたいなら、頼んでみな」
「頼む・・・?」
「そう。『私と生きて下さい』って、お願いしてごらん」

仔竜は紫の瞳を不安げに揺らした。

「・・・嫌がりませんか?」
「思い切り迷惑そうな顔はするかもな」
「──っ!」
「俺のことなんか捨て置け。こんなことでこいつの一生を決めるな、ってな」
「──え・・・?」
「そういう子なんだよ、この子は」

くすくす笑った黒髪の青年は、すっと表情を引き締めた。

「──さあ。きみの心は決まった?」

仔竜はふたつ返事で頷いた。

「ほんとは、こいつがお前の真名を返してくれたら、一番──」

──・・・シェラ。

風のささやきと変わらないほどの微かな声が耳に届いた瞬間、仔竜の身体がビクンッ、と震えた。
すると、仔竜と横たわる男が銀色の光に包まれた。

「こりゃあ」
「僕たちの出番はなかったかもね」
「だな」

苦笑しあう金の竜とそのパートナーは、そっとその様子を見守った。
やがて光が消えると、死の淵にいた男の瞳が開かれた。
眩しそうに2、3度瞬きをすると、その藍色の瞳は傍らの仔竜に向けられた。

「ヴァンツァー!」

ぎゅうっと抱きついてくる軽い身体ごと起き上がると、わんわん泣いている仔竜の背中を撫でた。

「・・・泣きすぎだ」

自分の周りを埋め尽くさんばかりの泪銀石を見て、男は苦笑した。
ここにある泪銀石を売れば、一生遊んで暮らせるだろう。

「ヴァンツァー、ちんジャいやぁ!!」

どんどん増えていく泪銀石をどうしようかと考えて、「分かった、分かった」と答えた男は、傍らに立つ青年に訊ねた。

「ルーファス、あんた、これでマジックアイテムを作れるか?」
「この泪銀石?」
「あぁ」
「作れるけど、ものすごい量だよねぇ・・・」

首飾りや腕輪程度では使い切れそうもない。

「ちびすけ。お前、痛いの我慢出来るか?」

緑の炎のような強い瞳に見つめられ、仔竜はビクッ、と肩を震わせた。

「ど、どれくらいですか・・・?」

腕の中でふるふる震えている仔竜に、男は顔を顰めた。

「我慢出来るなら、ヴァンツァー用に強い剣を作ってやる」
「──が、頑張ります!」

再び「どれくらいですか?」と訊ねた仔竜に、金の竜は人指し指を立てた。

「指1本」
「ひっ」
「おい、あんた」

顔を真っ青にした仔竜を男が自分の懐深くに匿うのを見た金の竜は、弾けるように大声で笑った。

「あはは、冗談だよ! 血を1滴くれ」

それくらいなら、と仔竜はおずおずとちいさな手を差し出した。
仔竜の手を掴んだ金の竜は、あんぐ、と口を開けてプツリ、と仔竜の中指に歯を立てた。

「んっ」

ぎゅっと肩に力を入れる仔竜の頭を撫でてやると、仔竜は男を見上げてにこっと笑った。

「だいジョぶ、だヨ?」

泪銀石の上に仔竜の血を垂らすと、金の竜は自分の指も噛んで同じように血を滴らせた。

「ほら。お前もだ」

男にも手を出すよう促し、同じように血を1滴。
散らばる泪銀石に手をかざし、力ある竜の言葉を唱えると石はふわりと浮かび上がり輝き出す。
強い光が一瞬辺りを包むと、金の竜の手にはひと振りの剣があった。

「今は長剣だけど、お前が望めば短剣にも小太刀にもなる。便利だろ?」

鞘から剣を抜けば、刃は泪銀石そのままの透明度と銀の光を湛えており、幻想的な美しさだった。

「切れ味だけなら今までの剣の方がいいかも知れない。その剣は、魔力を込めたいときに使うといいよ。たぶん、いまのきみの魔力に、これまでの剣は耐えられないからね」
「竜の血が入ってるから、強度も申し分ないはずだ」
「ふぅん」

気のない素振りで新しい剣を見る男に、仔竜は不安げな瞳を向けた。

「ヴァンツァー・・・うれチく、ナい・・・?」
「──いや。ありがとう」

よしよし、と頭を撫でて指先の傷を癒やしてやると、仔竜は嬉しそうに笑った。

「しかしお前、人語で話すのに、なぜ俺の名前だけ竜語で呼ぶんだ?」

聞いていれば、自分以外の竜や竜騎士には竜語で話しているようだし、と不思議そうな顔になった男に、仔竜は言った。

「ヴァンツァーの、おナマえ・・・まちガえたク、なかっタの」

視線を金の竜とその騎士に向けた仔竜は、男の膝の上から降りると跪き、深々と頭を下げた。

「竜神様、騎士様、ありがとうございました」

なるほど、と男は納得した。

「このふたりは、お前より目上の存在なんだな」

仔竜は頭を上げて、こくん、と頷いた。

「え~。エディはともかく、僕はただの竜騎士だし」
「おいルーファ。何が『ただの』だ。じゃあ、おれも色がピカピカしてるだけの、ただの竜だ」
「冗談やめてよ!」
「お前こそ!」

何やらにらみ合いを始めてしまったふたりにきょとん、としている仔竜を抱き上げ、男は屋敷へと足を向けた。

「ルーファス。こいつを風呂に入れてくる。後でこの首輪を外してやってくれ」
「──あ、うん。分かった」

いつでも滾々と湯が沸いている風呂場で湯船に浸かりながら、仔竜は恐る恐る男に訊ねた。

「ヴァンツァー、ちぇらとけいヤくしゅるの、やだっタ?」

泥汚れを落とせば、真っ白い肌と銀色の髪が表れ、仔竜は光輝くような美しさを取り戻した。
今はまだ幼子の姿だが、あと数年もすれば美女と見紛う絶世の美青年へと成長するに違いない。

「なぜ?」
「・・・竜神様が、めいワクかもチれないって」

男は嘆息すると、仔竜の頭を撫でた。

「そうだな。俺の命に、お前の一生を懸ける価値はないと、今でも思っている」
「・・・」
「──だが、お前が泣いているのは嫌だった」
「ヴァンツァー・・・」
「あれがお前の真名なのだろうと気付いていて、それでも呼んだのだから、この契約は俺の意志だ」
「・・・ほんト?」
「お前が成竜になって伴侶を選ぶまでは、俺が護ろう」

兄のような気持ちでそう言えば、仔竜は愕然として目を瞠った。

「どうした?」

質問への答えに、今度は男が瞠目する番だった。


+++


「──あぁ、言い忘れてたな」
「なぁに?」
「いや、あのちびすけ、王族なんだ」
「そりゃあまぁ、銀色の竜だからね」
「あぁ。だから、竜騎士になる契約は、そのまま伴侶になる契約なんだ」
「うん──あ」

ふたりは顔を見合わせ、同じようにへらり、と笑みを浮かべた。

「ちびすけはもちろん知ってる・・・というか、あれだけ熱烈な愛情表現していれば、な」
「ヴァンツァーには、さすがにその辺の竜の生体は教えてなかったかもね」

まぁ、大丈夫だろう、と結論を出そうとした途端、『ぴぎゃーーーー!』と大気を震わせるような泣き声が聞こえてきて、金の竜とその騎士は頭を抱えた。

「・・・風呂場が泪銀石で埋まるな」
「その前に、自慢のお風呂を壊されないかが心配だよ」

はぁ、とため息を零したふたりは、契約を交わして力が増大したふたりをどう止めようか、悩みながら風呂場へと向かった。


**********

・・・こんな話だったっけ?
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